_/ lunaticgate and lunaticworld * 01
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窓から暖かい白色の光が差し込んでいる。
昼食を食べ終わって、一段落したところだ。
私はいつもの同じ場所に置いてある椅子に足を組んで座って、いつもの場所を見ていた。
視線の先には、ベッドに横たわったひどく可愛らしい少女の寝姿がある。
彼女の名前はパチュリー・ノーレッジ、紅魔館に住み込んでいる魔女だ。
長い艶やかな紫の髪と、今は閉じている澄んだ紫の双眸が印象的である。
普段は珍妙な帽子を被っているが、自分の家でされるとどうにも落ち着かないので、取ってもらっている。
元々身体の弱い彼女は殆ど外へ出ない。
だから毎回会う時は必ず私の方から出向いていたが、
今回は何を思ったのか、遥々と深い深い森の中にある私の家へと赴いてきたのだ。
案の定着いて早々、「魔理沙、ごめん」と一言だけを零して倒れてしまい、
それから数日間、私はパチュリーの看病をしきっきりだ。
原因は良く判らない。
多分疲労とストレスだろう。
紅白の巫女さんが夜の空中散歩に誘って来ることもあったが、心配なので断ったりもした。
その甲斐あってか、現在は呼吸や体温も本来のリズムを取り戻している。
良い調子だ、この調子ならもう治ってるんじゃないか?
私は一人満足気に頷くと、すぐ横にある本棚へ手を伸ばして読みかけの本を取り出した。



「・・・まりさ、魔理沙」

まどろみの中に小鳥が囀るような小さい声が聞こえてきた。
その声はいくら小さい音量でも私を覚醒させるに充分だ。
目を開くとまず本が見えた。
どうやら本を読みながら寝てしまったらしい。
声がしたベッドの方向に顔を向けると、寝ているはずのパチュリーと目が合った。
彼女は黒いパジャマを着込んでおり、言うまでも無く私のものだ。
華やかな彼女には似合わない色だが、これしかなかったので仕方ない。

「おはよう。ところで、いつの間に愛読家の寝方を覚えたの?」

黒いパジャマの裾を握って、手を口に添えたパチュリーからくすくすと笑い声が漏れる。
彼女から見れば、私など愛読家の一端にも入っていないだろう。
なにせ彼女は本を読むことを生きることと同義にしているのだ。
私はその事実を含めて苦笑した。

「おはようさん。ま、イメチェンってやつだ」
「いつでも指導するわ」
「いや、遠慮しておく」

二人で肩を震わせて笑った。
看病続きで忙しい日々が続いていたので、こんなに和んだ空気は久々だ。
彼女も同じ気持ちだろう。
ふと何気なく外に目を向けた。
パチュリーの後ろにある窓から赤い光が私達を照らしている。
色からして今の時刻は夕方くらいだろうか。
気付くと先ほどの笑顔が彼女から消え失せ、心配そうな表情でこちらを見ていた。
羽毛布団の上にピン、と出された両腕の手は、布団の薄布を破きかねる力で握り締められている。
何を言いたいのか一目で分かった。
私は溜息一つつくと口を開いた。

「別に私は疲れてないぜ。ただ単に食後の昼寝してただけだ、昼寝」
「・・・なら、良いんだけど」

それは本当のことだ。
この不測の事態に直面しても、健康の管理は我ながらしっかりとできていると思う。
納得してくれたのか、パチュリーの手から薄布を握る力が緩んだ。
私は椅子から立ち上がり、ベッドの縁へ腰をかけた。
ぎしりとベッドが軋む音が響く。
身体を左捻り、彼女の方を向いた。

「パチュリーの方は大丈夫なのか?」
「おかげさまでね・・・よいしょっと」

微笑みで応答すると、両腕で上半身を持ち上げた。
起き上がることも苦では無くなっているようだ。
私は左手をパチュリーの額へかざし、体温を測る。
異常は無い、今朝のままだった。

「平気、みたいだな」
「ええ」

私は腕を元に戻すと顔を正面に向けて視線を彷徨わせた。
最近恒例となっていた健康診断が呆気なく終わってしまい、手持ち無沙汰になってしまったのだ。
何か話題になるものはないかと、部屋を見回す。
と、すぐに本棚が目に入った。
本のことなら話題が尽きることはない。
私は何かお勧めの魔法の本を彼女に教えてもらおうと口を開き、すぐつぐむことになった。

「・・・ねぇ魔理沙」

若干の熱を孕んだ語調でパチュリーが先に話しかけたのだ。
振り向くと少し顔を俯かせ、頬を淡い朱に色づかせた彼女がいた。
落ち着かない様子で布団の上の両手の指を組んだり、指をずらして組みなおしている。
なんとなくそれでこれからの会話の流れが掴めてしまう。
パチュリーは私と目が合うと、あらぬ方向へ自身の視線を逸らした。
その行動がおかしく、思わず吹き出してしまいそうになる。
だが何とか耐えて、そのまま彼女を見つめ続けた。
充分な沈黙の後、もじもじと恥ずかしげな声を出す。

「何日、私達エッチしてない?・・・っていうか、一人だけで、してないよね?」

視線をせわしなく動かし、指をせわしなく動かす姿と相まって、その言葉は極致の破壊力を得た。
私や、私の知る限りの魔法術式の範疇を軽く超えている。
ショートを起こしそうな脳の回路を酷使して、私は言葉を選んで繋げた。

「・・・パチュリー無しでしても、それは味気がなさすぎるからな」
「良かった」

目の動きと指の動きが止まって、はにかんでいた表情が満面の笑みに変わる。
彼女は身体を捻り、両腕を並べて私のすぐ横に置いた。
自然と上目遣いになるパチュリーから私は視線を逸らす。
見続けていたら、本当に脳がどうにかなってしまう。

「じゃ今からエッチ、しよ」

予想していなかった言葉ではないが、実際にそうも露骨に言われると、とてもとても恥ずかしい。
顔が赤くなっていくのが分かる。
照れ隠しに私は心にも無い事を口走ってしまった。

「病み上がりだろ?やめといた方が良いんじゃないか?」

すると左下、パチュリーから笑い声が聞こえてきた。
不思議に思った私は目を向ける。
そこには先ほどの、眩しい笑顔があった。
一しきり笑って落ち着いた彼女は、左手で乱れた髪をすいながら言った。

「そうね、病み上がりは病み上がりだけれど・・・」

パチュリーが私を見る、だがすぐその目は閉じられた。
数秒後、再び開かれた私を見る二つの紫の瞳に込められていたものは、絶対の自信だ。

「あなたといる時、私がこれほど元気でいる時なんて、他にはないわ」

ああ、こういうのを決めゼリフと呼ぶのだろう。
もう私に拒むことなどできやしない。

「それと、ごめん。私、もうほんとに、我慢できない」

自信に漲っていた彼女の双眸は次第に潤んで、吐息も荒くなっていく。
体重を支える両腕もパジャマ越しに分かるほど小刻みに震えている。
パチュリーは目を閉じて顎を軽く上げた。
私は身体ごと振り向くと、吐息がかかるような至近距離まで顔を近づけていき、小さく呟く。

「・・・あぁ、私もだ」

そして私は彼女と口付けを交わした。



邪魔な布団を畳んでベッドの下の方へ移動させた。
靴下を脱いでベッドに上がる。
パチュリーは両足をぴったりと密着させ、同じ方向に折り曲げ、
両手で上半身の体重を支えるようにしている。
まだパジャマは着たままだ。
右側に私がアヒル座りで腰を下ろすと、彼女は首だけを捻って顔をこちらに向ける。
私は左腕を背中に回すと、右手の人差し指と薬指を彼女の唇にあてがい、上下に開かせた。
ピンク色をした唇は指紋の溝一つ一つに食い込んでくるほど柔らかい。
指を何度か擦り、その感触を楽しむと中指を口腔へと侵入させた。

「ん、ぅ」

まずは歯の裏側の歯肉を刺激する。
唾液のぬめりを利用して、指の腹を左右に優しく滑らせた。
歯並びが良いため動きは止まらず、思わず奥まで突き入れたくなるが、むせては可哀想だ。
いや、それはそれで、そういう嗜好があるのかもしれないが、残念ながら私は持ち合わせていない。

「ん、んぅ、っう」

パチュリーは舌先で私の指先をつついた後、そのまま舌を指の上方へ伝わせた。
爪と第一関節の間あたりで止まると、圧迫と同時に蠕動を開始する。
刺激された軟体動物のように蠢きまわる舌が、
何とも言えないこそばゆい感覚をもたらし、私は声を漏らした。

「ん、それ、気持ち良い」

彼女は嬉しそうに目を細め、口角を持ち上げて奇麗な笑みの弧を作った。
思わず舌を捩じ込みたくなる、妖艶すぎる微笑みだ。
そんな笑みを見せられたら、私も昂るしかない。
腹の底から滾る熱いものが湧き上がり、全身隅々に染み渡った。
指で唾液を掬い取るようにして一旦引き抜くと、己の口へ運んでわざと音を立てて啜る。
久々に味わうパチュリーの粘液だった。
銀の糸が顎から伝い垂れるが、気にする事は無い。

「・・・どう?ねっ美味しい?」

パチュリーが猫みたく私に擦り寄ってきた。
背中へ回していた左腕に力を込め、更にこちら側に引き寄せる。
首を傾げ、目の前にある彼女の首元へ口付けをした。
啄ばむようなキスを数回繰り返す。

「ねぇ・・・んっ、どうっ、なの?」

まだ気になるのだろうか、そんなもの決まっているだろうに。
鎖骨から首筋へ、舌で円を描きながら舐め上げる。
長い紫髪をのれんのように右手で上げ、うなじ付近に舌を進めた。

「はっ、ふ・・・」

手を下ろし、髪を元へ戻すとふわりとした感触が私の頬を掠めた。
緩い風と共に髪の匂いが漂う。
鼻をうなじに埋めると、その髪の匂いと彼女の体臭とをない交ぜにして嗅いだ。
甘い香りと私好みの扇情的な香りがした。

「あっ・・・う」

もちろん、舌の円運動も休ませていない。
パチュリーの身体がわななくのが舌を通じて伝わってきた。
顎の下まで味わった所で顔を放し、彼女の色欲にとろけ潤んだ双眸を見つめる。
私はもっと彼女を味わいたかった。

「味、わからなかったからもう一度。なっ」
「・・・うん」

パチュリーの身体全体をこちらへ向けさせると、
赤く紅潮した頬にそっと右手を添え、私の唇へと誘導する。
二センチ程手前で接近を止めた。
右手は降ろし、彼女の左手と固く絡めている。
唾液をたっぷり塗りたくった舌で彼女の唇をなぞる。
すぐに彼女もてらてらと光る自身の舌を絡ませてきた。
二つの舌は突付き合い、回し合い、お互いを深く味わい合う。
相手の荒い吐息も全て吸い込むように注意する。
狂った獣のように、ただただ欲しいものを求め続けた。
やがてどちらからともなく、唇を完全に密着させ、押し付ける。

「んちゅ・・・んっ、ちゅう」

口腔からひどくいやらしい音が立ち始める。
その音は昂りの起爆剤だ。
私は左手でパチュリーの髪を撫でた。
それに呼応してか、彼女の舌の動きが激しくなってくる。

「ふっ・・・っんちゅ・・・ちぅ」

私の舌を歯に押し付けたり、捲り上げてきた。
小さな刺激でも脳髄からとろけてしまいそうになり、喘ぎ声が流れた。

「くぅ・・・ちゅぅ・・・ふあぁう」

私もこの欲望の昂りを抑えられるはずが無い。
彼女の髪を撫でていた左手を自分の方へ引いた。
どちらのものか分からなくなるくらい唇を強く合わせ、
同時に思い切りパチュリーの舌を吸い込んだ。

「むぅ?!んー!・・・んっ」

舌がこちらの口腔へ入ったら、口を小さく窄めた。
私の口腔内で舌が戻ろうと暴れている。
だがそれは、私が許さない限り叶わないことだった。
小さく窄まった唇のせいで、彼女の舌は自分の領域に戻ることができないのだ。

「んぅ・・・」

降参したように、パチュリーの舌は動きを止めた。
私は舌を折り曲げて、舌裏を刺激する。
触れるか触れないかの近さで滑らせたり、逆に強くあてがい左右の反復を高速でさせた。
時々身体がぴくりぴくりと痙攣するパチュリーの反応が面白い。
舌先を舌先で嬲ってみた。

「んふぅ・・・あぁぅ」

喉の奥から絞り出したような声が聞こえてくる。
一緒に吐かれた息も思い切り吸う。
吸いきると、まるで彼女の全てを手に入れたような優越感に浸れた。
だが、まだだ、これからだ。
私はゆっくりとパチュリーの舌を拘束する窄みの力と、唇を拘束する私の左手の引く力を弱めていく。
お互いの舌と唇が完全に離れる瞬間、
私は彼女の唇の中へ自身の唇を浅く捩じ込み、大量の唾液を流し込んだ。
先ほどの愛撫の間、私は唾液を嚥下していない。
溜めていた自分も苦しかったほどだ、並大抵の量ではないだろう。

「っ!んっうううう!」

吐き出してしまうと思っていたが、パチュリーは口元を強く引き締め耐えていた。
しかしやはり無理なのか口の端から一筋、つぅと涎が漏れた。
顎に伝ったそれは銀の糸をひいて、ぴたりと閉じられた彼女の腿の上へ落ちる。
黒いパジャマにさらに黒い斑点ができた。

「それ、美味しいぞ」

耳の近くで囁き、耳たぶを何度か甘噛みする。
びくん、とパチュリーが痙攣した。
私の右手を引き千切りそうな力が左手に入っている。
彼女の正面へ再び顔の位置を戻すと、口元からの筋が幾本増えていた。

「んぅ!・・・ん!・・・んんんぅ!・・・ん、んっく」

小刻みに震えながらも、パチュリーは唾液を全て嚥下したようだ。
私にぎこちなくにっこり微笑むが、細めた両目から涙が垂れた。
――本当に、狂ってしまいそうなほど愛おしすぎる。
私はそんな健気すぎる彼女を優しく抱きしめた。
布越しに膨よかとは言えない、小さな胸の感触が伝わってくる。
だが、いくら小さくともパチュリーの持つ胸は、私にとってどんな胸より価値があった。
このままパジャマとブラを剥ぎ取り、揉みしだきたいところだが、彼女の呼吸が整うまで待つことにする。
パチュリーは私の右肩に顎をのせ、荒い息をしている。
その吐息に紛れて、消え入りそうな声だったが、彼女は呟いた。

「はぁっ・・・はぁっ、うん、美味し、かった・・・はぁっ、とっても」

それを聞いた私は、無意識に彼女を更に優しく、強く抱いていた。


_/ lunaticgate and lunaticworld * "01" closed.
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_/ atogaki *
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初めまして、rdと申します。
こんな魔理沙を見る日は一生無いだろうな、と思う今日この頃だったりします。
逆にパチュリーは何色にも染まりそうでアレだなぁとか思ったり。
後半も書こうと思うので、見かけたら是非読んでもらえると嬉しいです。

書いた人:rd


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Last-modified: 2018-01-07 (日) 04:56:13 (2299d)