夜。もう真夜中だというのに、大きな月がまるで太陽のように地を照らす。今宵は満月だ。

藍は、満月の夜に限っては寝る前に月を見る。
橙に一度その理由を聞かれた事があったが、その時は「ただ、なんとなく」と言葉を濁した。
その理由など、藍は今まで考えた事がなかったしこれから考えようとも思わない。これからも「なんとなく」月を見るだろうから。
そしてこの日も、瞼が重くなるまで満月を堪能して眠りに就こうとした。


『藍さま・・・起きてる?』

襖の向こうから声がする。それが誰なのかは考えるまでもない、橙だ。
いつもなら藍よりずっと先に寝ているはずの橙が、藍が寝る時間に起きている。ちょっとした珍事だった。

「どうした、橙?」
『なんだか今夜は寝れないの・・・藍さま、一緒に寝てもいい?』
「・・・ああ、いいよ」

襖の向こうの声がいつもより甘ったるく聞こえた。
橙と言えば24時間元気いっぱい。その元気なはずの声が、随分しおらしく感じられる。

――真夜中だからさすがに大きな声を出したくないんだろう。
――あいつもだんだん気遣いって物がわかってきたじゃないか。

藍はそう考え、それ以上深く考えず襖を開けた。


「おじゃまします・・・・」

藍の部屋に入ってきた橙は、やはりしおらしい感じだった。
そして、しおらしいというよりは恥ずかしがっているという感じでもある。
だが、藍はこれを見ても特に深くは考えなかった。

「お前が眠れないとは珍しいな、今日はあまり遊んでないのか?」
「あ、いや・・その・・・そうじゃなくって」
「・・・興奮してるみたいだな?何かあったか?」
「べっ、別に何もないよ・・・・・・」
「?・・・・・・まあ別にいいけど。ほら橙、布団に入りな」
「う、うん・・・・・」

睡魔に頭を支配されかけて思考が鈍っているのか、明らかに橙の様子がいつもと違うのに藍はそれを気にしなかった。
布団をめくり、橙を誘う。橙は布団に入るやいなや、いきなり藍に抱きついた。


「ち、橙?」
「ふにゃ~、やっぱり藍さまふかふか~・・・」

藍の尻尾をさすりながら橙が心底幸せそうな顔を見せる。
恥ずかしそうにしてたのはこれをやりたかったからなのだろうか。
今まで恥ずかしそうにしていたのが表情も言葉遣いも軽くなり、橙はいつも通りの元気な橙に戻った。

「ふふっ、しょうがない奴・・・ほら、今夜は冷えるからもっとこっちに来な」

藍も空いている腕で橙を抱く。橙は気づいていないが、藍も心底幸せそうな顔をしている。
肌寒い夜も、二人一緒なら寒くない。お互い幸せな顔でその夜は眠りに就いた。



























青を選べば、ここで終わる
ほのぼのSSで終わる事ができる
赤を選べば、マヨヒガの奥底へ降りていける
発情期の橙があなたを待っている

blue           red~


























blue          <red>~


いいか、見せるのはエロSSだ
引き返すなら今のうちだ

























眠りに就いてからどれくらい経っただろうか、藍はなかなか寝付けなかった。
すぐにでも眠ってしまいそうなほど眠いはずなのに、なぜか眠れない。
ちゃんと布団をかけているはずなのに妙に涼しい。ちゃんと寝巻きを着ているはずなのに妙な感触がある。
少しくらいなら我慢もできるが、ずっと続けばその限りではない。そして、ついには藍の我慢の限界を超えてしまった。

「・・・・・!・・・なぁっ!?」

一気に意識が表層に引っ張り出される。そして布団を引っぺがした藍が最初に見たのは、寝巻きを脱がして下半身にしがみついている橙の姿だった。

「な・・・・何やってる!!」

考えるよりに先に、藍は橙を突き飛ばしていた。

「にゃっ!?」
「・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・橙、お前一体何やってるんだ!」
「うぅ、ごっごめんなさい、藍さま・・・・」
「・・・・怒らないから正直に言ってみな。何であんな事してたんだ?」

数秒の間をおき、橙は目の前の藍にしか聞こえないほどの小声で呟くように話し始めた。


「あのね、何でか分からないけど体がムズムズするの・・・止まらないの・・・・」
「体が・・・ムズムズ?」
「うん・・・・それで、体がムズムズして、なんだか熱いの・・・」
「熱い?熱でもあるのか?」
「ううん、お股の所だけが熱くて・・・・・・胸もドキドキして・・・切ないの・・・・」
「・・・・そうなったのはこれが初めてか?」
「(ふるふる)今までにも何回かあったの・・・今までは我慢してたんだけど・・・・
 だけど、もう我慢できなくて・・・・・・」

「ふむ・・・・それは多分、発情期だな。ちょうど今は秋だし」
「はつ・・・じょうき・・・・?」
「今のお前みたいな感じになる時期の事さ。子孫を残そうとする本能、理性で抑えられるものじゃない」
「え~っと・・・・・」
「つまり、我慢はできないし、しなくてもいいって事。ぶっちゃけて言えば・・いや、言いにくいが・・・その・・・
 気持ちいい事をしないと駄目なんだ。今のお前も無意識のうちにそうしようとしていたわけだし」
「気持ちいい事・・・・外で思い切り遊ぶとか?私、いつもいっぱい遊んでるよ?」
「いや、そうじゃなくって・・・・」

藍は答えに悩んでいた。
雌として避けては通れない発情期、どういうものなのか早いうちに教えておくべきか。
だがそれを教えるには橙はまだ幼すぎやしないか。
だが実際発情期を迎えている橙には教えるべきなのか。



「・・・・・・しょうがない、どうしたらいいか教えてやる。どうせ遅かれ早かれ経験する事だしな」

藍は橙の寝巻きを脱がせ始めた。






「にゃっ!?藍さま、何してるの!!?」
「何って、これがご飯を炊いてるようにでも見えるのか?」
「見えないけど・・・恥ずかしいよぉ・・・・・」
「少し我慢しろ、どうせ私しか見てないんだから」
「・・・うん・・・・・」


寝巻きの下からのぞく橙の身体は、驚くほどきれいだった。
穢れを知らない身体だった。同性をも惹きつけられそうな身体だった。
健康美・・・というにはまだ幼い感じもするが、どこにも無駄のない身体だ。

「しかし・・・きれいだな、橙の肌。柔らかくて、スベスベで・・・・」
「ら、藍さま?」
「本当にきれいだ。もう、独り占めしたいくらい・・・」
「え?何言って――」

裸になった橙を、藍は強く抱きしめる。
橙の力では逃げ出せない程度に強く抱きしめたら、間髪入れずに唇どうしを重ね合わせた。

「んっ!?んん~~!!」

「・・んっ・・・・唇も柔らかくて・・・その、なんだ・・・・いいな・・・」
「・・・・・ら、藍さま!いきなり何するの!?」
「言っただろ、気持ちいい事をしないと駄目だって。これはお前のためにやってるんだ。
 決して私のため・・・・・・などではないぞ」
「う・・それなら・・・しょうがないけど・・・・」

橙は、藍の言う事には逆らえない。
年長者の言う事は聞いて損はないと日頃から教えられているからというのが理由の一つ、
藍に絶対の信頼を置いているからというのが理由のもう一つ。
今まで藍が橙に言った事に間違いは一つもなかった。だから、橙は今回も
自分だけではどうにもならなかった以上藍を頼るしかなかったのだ。


「じゃあ続きだ。発情期のお前なら、すぐに慣れる」
「な、何するの・・・?」
「そんなに怖がるな。痛い事なんて全然ないから」

指で股間を撫でていく。
毛の一本も生えていない、まっさらな下半身。暖かく、柔らかい感触が指先に伝わる。

「いっ・・・・」
「発情期だから感覚が敏感になってるはずだ。ほら橙、ここが気持ちいいだろ?」
「ふあっ・・・く・・くすぐったいよぉ・・・」
「ここはよく慣らしておかないと後で大変になるからな・・・どれ」

それは半分真理で、半分言い訳に過ぎなかった。
大事な式の為、橙の教育の為と思いつつ、橙の放つ発情期特有のフェロモンに惹かれている藍がいる。
そして、藍はいけない事と知りつつ半ば自分の為に橙をダシに使おうとしていた。


「どうだ、この方が気持ちいいだろう?」
「ひゃっ・・・・やっあ、駄目・・・なめないでぇ・・・・・」
「何言ってるんだ、まだこれからだぞ。こうやってお前をしっかり湿らせて慣らしておかないと・・・」
「やだ・・・藍さま、汚いよぉ・・・・」
「大丈夫、橙の身体は全然きれいだから。もし汚れてたとしても、こうして私が舐めてきれいにしてやる」
「ひっ・・あぁぁぁっ!」

もし、相手が藍以外の誰かだったら橙は容赦なく爪で引っ掻いたり符を使って撃退しているだろう。
藍だから、相手が藍だからこそ橙は拒みつつも拒みきれないでいた。
そして、橙は少しずつ藍に身体を委ねるようになっていた。


「・・・・・もういいかな」
「ふ・・・にゃぁ・・・・・・・」
「もう少しだから。頑張れ、橙」

橙は猫又という事で、尻尾が2本ある。
その2本の尻尾が、藍の愛撫に反応したのかピンと硬くなっている。
藍はそのうち1本を手にした。

「頑張れ橙、ここを乗り越えれば本当に気持ちよくなる・・・・」

藍の唾液と橙の愛液でとろけそうになっている橙の秘裂に、藍は橙の尻尾をあてがった。






「へ・・藍さま、まさか・・・・・?」
「そう、そのまさかだよ」

入り口を押し広げ、硬くなった尻尾をねじ込もうとする。
だが、本物の男根ほど硬くない尻尾を橙の幼い身体に挿し込むのは藍の想像以上に難しい事だった。


「・・・・・・・・!?」
「まだだ、もう少しだけ・・・」
「いや・・怖いよ藍さまぁ・・・・」
「体の力を抜いて。私を信じろ」
「く・・・うぅぅぅ~~・・・・」

目を固く閉じ、歯を食いしばり、涙すら流しながら橙は藍にしがみついて耐える。
それを見て、藍の中の理性が大きくなる。理性は藍に『やめろ』と叫ぶ。

(私・・・橙の主人として失格かな・・・・教育の為とか誤魔化して泣かせちゃうなんて)


だが、橙の切なそうな表情が、喘ぎ声が、そしてフェロモンが藍の中の本能を揺さぶる。

(だけど、これは橙の為なんだ。そう、橙の為、橙の為・・・・)


どちらが正しいのか分からず、思わず手に力が入ってしまった。
そしてその所為かどうかはともかく、尻尾は橙の秘裂を大きく押し広げて中に入っていった。



「ひ・・・ぎ・・・・・・・・・!!!」
「・・・・・入った」
「いあぁ・・・・らんさまぁ・・・痛いよ、いたいよぉ・・・・・」

初めての挿入という事で、血がにじみ出る。
藍はそれを丹念に舐め取ると、どうにか入った尻尾をゆっくり動かし始めた。

「よく頑張ったぞ、橙。さあ、もう本当に怖がる事はないから」
「うっ、うあっ・・ああああぁっ・・・・!!」
「お前は初めてだからまだ分からないかも知れないけど・・・これは本当に、本当に気持ちいいんだ・・・・・
 味を占めれば溺れてしまうくらいに・・・・溺れて抜け出せなくなるくらいに・・・」
「にゃっ・・あぅ・・・あ、ら、らんさまぁ・・・・・・」

まだ橙は藍にしがみついている。だが、その顔はわずかに紅潮し固く固く食いしばっていた口元も緩んでいる。
そして何より、泣き顔に近かった顔がむしろ喜んでいるようにすら見える。
今や橙は、快楽の虜になりつつあった。

尻尾を出し入れするペースが速くなっていく。
それに合わせ、橙の表情もだんだん緩み声もとろけていく。


「藍さまぁ・・・す、すごい・・・・気持ちいいの、いっぱい来てるよぉっ・・・・
 ねぇ、またお股が・・・ムズムズ・・・・してッ・・・・ああああぁ!!」
「(そろそろイクかな・・・)橙、もうすぐだ、もうすぐ終わる」

「やっ・・あ、何か・・・くる・・・・・にゃ・・・・・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

悲鳴にも似た叫び声をあげ、橙は絶頂を迎えた。
流す涙は嬉し涙か痛みと恐怖の涙か。半泣きのまま藍に抱きついている。
そんな橙に藍は囁きかけた。


「ごめんな橙、痛かったか・・・?」
「・・・うん・・・・・でも、藍さまの言ったとおり、気持ちいいのもあった」
「そうか・・・・でも、他に教え様があったはずなのにこんな事しちゃって、私ったら」

「藍さまは悪くないよ。だって、藍さまは間違った事をしない。そうでしょ?」
「・・・・・・そうだったな。そうだ、私は間違った事をしない。橙に間違いは教えない」
「えへへ」

橙に教えた事は、半分正解であり半分間違い。だが、今の橙を見る限り間違った事はしていないはず。
確証があるわけじゃないが、藍は何となくそう信じていた。


「藍さま、また『はつじょうき』が来たら私に色々教えてね!」
「駄目だ。今度からは自分で何とかしてみろ」
「えーっ!?」
「・・・・って言っても、まだお前一人でどうにかするのは無理だな・・・しばらくは私が教えてやるよ」
「やったー!それじゃ藍さま、約束だよ」
「ああ、約束・・・」
「じゃあ藍さま、おやすみぃ・・・・・」

服を着るのも忘れ(面倒なだけかも知れない)、橙は再び藍の尻尾を枕にして眠ってしまった。
藍はそんな幸せそうな橙を見て、さっきの橙の顔を思い出して、ふと思う。

今度は私も一緒に・・・・・・

橙のフェロモンはまだ効いている。
顔を真っ赤に染めながら、藍もそそくさと布団に入った。
もちろん、肌寒いから橙を抱き寄せる事を忘れずに。

(end)

























あとがき。

えーと、色々とスミマセンm(_ _)m
エロSSに関してはマジで1ヶ月以上のブランクがあったので上手く書けたかどうかw
普通のSSならいいんですが、エロになると途端に遅筆になってしまう。
描写とか喘ぎ声とか、諸々の部分で色々考えちゃうからかな?
ともあれ、あとがきまで読んで下さったあなた、激しく乙です。
ありがとうございました。

書いた人:0005


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Last-modified: 2018-01-07 (日) 04:56:13 (2273d)