誰か この子を育ててやって下さい
名前は『理沙』です
彼女が『それ』を見つけたのは深い深い森の中。ポツポツと雨が降り始めた時だった。
目の前にあるのは大きな木の箱と白い張り紙、そしてその中にいる赤ん坊。つまり捨て子という事だ。
『理沙』というのはその子の名前だろう、見た目では分からないがどうやら女の子のようだ。
「やれやれ、最近の人間ときたら・・・子ども一人育てる事もできないのかねぇ」
そういう彼女は人間ではない。人間よりはるかに永い時を在り続け、遂には実体を持つに至った精神体。
『幽霊』とか『お化け』などと言われる事もあるが、彼女の実態は悪霊にして祟り神。精神体の中ではかなり上位に位置していたりする。
「自分で育てられずに捨てるんだったら最初から子どもなんて作るんじゃないよ、まったく・・・・・・」
他人事と言ってしまえばそれまでだし実際他人事なのだが、彼女は人間より人間らしい所がある。
だから目の前の捨て子を見て放って置くわけにもいかず、顔を知らぬこの子の親に怒りを覚えたりもしている。
そして寝息を立てている赤ん坊の顔をそっと覗き込む。
この子は自分が親に捨てられたという事を分かっていないだろう。そのまま放って置けばあっけなく死んでしまう事も分かっていないだろう。
彼女にしてみれば、見なかった事にして立ち去ってしまえばそれで全てが終わる。だがそんな事ができるほど自分は残酷であるとは思っていない。
だが、仮にも悪霊である自分が人間の赤ん坊を引き取ったなどと他に知れたらどうなるか?
何となく恥ずかしいし、祟り神としてのカリスマに傷が付きそうな気がする。周りから畏れられないようでは悪霊失格だ。
目の前の難問をどう解決するべきか・・・?うんうん悩んだ末、ようやく彼女は一つの結論を導き出した。
「・・・・・まだ何言っても分からないと思うけど、あんたを私の弟子にするよ。私が魔法でも何でも一杯教えて、あんたを一人前の人間にしてやる。
私としても、ただ独りで在り続けるだけってのは暇だしね。あんたがいれば少なくとも退屈する事はなさそうだ」
赤ん坊を抱き上げようとすると、その時突然赤ん坊が目を覚ました。
よくある黒や茶色の瞳ではなく、淡い金色の瞳。そういえば僅かに生えている髪もうっすらだが金に染まっている。
突然変異か何かだろう、と彼女は考えた。だが、そんなちょっとした変異でも『神の子だ』とか『忌み子だ』とか騒ぐ人間は必ずいる。
ならば今回の場合、忌み子として恐れられ捨てられたと考えられなくもない(だとしたら『育ててやって下さい』などと書かないだろうが)。
だが、どちらにしろその子が大人の勝手な都合で捨てられたという事に変わりはない。彼女は迷わずその赤ん坊を抱き上げていた。
「子どもを捨てるような人間がつけた名前をそのまま使うってのは癪だねぇ・・・・よし、私の名前を一字やろう!あんたは『魔理沙』、たった今から『霧雨 魔理沙』だ!」
そして彼女は『理沙』改め『魔理沙』を抱いて闇の中へ消えた。
彼女の名は魅魔、悪霊というにはいささか邪気の足りない存在である。
『ママぁ、いつものあれやって!』
『魔理沙は星が大好きなんだねぇ・・・そぉら!』
『うわぁ、きれ~!』
『フフ・・・その内あんたもできるようになるよ』
『え?わたしも?』
『その為にはいっぱい練習しないと駄目だけどね』
『うん、やるやる!わたしもおほしさまいっぱいだしたい!』
『じゃあ明日から練習・・・してみる?』
『わ~い!』
『ねぇねぇ魅魔さま!』
『どうしたの、魔理沙?』
『私も星が出せるようになったんだよ!』
『本当?』
『見ててよ~・・・・・・・う~ん・・・・・えいっ!』
『・・・・こんなに早く・・・・・大したもんだ』
『魅魔さまが教えてくれたおかげだよ。ありがとう!』
『これは魔理沙が毎日頑張って練習したからさ。凄いじゃないか』
『えへへ』
『魅魔様、誰か来る』
『・・・ああ、あれは博麗の巫女ね』
『魅魔様の知り合い?』
『知り合いっていうか・・・まあちょっとした腐れ縁ってとこかしら』
『すごい殺気・・・・・あいつ、魅魔様を倒すつもりなのかな?』
『そうでしょうね。あいつのいる神社に妖怪とか送り込んでやったから』
『・・・・・私も行っていい?』
『・・・まあいいでしょ。博麗の巫女、人の身で極めた封魔の力、私達には敵わないにしても見る価値はあるわ』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『魔理沙、あんたはそろそろ独り立ちすべきだと思う』
『ど、どうして・・・?』
『あんたには私の知る全てを教えてやった。そしてあんたは私に匹敵するくらいの力を持つまでになった。
さらに高みを目指すなら、あんたは独りで頑張った方がいいと思うのよ』
『そう・・・私、魅魔様と同じくらい強くなったんだ・・・・・嬉しいけど・・・・なんか寂しいな・・・・・・』
『・・・・たまには遊びに来てもいいのよ。もう会わないって言ってるわけじゃないんだから』
『うん・・・・・たまには遊びに来るよ、魅魔様』
『じゃあね、魔理沙。頑張りな・・・・・・』
『はい・・・ありがとう、魅魔様・・・・・・』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「久しぶりだねぇ、魔理沙」
「あ、魅魔様・・・・・・お久しぶり」
ここは博麗神社。神社に来た珍しい客は、霊夢・魔理沙両人に縁のある人物(?)だった。
青い服に青いとんがり帽子、そして緑色の髪。魔理沙の師にして育ての親、魅魔だ。
「『たまには遊びに来る』とか言っておきながら全然来なかった・・・・私、嫌われちゃったのかねぇ」
「そういうわけじゃないぜ、魅魔様。ここにいれば魅魔様がいつか必ず来ると思ってたんだ」
「そうかい?それにしても何ていうか、せっかくの再会なのに感動みたいなものが・・・・・」
「・・・・・・あ~魅魔様!会いたかったよ~!」
「・・・・・・魔理沙も大きくなったねぇ、嬉しいよ~」
棒読みの台詞と明らかに演技100%の表情で魅魔に抱きつく魔理沙。だが嫌そうな顔は全くしていない。
だから魅魔もあえて同じような演技でやり返す。幾らかの時を経ても二人の仲がいい証拠だ。
「・・・・・いやそれにしても。ほんのちょっと会ってないだけなのにずいぶん背が伸びたんじゃないかい、魔理沙?」
「今の私は成長期だぜ」
「言葉使いまで変わって・・・昔のかわいい魔理沙はどこに行っちゃったのさ」
「言葉使いが変わっても私は私、変わらないさ」
「昔みたいにもっと甘えてもいいんだよ・・・?」
「え、え、遠慮しとくぜ(霊夢の前で、恥ずかしい・・・)!」
「昔みたいに?甘える?面白そうねぇ」
横から霊夢が口を挟む。魅魔も嬉しそうな顔で話に乗ってくる。
この二人、かつては憎しみ合っていたはずの間柄なのに今ではそんな事を微塵も感じさせない。
霊夢と魔理沙も敵として戦った事があるのだが、今ではすっかり打ち解けてしまっていたりもするが。
「小さい頃の魔理沙ってばかわいかったのよぉ・・・いつも私の後について来て、私のする事を真似しててね」
「い、言うなよ魅魔様・・・恥ずかしいじゃないか・・・・・」
「魔理沙に魔法を教えたのは私なんだけどさ、この子は星を出す魔法がお気に入りでねぇ。毎日練習して真っ先に覚えちゃったのさ」
「ほぉ~、『かわいい魔理沙ちゃん』はその頃から努力家だったと?」
「あ~やめてくれ、人の恥ずかしい過去を~・・・・・」
「悪い事じゃないんだからいいじゃないのさ。それでね、小さい頃の魔理沙はとても甘えん坊で私の事をマ・・・・・」
「わ~~っ!!わ~~っ!!それ以上言うな~~っ!!」
「なるほど~、魔理沙は小さい頃魅魔の事をマ・・・・・とね」
顔を真っ赤にして騒ぎ立てる魔理沙と心底楽しそうな魅魔と言葉の続きが分かってしまった霊夢。
魔理沙と魅魔にしてみれば感動の再会のはずだが、いつも通りの騒がしくも穏やかな日常の中に埋もれてしまった。
「あんたと一緒に夜を過ごすのも久しぶりだね、魔理沙」
「・・・ひょっとして魅魔様のほうが寂しかったんじゃないの?」
「ばっ、馬鹿言わないでよ。あんたが寂しがってやいないか心配してきたんだから」
「はいはい、そういう事にしとくぜ」
「・・・・・・本当だってば」
夜の霧雨邸。
『せっかくの再会なんだから』と、魅魔が押しかける形で勝手に上がりこんで今は紅茶の時間というわけだ。
「元気そうで何よりだよ。甘えん坊のままのあんただったら、泣きながら私の所に来るかと思ったけどね」
「そりゃどこの魔理沙だよ・・・(汗)」
「・・・修行も真面目にやってるみたいだし」
「あ、分かる?」
「自分で言うな」
「はは・・・(^^;」
「そうだねぇ・・・目を見れば相手の状態は大体分かるもんだよ。あんたの目はキラキラ輝いてた」
「・・・・・・ありがと。褒め言葉と受け取っておくぜ」
「そうだ・・・目といえば、少し充血してるみたいだね。何かあったのかい?」
「・・・やっぱり魅魔様はよく見てるんだな」
魅魔に指摘された目をこすり、魔理沙がぼやく。
「知り合いから借りてきた古い魔道書の解読をやってるんだ。本自体がボロボロで使ってる文字も古いものときた。
1ページ読み進めるのに徹夜してどうにか・・・って所なんだ」
「ふぅん・・・・・・」
「悪魔の召喚とか儀式魔術の本でさ、私にはあまり縁のない本なんだけど解読するのが楽しくてつい・・・・徹夜しちゃう」
そこで大きな欠伸を一つ。そういえばまだ夜は永いというのにもう目がトロンとしている。
話し相手でもいなければとっくに眠りに就いているか、そうでなければまた徹夜をするだろう。
「眠いんだったら無理しないで寝ちゃいな。私の事は構わなくてもいいから」
「うん・・・・・・ゴメン、魅魔様」
「魔理沙、もしよければ・・・私が一緒に寝てあげようか?」
悪戯っぽい笑みを浮かべる魅魔に、流石の魔理沙も一歩退く。
「い、いいよ・・・・一人で寝れるから。じゃあお休み、魅魔様」
「お休み、魔理沙・・・・・・」
魔理沙が読んでいるとかいう魔道書をパラパラとめくってみる。
魅魔にとっては見慣れた字だが、本の所々が破れているとなるとその字を理解できる彼女でさえ読むのは多少面倒になる。
ましてや魔理沙は文字を解読しながらの作業。1日1ページというのは嘘ではないようだ。
「この本・・・あの子が読み終わるには結構な時間がかかりそうね・・・」
その本だけではない。周りを見れば、山のように詰まれた魔道書の数々とマジックアイテムの数々。
見た事のある物から見た事のない物まで。そして魔理沙が書いたと思われるレポートの数々。
全て独り立ちしてから集めたものだろう。そしてレポートを書いているという事は何らかの研究や考察をしているという事だ。
「私の予想以上に頑張ってるみたいだね、魔理沙・・・・・・少し安心したよ」
さて、魔理沙は本当に眠っているだろうか。寝るとか言っておきながら、こっそり本を読んでいたりしてないだろうか。
夜更かしが身体に毒なのは分かっているはず、しかし魔理沙の性格を考えると寝床で本を読んでいても不思議はない。
物音を立てないよう、魅魔はゆっくりと寝室へ向かった。
寝室に入る際、最も気を遣ったのはドアの開閉だった。
物音を立てずに移動する事は問題ない。だが、彼女は霊体なのに実体を持つが故にドアをすり抜ける事ができない。
ドアの軋みが聞こえたら大変・・・と必要以上に慎重になって恐る恐るドアを開ける。そしてようやく部屋に入った時、
霊体なのに冷や汗が頬を伝うという有様だった。
ベッドの中の魔理沙は確かに眠っている。あれだけ眠そうな目をしていれば夜更かしなどしている余裕はないだろう。
「ちゃんと言いつけ守ってるね、偉い偉い」
こうして見ていると、昔の事を思い出す。
なかなか寝付かない魔理沙。お話を聞かせてと魅魔に頼み込む。
魅魔のお話が魔理沙にとっての子守唄。しかし必ずいい所で魔理沙は眠ってしまう。
「・・・・今夜はお話聞かせてあげられなかったか・・・・・・・むしろ、私が何か為になる話を聞かせてもらえるのかな?」
あんなに小さかった魔理沙もこんなに大きくなった。独りでもちゃんと頑張っていて、敵として戦ったはずの巫女とも今では普通に友達になっているようである。
心残りといえば、魔理沙が独り立ちしすぎてしまった事。魅魔には魔理沙の育ての親という自負がある。『娘』の成長した姿を見て嬉しかった反面、
もう少し『親』に甘えてくれてもよかったのに・・・・・・という思いがあるのだ。
ただ一つ、それだけが彼女にとっての心残りだった。
「魔理沙はもう・・・・大人だもんね・・・・・お休み」
「ん・・・・・・」
部屋を出ようと背を向けたその時、少し大きな魔理沙の寝息が聞こえてきた。
それは寝息というよりは寝言に近く、口をモゴモゴさせて何か言いたそうである。
魅魔の足は当然のように止まっていた。
「んっ・・・・マ・・・マぁ」
「・・・・・・・・!?」
「ママぁ・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・!」
昼間の魔理沙からは想像もつかない、まるで小さな子どものように甘えた声での寝言。
目の前でこんな事を言われては反応のしようもなく、魅魔といえども立ち尽くす他ない。
「そうか・・・男言葉なんか使ってるけどやっぱり本音は・・・・・・」
やはり、魔理沙は魔理沙だった。魅魔に匹敵する実力の持ち主になり、男言葉を使うようになったとしてもその本質は甘えん坊の寂しがりやなのだ。
久しぶりに見た魔理沙の本音。魅魔の顔が思わず綻ぶ。
「ウフフフ・・・やっぱりまだまだ子どもだねぇ、あんたは・・・・・・・それに、多分私もね」
魅魔の心は一昔前のものに戻っていた。
小さい魔理沙に精一杯の愛を振りまき、『ママ』と慕われていたあの頃の心に。
『魔理沙が寂しがってやいないか心配してきた』と言っていたものの、本当は自分が寂しかったのかも知れない。
変な所で強がってみせる辺り、二人はまさに似たもの『親子』なのである。
「久しぶりに二人きりの夜なんだ・・・いいよね?」
魔理沙を起こしてしまわないように、そっとベッドの中へ。昔、毎晩やっていた事の再現だ。
寝言を言った後の魔理沙の顔は本当に子どものようで、あの頃の純粋さがそのまま残っている。
魔理沙が努力を怠っていない事に少しだけ安心した魅魔は、昔と変わらぬ魔理沙を見て完全に安心した。
ベッドに入った二人はまさに親子のように・・・・・・身体を寄せ合っていた。
「ん・・・・・」
冷たい外気が入ったか、うっかりどこかに触れてしまったか、魔理沙が鬱陶しそうな声を出して寝返りを打つ。
寝返った先には魅魔の体。二人で眠るにはやや狭いベッドの上で二人の身体がぶつかる。
「んぁ・・・・・あ?魅魔・・・・様?」
「あらら、起こしちゃったかい?ごめんよ」
「どうしたの・・・・?」
「ちょっと昔の事を思い出しちゃってねぇ・・・今夜は一緒に寝かせとくれ」
「・・・うん、今夜だけね・・・・・・」
昼間の男言葉はどこへやら、寝ぼけているのもあるのだろうが魔理沙の口調はすっかり丸くなり、実際の年齢以上に幼い感じになっていた。
幼くなったのは言葉だけではない。さっきの寝言もそうだが、久しぶりに魅魔と会った事と眠気のためか自制が効いていないようである。
幼児退行・・・という言葉は魅魔も知らないだろうが、今の魔理沙がそれになりかけているのだ。
「あはぁ・・・・魅魔さまあったか~い・・・・・」
「ど、どうしたんだい魔理沙・・・?」
「だって、魅魔さまが一緒に寝てくれるんだもん。嬉しい・・・・・」
「・・・そうかい・・・・・」
さっきは一人で寝れるとか言っておきながら、ベッドに入ったら魅魔にベッタリ。
まるで抱き枕のように魅魔に抱きついたまま放れない。顔も、一人で寝ていた時よりもずいぶん嬉しそうである。
だから、魅魔も魔理沙の小さな身体をぎゅっと抱きしめて放さなかった。
「・・・・・・ん?」
魅魔が異変に気付いたのは、ちょうど魔理沙を抱きしめた時だった。
自分の腹の辺りに何かが当たる感触。どうやら何か突起のような物だ。
(これって・・・・・・・ひょっとしてアレ?)
魔理沙の顔が赤い。嬉しそうな顔から一転、何かを我慢しているかのように顔をしかめている。
そして、魅魔はピンと来た。
「魔理沙・・・・・こりゃ一体何のつもりだい?」
「え・・・な、何が?」
「トボケなくてもいいよ。これだよ、コ・レ!」
「ひゃん!?」
腹の辺りに手をやると、驚いて魔理沙が腰を引いた。
感触に最初気づいた時から、魅魔にはそれが何であるかの予想がついていた。そして魔理沙の反応・・・・・条件はそろっている。
魔理沙の身体には、本来女性にないはずの物があるのだ。
これの存在には今気付いたというわけではない。魅魔が魔理沙と初めて出逢ったあの日・・・あの日から既に知っていたのだ。
髪や瞳の色が少々違う人間はいくらでもいる。では、仮に『育てきれない』という以外になぜ魔理沙が捨てられていたのかという理由を探ろうとするならば
答えは自然とここに行き着く。魔理沙には『男』と『女』が備わっているのだから。
俗に言う両性具有・・・男にして女、女にして男という完全体として崇めるか、男でも女でもない出来損ないとして忌み嫌うか。魔理沙は後者だったようである。
だが、魅魔にしてみればそんな事はどうでもいい。用を足す時どちらでするのかという疑問は湧くが、それでも魔理沙が魔理沙である事に変わりはないのだから。
彼女が問題にしたかったのは、魔理沙がその『男』を怒張させている事だった。
「だ、だって・・・・魅魔さまが抱きしめてくれるなんて思わなかったから・・・・・・・」
「それで興奮しちゃった・・・ってわけだ」
「・・・・・うん」
「怒ってるわけじゃないよ。だけどこれ・・・・・一人で鎮められるのかい?」
「分からない・・・いつも自然に鎮まるまで放っといてるから」
「未経験か・・・・・・いいねぇ、楽しみだ」
「楽しみって・・・・・・?」
「これを鎮めるの、私が手伝ってやるよ」
シーツを退け、魔理沙のパジャマズボンを一気にずり下ろす。その股間には確かに男を象徴する肉棒がそそり立っている。
魔理沙の身体には不釣合いなほど大きく、逞しい。今まで魅魔が見てきた中でも最大級のモノだ。
「あっ・・・」
「まだ皮被りか・・・かわいいねぇ」
「あんまり見ないで、魅魔さま・・・・恥ずかしいよぉ」
「今まで一緒にお風呂入った事もあるのに、今更何を恥ずかしがる必要があるのさ?」
「うぐぅ・・・・・」
「ま、私に任せな。恥ずかしいのなんてすぐに気にならなくなるから」
皮の先端を舌先で撫でながら、痛くしないようにゆっくりと皮を剥いていく。そしてピンク色の頭が露になった。
「うくっ・・・・・!」
「ほぉら、ご開帳~!ウフフ、やっぱり未使用ものはきれいだねぇ」
パンパンに膨れ上がった肉棒の先を指で突っつくたび、魔理沙が顔をしかめる。まだ粘膜が固まっていないとみえ、痛みばかり感じているようだ。
だがそんな事は魅魔もお見通し、ビクともしない。指による刺激はまだ効果が薄いと判断し、舌で裏筋を舐め上げる。
「ひぅっ・・・・!」
「少し痛いかも知れないけど我慢するんだよ、魔理沙・・・痛いのは最初だけだから」
「う・・・うん・・・・・」
裏筋を舌で何度もくすぐり、そして全体に舌を這わせていく。
唾液を絡め、痛くないよう丹念にゆっくりと・・・お陰で魔理沙も我慢できているようである。
そのせいか、魔理沙の顔からは険がとれて頬をほのかに赤く染め始めている。痛み以外の感覚を感じ始めているようだ。
その様子を見て魅魔はニィッと笑みを見せ、いきなり魔理沙のモノを口に含んだ。
「んあぁっ!?」
未知の感覚に慣れ始めていた魔理沙だったが、いきなり咥えられてビックリしたようである。
あらゆる箇所から間断なく刺激が来る。しかも魔理沙は仰向け、魅魔が体をしっかり押さえているので逃げたくても逃げられない(逃げる気などないが)。
「あっあっ・・・・・み、魅魔さま・・・なんか変な感じ・・・・・」
「こんな事されたことはないだろう・・・?もう痛みもないんじゃないかい?」
「うん・・・・くすぐったいような・・・・・・」
「・・・・上出来だよ」
唇と口の中全体を使って魔理沙を責め立てる。
魔理沙の大きいモノを口いっぱいに含み、柔らかい粘膜を優しく刺激する。ちゅぷ、ちゅぷ・・・と粘膜と舌が擦れる音が静かな寝室に響く。
そして自分の下半身にも手が伸び、己の性器を弄りだす始末。これぞ魅魔の魅魔たる所以である。
そもそも『魅魔』という彼女の名前は、偶然か必然かある悪魔と全く同じ名前である。
男性に淫夢を見せて夢精させるという夢魔、サキュバス。またの名を『魅魔』・・・・・・
夢こそ見せていないが魔理沙の精を搾り出そうとしている。今の彼女は、まさしく『魅魔』そのものだった。
「あぁっ・・・・だ、ダメ!魅魔さま、何か出る・・・・・!」
「いいよ、出しちゃいな」
「で、でも・・・・・・」
「大丈夫。私が全部飲んであげるから・・・・・・」
「あ・・・あっ!でっ、出るッ!!」
「ん!んぐ・・・・・・ふ・・・」
魅魔の口の中で魔理沙は弾けた。口から漏れるほどの精を放ち、それでもなお衰えない。
一方の魅魔も、口で受け止めた分の白い精は全て飲み干し、口の周りについているものを指で掬い取っている。
「いっぱい出たねぇ、魔理沙・・・」
「はぁ・・・・はぁ・・・・ゴメン、魅魔さま・・・・・でもまだ・・・まだ鎮まらない・・・・・・」
「・・・それじゃあ鎮まるまでトコトンやってみようか?」
「えっ?」
「私の方も準備OKだし、あんたは寝てるだけいいよ」
そう言って魔理沙のパジャマを全部脱がせ、自分も服を脱ぐ。
魔理沙が思わず息を呑むほどの完成された大人の身体。この身体で魔理沙に迫る。
「さ、身体の力を抜いて・・・大丈夫、本当にあんたは寝てるだけだから」
「・・・うん・・・・・」
魔理沙を跨ぐように立ち、彼女の肉棒に手を添える。
その上に狙いを定め、ゆっくりと腰を下ろしていく。
「入れるよ、魔理沙・・・・」
「魅魔さま、怖いよぉ・・・・・・」
「大丈夫。もし怖かったら、私の体を抱きしめてな。私も絶対に放さないから・・・・」
己の秘所に魔理沙をゆっくりと導き入れる。わずかな抵抗感とともに、先端部が入ってきたのが分かる。
反射的に魔理沙が上体を起こし、魅魔の体に腕を回す。魅魔も魔理沙を抱きしめ、それでも腰を下ろす事は止めない。
そして、魔理沙の『男』が完全に魅魔の中に飲み込まれていった。
「あぁぁっ・・・・!お、オ○ンチン入っちゃった・・・・・?」
「いいよ・・・魔理沙の、とっても太くて大きくてッ・・・・・・・!」
「魅魔さまの、とっても温かくって気持ちいい・・・・」
「まだまだ・・・これから動くんだからね」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに腰をくねらせ、ゆっくりと動き始める魅魔。
魔理沙の腕の力が強くなるが、それはもはや魅魔の動きを縛る枷にはなり得ない。
上体を起こしている魔理沙を再び寝かせ、腰の上で魅魔がその本性をさらけ出す。
「あっ!あっ!魅魔さまぁっ!オ○ンチンが、オ○ンチンがとろけそう・・・・・」
「どうだい・・・んっ・・・・魔理沙・・・・気持ちぃ・・・いいだろう・・・・・?」
「こんなのっ・・・・初めてだよぉっ・・・・・・!うぁぁぁぁっ!」
ギシギシ軋むベッドの上で悶え狂う二人。いきり立った魔理沙のモノを鎮めるという目的は忘れてはいないが、
お互いの想いを確認し合い尚且つ快楽のためにお互いを責め合う。今の二人はそんな雰囲気だ。
魅魔は腰を激しく動かしつつも、魔理沙を抱きしめて放さない。未知の領域に踏み込んだ魔理沙を怖がらせないように。
魔理沙も魅魔にしがみ付き、ちょうど目の前にある大きな胸を赤ん坊のように吸い始める。初体験で寝ているだけの魔理沙が、魅魔にしてやれる唯一の事。
お互いの行動がお互いの想いを加速させ、一つとなる。そして、先に限界が来たのは魔理沙だった。
「魅魔っ、魅魔さまぁっ!もう私ダメぇ・・・・また出ちゃうよぉぉっ!」
「んんっ・・・・いいわよ、魔理沙・・・・・私の中で・・・・くぅっ・・・・ブチ撒けちゃいなさい」
「もうダメ、あ、で・・出るッ!」
「うぁぁぁぁぁぁぁぁっ・・・・・・・!!」
魅魔が勢いよく腰を落としたのを合図に、魔理沙は今夜2度目の絶頂を経験した。
腰を震わせ、今度は口ではなく胎内に大量の精を吐き出す。一度出した後だというのに、その量は全く衰える事がない。
魅魔が腰を上げると、すっかり萎えきった魔理沙の肉棒に続いて白い粘液が糸を引いて垂れてきた。
それを指で掬い、一口舐めると魅魔は再び淫靡な笑みを見せる。
「いっぱい出したねぇ魔理沙・・・これでスッキリしたかい?」
「うん・・・・ありがと、魅魔さま」
「いいよいいよ、かわいい魔理沙のためだもの」
「あは・・・・・」
「じゃあもう寝ようか?もう真夜中だよ、子どもは早く寝るに限る」
「寝かせてくれなかったのは魅魔さまのくせにぃ~・・・・・」
「済んだ事は忘れな(笑」
こうして魔理沙と魅魔の久しぶりの夜、そして魔理沙の初めての夜は、昼間と同じように騒がしくも穏やかな幕切れを見せた。
もちろん、その後も同じベッドで身体を寄せ合って眠ったのは当然の事である。
「もう帰っちゃうの、魅魔様・・・?」
「ずっと居候してるのも悪いからね。それに、たまに逢う方が感動は大きいものさ」
「・・・ちょっと、寂しいかな・・・・・」
「それがいいんだよ。寂しいからこそ、久しぶりに逢った時嬉しいんじゃないか」
「そうだな・・・・・そういう事にしておくぜ」
一夜明け、魅魔は霧雨邸を去ろうとしていた。
魔理沙の言葉使いはもういつもの男言葉に戻っている。言葉使いが違うと表情も違ってくるようで、
女の子のかわいい笑顔というよりは男の子の元気な笑顔という感じである。
「今回は私から来たけど、次はあんたが来なさいよ」
「はいはい、忘れてなかったらな」
「その時は私がた~っぷり歓迎してあげるから・・・ね」
「・・・・・・(^^;」
「霊夢も連れて来ていいわよ。多い方が楽しいし」
「・・・実にいろんな意味に取れる台詞だな、悪霊とは思えないぜ」
「私は人生を楽しく過ごす悪霊よ?色々とね」
「あんたは人じゃないだろ」
「ま、とにかくそういう事で。じゃあね魔理沙!」
魔理沙の頬に軽くキス。そしてそのまま空に飛び上がる。
「あっ・・・・」
「バイバイ魔理沙~・・・・・・」
魔理沙の返事を聞く事なく、魅魔はさっさと空の彼方へ飛び去ってしまった。あとに残るは魔理沙のみ。
だが、魔理沙には分かっていた。魅魔がさっさと飛び去ってしまったのは、あまり長く居るとその分別れが辛くなるから。
魔理沙に気を遣ったというのが理由だろうが、きっと自分も別れが辛かったのだろう。だから、笑っていられるうちに笑顔のまま消えていった・・・
「フフッ・・・魅魔様もまだまだ子どもだぜ」
魅魔が消えていった方の空を眺めながら頬に手をやる。あの柔らかいキスの感触がまだかすかに残っている。
「キスのやり逃げなんて・・・ちょっと許せないよなぁ」
決めた。向こうが来ていいと言ったんだから、今度は必ず行ってやる。そしてキスのお返しをしてやる。
どんな歓迎をしてくれるのか分からないが、とりあえず笑顔で行ってやる。
固い固い決意を胸に秘め、とりあえず魔理沙は今日も博麗神社を目指すのだった。
幻想郷は広い目で見れば今日も平和だった。
(end)
あとがき。
ノーマル版を書いた直後にネチョ版を書き始め・・・もう完成。早っ!w
自分でも信じられないペースです。別に手抜きとかそういうのじゃなくて。
これはアレですか?自覚してないが魅魔様萌えとか、幼児退行ネタを自ら望んでいたとかそういうアレですか?
ああでも魅魔様は書いてて楽しかったなぁ。思うに、お姉さま属性に惹かれる部分があるのかも知れません。
でも旧作持ってない・・・(´・ω・`)ションボリック
旧作持ちの皆様、魅魔様のキャラはこれでいいのかどうか教えてくださいm(_ _)m
書いた人:0005