はあ……はあ……
空気が重い。
高速で飛び続けるときの空気の抵抗力というのは実際、地上で静止している状態から想像するよりはるかに強い。空気のような存在と呼ぶ場合、通常はあってもなくても変わらないようなものということを意味するが、この状況下においては空気こそが最大の敵なのだ。
だが魔理沙にとってみれば、こんな空気抵抗は慣れたもののはずだった。決して無にすることはできないが、空気に負けるほど鍛錬が足りなくはない。
それが、今日は、とても重い。
「……っ、は……あっ……」
粘りつく空気が全身を容赦なく襲う。魔理沙は苦しそうに表情を歪め、少しでも抵抗を小さくするようにとより体を前倒しにする。
止まるわけにはいかない。すぐ後ろにも横にも弾幕が展開されているような、そんな戦闘下で動きを止めるようなバカなことはできない。
とはいえ――
「く……っ」
攻撃に転じなければいけない。魔力を集中させる。――すぐに頭の奥のほうが真っ白になるような「波」が襲いきて、集中は簡単に霧散する。
「あ……く、あ……ぁああ……んっ!」
びくん、と全身を痙攣させて、堪えきれず、叫ぶ。
箒の上で、二度、三度と、体を丸くして、その波を耐え忍ぶ。
「んん……んふぅ……ッ!」
じわり……
奥底から、また熱い粘液が滲み出る感覚。それはとうに下着が押しとどめられる量を超えており、ローブも、さらに今座っている箒までもはっきりと濡らしていた。
びくんっ
もう一度。魔理沙は目を閉じて、歯を食いしばって、耐え切る。ぎゅっと箒を掴む。
もはや戦えるような状態でないことは明白だった。朦朧とする頭の中は、はやくめちゃくちゃにそこを弄りたい、もっと気持ちよくなりたいという本能だけに支配されようとしていた。既にもう、少し気を抜けば、無意識のうちに腰を振って、箒に擦りつけている。戦闘中だというのに。
下着の下で、クリトリスが硬く勃起しているのが、もう触らなくてもわかる。熱く熱く充血していて、少し体を動かすとぬるりと濡れた下着の表面に擦れ、甘美な快感を走らせる。そのたびに漏れ出る掠れた喘ぎ。声を抑えることもできない。
戦わないと。
攻撃しないと。
脳に浮かぶそんな言葉だけが、魔理沙の最後の抵抗。その言葉を、しかし、決して実行はできない。
魔理沙のすぐ隣を、弾と化したお札が通過していく。
「ふぁ……っ」
その風圧だけで、もう、まるで何本もの手で指で全身を弄りつくされたかのような感触になる。
「あ、あ、や……また……っ!!」
きゅうっ、と全身を駆け巡る波。ほんの少しの動きの乱れが、また絶頂へのスイッチを入れてしまう。何度も、何度もあったように。止めることは出来ない。ただ、少しでも快感を軽減してしまうようにできるだけ。
足元から脳まで、快感が急速に上ってくる。
体の表面は痺れ、中は燃えるように熱い。
「や、だ、だめ……う、あ、ぁ、あ、あああ――んッ!!」
だけど、もう。
限界だった。
このまま中途半端に耐えると、発狂してしまうかもしれない。このまま、駆け上がってしまいたい。
屈服した。
魔理沙は高度を下げると、箒に腰掛けていた姿勢から、箒にまたがる姿勢に変える。
その瞬間に、充血した突起が、くりん、と箒の硬い柄に擦れあい、潰れて、包皮が剥ける。それまでと比較にならないほど強烈で直接的な性感が全身を駆け巡る。
「あ、あ、んん、ああああああッ、イ、イ……ッ! ん……んんんんあああああああああッ!!」
もう視界には何も映らない。
ただ一心不乱に、必死に、高みを目指して、腰を振って、箒に擦りつけ、叩きつけ、圧迫して、もっと気持ちよくもっと激しくと追い求める。
ずりゅ、ずりゅ、と濡れた音。ぬるぬるに濡れきった箒に、突起を叩きつけ、割れ目を擦りつける。空を飛んでいる途中だとか、戦闘中だとか、そんな事実ももはや何の抑止力にもならない。
登りつめる。
目を閉じ、だらしなく口を開けっ放しにして、乱れ続ける。
両手で箒をしっかり握り締めて、腰だけを夢中で動かし続ける。
「イ、ぁ、イ……く……ッ……」
真っ白になっていく。このまま、脳が焼き切れてしまいそう。これまでどれほどまでに追求しても決して届かなかったほどの、遥かな高み。
気持ちいい、どころではない。狂ってしまう。だけど止まれない。
魔理沙は最後に、手を箒から離して、体全体を使って箒を抱え込む。抱きつく。
股間に強く押し付けた箒をさらにぐっと引き寄せて、内股に力を込めて、箒を思い切り締め付ける。
ぎゅー……っ、と全身が締まって。
「……っ! ぁぁあああああああ……ッ!! あ、ぁうあ……ッ!!!!!」
びくん……っ!
跳ねる。
二度、三度。
「あ、あ、あ、ああぁっ! ぅぁッ……!」
落下しながら、何度も何度も絶頂を迎える。
何度も何度も――
声も枯れそうなほどに叫び、これ以上はあり得ないとさえ思えるほどの強烈な性感。
しかし。
「……っはぁ……っ……や、いや……もっと……もっと……っ!!」
絶頂のたびにひくひくと膣内がざわめき、そこにも新たなる刺激を求める。だけど箒は表面を擦るばかり。
何度イっても、何十回と続けても、このままでは、まだ足りない。
「あ、あ……あ……もっとぉっ」
強く強くさらにお尻を前後左右にめちゃくちゃに振って箒の愛撫を求めるが、決して膣内の欲は満たしてくれない。箒は自慰の相手にはなってくれても、性交の相手にはなってくれない。
このまま箒の先を突っ込んでかき回してしまいたい。そんなことをすると本当に墜落してしまうだろうが、そんなことはもうどうでもいい。魔理沙は震える手を箒の先端に伸ばし――
「そこまでよ」
すぐ横から、唐突に別の声。
横から伸びた手は、魔理沙の体を箒ごと捕まえ、そのまま強い勢いで飛び続けていた魔理沙を引っ張り、方向を変える。
「……ッ!」
ぶるッ
魔理沙は新たに与えられた体温と刺激にまた、悦びに体を震わせる。
――直後には、こつん、という音が聞こえ、全身に一気に重力が戻ってきた。魔理沙は、全体重を先程の声の持ち主、霊夢に預ける形になる。とっくにもう地面に激突する直前だったのだ。
魔理沙はうっすらと目を開いて、とろんとした涙目で霊夢を見上げる。
――そして、霊夢の冷め切った目をまともに見てしまう。
「あ……いや……」
「気持ちよかった?」
「……っ!」
びく、と、また魔理沙の体が跳ねる。
ぎゅっと目を閉じる。けれど、耳まで塞ぐことはできない。
霊夢の声が少し近づく。
「私が見てる前で、箒なんかでオナニーして、気持ちよかったの?」
「やっ……」
「よかったんでしょうね。私のところまで聞こえるくらいよがって。あんなに獣みたいに腰振って」
「……く……の、呪いのせい……だ……」
消えてしまいそうな声で、それでも魔理沙は、必要な反論だけは、する。
「そうでしょうね。とっても気持ちよくなるお札だし」
霊夢は、意外なほどにあっさりと認めた。
魔理沙は勢い込んで、うんうんと強く首を縦に振る。今あった出来事は全て呪いのせいであって魔理沙の地ではないと。
しかし。
「でも残念。理性を失わせるものってわけじゃないから、気持ちいいからっていきなり目の前でオナニー始めちゃうのは、魔理沙がそういう子だからよ」
「……! 違う……! 絶対……」
「そうかしら」
霊夢は呟くと、魔理沙をゆっくりと地面に下ろす。
魔理沙はほとんど体力を使い果たしていてふらふらだったが、なんとか両足で地面を踏みしめ、崩れ落ちないように踏ん張る。こうしている今もまだ、体は熱く火照って次の快楽を待ちわびて痺れている。
「ん……っ」
そうしてなんとか立った魔理沙から、霊夢は箒を奪い取る。
そして、箒を目の前に掲げ――魔理沙が先程まで座っていた部分に顔を近づける。そこはべとべとに濡れており、黒く変色していた。
「あ……や……」
魔理沙は羞恥に震えた涙声で、霊夢の行為に抗議する。
霊夢は黒くなっている部分をじっと見つめて、くんくんと匂いをかいでから、魔理沙に微笑みかける。
「この様子だと、この箒が相手になるのはさっきのが初めてってわけでもなさそうねえ」
「……!!!」
「あら図星みたい」
真っ赤になって俯く魔理沙を横目に、霊夢は――箒のそこを、ぺろりと舐めた。
見せ付けるように、何度も、わざと舌をいやらしく動かして。
「……! っ……」
魔理沙の体がまたびくん、と跳ねる。
体には直接は何もされていないのに、まるで霊夢の舌が魔理沙の体を蹂躙しているような、錯覚。
「んむ……ちゅ……ふふ、魔理沙の味……」
「れ……霊夢……」
「いやらしい匂い……味……じゅる……」
「霊夢……! お、お願い……このまま放っておかれたら、私……」
「ん? ちゅぷ……ん、お願いがあるなら……ん……ふ……ちゃんと言わないとわからないわよ?」
執拗に舌で箒を犯しながら、霊夢は魔理沙を片目で見やる。
「……して」
「……」
「……お……犯して。めちゃくちゃにして! アソコに早く……突っ込んでぐちゃぐちゃにして……!」
「うわ、変態」
「……っ」
思い切った告白にも一言で返されて、絶望的な表情を浮かべる魔理沙。
霊夢は、しかし、にこりと微笑む。
「なんてね。冗談よ。よく言えたわね」
箒を顔から放して、手に持って、魔理沙に一歩ずつ近づいて。
ぽん、と肩を叩いて。
ぱっと喜びに顔を輝かせる魔理沙に、霊夢は言い放った。
「でも駄目。してあげない」
「……! そ、そんな……」
「罰ゲームはまだ終わりじゃないもの。魔理沙の言うこと聞いてたら罰にならないでしょ」
一度持ち上げられた気持ちを再び突き落とされて、魔理沙はまた泣きそうな顔で目を伏せる。
――罰ゲーム。
いつものように魔理沙が霊夢に挑戦しにいっただけだった。本当は。
霊夢は何を思ったか前回に限って、いつもだらだら戦い続けるだけじゃ面白くないでしょ、と一度魔理沙の誘いを断ったのだ。そして、負けたほうが次の戦いのときちょっとしたハンデを背負って戦うことにする、という提案を出した。過去霊夢が負けたことはない以上、実質的に魔理沙に不利なだけの提案だったが、そのまま帰るのもつまらないと、承諾してしまったのだ。
そして、今日に至る。
「今日はそのまま帰ってもらうわ。まだ終わりじゃないからね。明日の朝になるまで絶対何もしちゃ駄目。自分で触るのも禁止、誰かにしてもらうのも禁止。いいわね」
「……そん……な……無理……」
「心配しなくていいわ。日付が変わる頃には効果切れるから。あとたった8時間ほどよ」
にっこり。
まるで天使のような無垢な笑顔で。しかし悪魔の宣告のような言葉。
はぁ……はぁ……
荒く息を吐きながら、時間がたつごとに収まるどころかますます燃え上がっていく肉欲をなんとか抑えようと力を込める。そんな魔理沙に、霊夢は箒を握らせる。
「じゃあね。帰っていいわよ」
「……」
その言葉に、間違いなく霊夢が本気だと悟る。
くるりと背を向けて本当に歩き出す霊夢の背中を見つめながら、顔をゆがめて、泣いた。
to be continued....~
【ごあいさつ】
よし! 書きながらここまでで3回ヌいt(スキマ
どうも、はじめまして。
何かのオーラに誘われてやってまいりました。というか割とずっと昔からROMでした。
「サラシプレイ・伝染るんです」の大ファンです。10回は使いましたとも! そしてこれからもお世話になります。
村人。@マリアリ推進委員会というものでございます。
なんというかアレですね。純愛ですね。
次回はマリアリです。きっと。少し嘘。
これからちょくちょくお邪魔したいなあと思います。よろしくね。