とうほうネチョロダ/銀のナイフ
をテンプレートにして作成
[
トップ
] [
新規
|
一覧
|
単語検索
|
最終更新
|
ヘルプ
]
開始行:
注意 18禁です。~
でもエロくないです。~
要流血耐性。~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
「おはよう、咲夜」~
「ひ…きゃんきゃん!」~
~
鎖の許す限界まで、咲夜は逃げた。~
その目はまさに怯えた子犬の目そのもの。~
~
「もういいのよ、終わったわ」~
「わんわん! わんわんわん!!」~
~
首輪を繋いでいた杭が引っこ抜け、咲夜は四本足で走って行...
~
「あっ、ちょっと咲夜…」~
~
自室へ入った咲夜を追いかけて、扉を空ける。~
部屋の隅で震えている咲夜がいた。~
~
「ねぇ、咲夜ってば」~
「わんわんわんわんわんわん!!」~
~
私に向かって、懸命に吼える咲夜。~
まるで、近づくなと言ってるみたいに…~
~
「どうしたの?」~
「うっ…」~
~
もう少し近付いたその時、咲夜は思いもかけない行動を取っ...
~
~
~
「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」~
~
~
~
泣いた。~
咲夜が。~
小さな子供のように。~
~
泣き止まない咲夜を前に途方に暮れていると、いきなり襟首...
入れ替わりに、美鈴が入って行くのが見えた。~
~
「レミィ」~
~
私を引っ張った手はパチェだった。~
一度も見せた事が無い、怖い顔をしている。~
~
「咲夜の事が大切なら、しばらく彼女には近寄らないで」~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
目を覚ましたのは、とんでもない時間だった。~
~
着替えて外に出たら、美鈴に部屋に戻されて、服装を正され...
~
お腹が減ったので配給のお弁当を貰ったが、二口で食べるの...
~
喉が乾いたが、紅茶の淹れ方が分からなかった。~
~
仕方なくパックの血を飲んだ。~
~
~
~
~
~
~
そんな日が二、三日続いた後、私の番が来た。~
歓声の中、最萌トーナメントの舞台に立つ。~
舞台の上には、私の対戦相手である冥界の姫。~
その傍らには、彼女に付き従う二刀の剣士。~
~
そして私の傍には……………誰も居なかった。~
~
~
~
~
~
結果は負け。僅差だったらしい。~
だけど、そんな事も、負けたこと自体も、何もかも、どうで...
~
~
~
~
____________________________...
~
~
~
~
~
呼び出しがかかるまで、裏最萌の事もすっかり忘れていた。~
仕方が無い。覚悟を決めて、西行寺の姫の部屋へと向かう。~
~
~
~
~
~
「いらっしゃい」~
「…さっさと用件を済ませて貰えるかしら」~
「あら、そう。ならとりあえず服を脱いで」~
~
そら来た。~
時間をかけず、さっさと服を脱ぎ去ってしまう。~
~
「それじゃ、しばらく目を閉じてて」~
~
言われた通り、目を閉じて待つ。~
特に何も起こる風は無い。一体何をさせたいのだろうか。~
~
しばらく待っていると、戸の開く音に次いで、足音がした。~
足音は私の前まで来て止まった。~
~
「もういいわよ、目を開けても」~
~
~
目を開いた私の前に飛び込んで来たのは……~
~
あまりにも意外で、あまりにも見慣れた顔。~
~
~
~
「咲……夜…?」~
~
~
~
何故?~
疑問符がいくつも走るが、ともかくそこには咲夜が居た。~
ただ、その顔は無表情で、少し怒っているようにも見え……~
~
びしゃ。~
~
咲夜の顔が、服が、赤く染まった。~
~
それからまず、胸に激しい痛みを感じて、~
胸に刺さった銀のナイフが目に入り、~
それが咲夜の手に握られているのを確認し、~
腕をたどってもう一度咲夜の顔を見て、~
やっと、それが自分の血だと認識した。~
~
~
声も出なかった。~
事態を認識したものの理解できないまま、第二撃が振り下ろ...
~
~
「がっ……!!」~
~
考えるのを止めて、再生に全力を傾ける。~
銀で負った傷を治すのは結構な労力だ。~
だけど、その間も咲夜の手は止まらなかった。~
~
ぐさっ、ぐさっ、ぐさっ…~
「あっ!! ぐっ!! ぎっ!!」~
~
痛い。~
痛い。~
痛い。~
どうして。~
どうして。~
~
「どうして…」~
~
一旦、咲夜の手が止まった。~
今まで黙っていた、亡霊の姫が口を開く。~
~
「どうして?~
心当たりが無いとでも言いたいの?~
貴方が彼女に何をしたのか、覚えてないとでも言うのかしら...
「そ、それは…」~
~
ざくっ。~
「!!!!!」~
~
「彼女に声をかけてみたの」~
「え…」~
「私は勝った。24時間、彼女を好きにできる。この機会に復...
「そ、そんな…」~
~
どすっ。~
「ぎぃ!!」~
~
咲夜の手が、また動き出した。~
~
~
~
~
____________________________...
~
~
~
~
~
最初に出会った時は、闘いだった。~
~
「貴方、面白いわ」~
~
破れた彼女を自分のメイドにした。~
~
「何時でもかかってらっしゃい」~
~
紅魔館では禁じている銀の刃物を、彼女にだけは持つ事を許...
挑発の意味を込めて。~
久し振りに味わう刺激に、私は大いに喜んでいた。~
~
…けれど。~
~
それ以降、その刃先が自分に向けられる事は一度も無かった。~
彼女は私のメイドになり、~
友人になり、~
家族になり、~
そして、いつしか恋人になった。~
~
それと一緒に、銀のナイフの持つ意味も変わっていった。~
私はもう、彼女を全く警戒していない。~
今の彼女であれば、私の寝首を掻くことも容易だろう。~
~
~
~
けれど、彼女がその刃を私に向ける事はもう絶対に無い……は...
~
~
~
~
~
____________________________...
~
~
~
~
~
~
傷を再生するのを、やめた。~
~
~
ようやく気付いた。~
非道い目にあわせたから、咲夜は私に刃を向けたのでは無い...
私が咲夜を信頼していたように、咲夜も私を信頼していたの...
私が咲夜の信頼を裏切ったから、咲夜はその信頼の証を私に...
~
咲夜になら、殺されても良かった。~
むしろそうなるべきだと思った。~
~
「…分かってない」~
突然、亡霊の姫が口を開いた。~
同時に、咲夜の手が止まる。~
~
「本当に、分かってないのね、貴方」~
「…な…にが」~
「本気で、彼女が貴方に復讐するなんて思ってるの?」~
「…え?」~
~
亡霊の姫は溜め息を一つつくと、やや語気を荒げて話し出し...
~
「私が彼女をそそのかした時、彼女はなんて答えたと思う?~
『私はお嬢様を愛している。私はお嬢様を信じている。そん...
って言われて、追い返されたわ」~
~
「…!」~
「だから、ちょっと身体を乗っ取らせて貰ったのよ」~
~
~
信じられなかった。~
私は咲夜を裏切ったのに、咲夜はまだ私を信じてくれている...
胸が痺れるように熱くなる。~
嬉しくて、涙が出てきた。~
~
「ようやく分かったみたいね」~
~
私は頷いた。~
咲夜を裏切った挙句、目に見える物に騙され、咲夜の心を理...
同時に、咲夜に会いたいと思った。~
声が聞きたかった。自分の不実を詫びたかった。~
~
~
「お願い…」~
「何?」~
「咲夜に、身体を返して…」~
「いいわよ」~
~
彼女の笑みが不自然な事に、私は気が付かなかった。~
~
~
~
~
~
咲夜の目に、はっきりとした光が戻る。~
それから、自分の手を見て、~
服を見て、~
周りを見て、~
私を見て…~
~
「あ…あ…」~
~
咲夜の顔が歪んだ。~
…!~
~
「うわああぁぁぁぁああああぁあああ!!!!!!!」~
~
しまった。~
咲夜は叫びながら床へ崩れ落ちる。~
~
「咲夜っ!」~
「ーーーーーーー~~~~~!!!!!!」~
頭を壁に打ちつけ、奇声を発する咲夜に、私の声は届かない。~
そのまま咲夜は、血に塗れたナイフを自分の首に当て…~
~
「待って、咲……」~
~
~
真っ赤な血の海。~
~
~
目の前に広がった光景を、私は信じられなかった。~
否、信じたくなかった。~
認めれば、それで全てが終わってしまう気がした。~
咲夜が。~
咲夜が。~
咲夜が咲夜が咲夜が咲夜が咲夜が!!!~
~
くすくす…~
亡霊の姫が笑っている。~
「こうなる事ぐらい予想できなかったのかしら?」~
~
きっ、と彼女を睨みつけた。~
胸の中で暴れ回る、処理できない感情を、まとめて彼女へ向...
~
「よくも…よくも咲夜を!!」~
「あら、まるで私が彼女を殺したみたいな言い草ね」~
「…普段の彼女なら、自刃するよりは私に刃を向けたんじゃない...
「うるさいっ! 咲夜を、咲夜を返して!!」~
「彼女の心を弱らせたのは、貴方」~
「ぐ…」~
「彼女自身に刃を向けさせたのは、貴方」~
「…それ以上言うなっ!!」~
「彼女を殺したのは……貴方よ」~
「違う! 違う!! 違う!!!」~
~
~
「何とでも言いなさい。どの道、もう彼女は貴方の元へは帰っ...
「…!!」~
~
~
駄目だ。~
耐えられない。~
心がみしみしと悲鳴を上げるのが分かる。~
涙を止められない。~
壊れてしまう。~
助けて。~
助けて…咲夜…~
~
~
~
~
~
____________________________...
~
~
~
~
~
~
「お嬢様?」~
~
私の心がまさに砕けようとした時、聞き慣れた声が耳に入っ...
~
振り向けばそこには、確かに、目の前で、死んだはずの咲夜...
「え…?」~
「…ふふ、面白い見世物だったでしょ?」~
~
咲夜の姿はすぅっと薄くなると、何時の間にか人魂の姿にな...
よく分からないけど、私はまた騙されていたらしい。~
でも、そんな事より。~
~
「咲夜は…無事なのね?」~
「言ったでしょ? 私は追い返されたのよ」~
~
身体中から力が抜けた。~
咲夜が生きている。~
咲夜がまた、私の傍に戻ってきてくれる。~
それだけでもう、何も要らなかった。~
~
「さっさと彼女の所へ帰ってあげなさい。それが最後の命令よ」~
~
私は服を着ると、ろくに整えもせずに部屋を飛び出した。~
~
~
~
____________________________...
~
~
~
~
「ねぇ妖夢、貴方が私のお気に入りの着物を破いてしまった時...
「はい」~
「私は怒りに任せて、ひたすら貴方を打ち据えたわ」~
「はい」~
「それで、目を覚ましてみたら、貴方の姿はどこにも無かった」~
「…もう、お傍には置いてもらえないと思いました」~
「あの時の私は、きっとあの悪魔みたいな目をしてたのね」~
「…そして、あのメイドが私と同じだと?」~
「森で倒れていた貴方を見付けた時、貴方は何と言ったか覚え...
「もう一度、お傍に置いてください、と」~
「私が馬鹿だったわ。~
妖夢が居なくなったら、一番悲しむのは私なのに。~
私が居なくなったら、一番悲しむのは妖夢なのに。~
それなのに、私は、貴方の事なんて考えもせずに…」~
「…幽々子様、もうその話は止めましょう~
私はこれからもずっと、幽々子様のお傍に居ます」~
~
~
「ねぇ妖夢」~
「はい」~
「今夜は一緒に寝て欲しいな」~
「…どこへでもお供します」~
~
~
~
~
____________________________...
~
~
~
~
~
「咲夜っ!」~
~
私はノックもせず、咲夜の部屋の扉を開けた。~
返事は無い。~
~
「咲夜、咲夜っ!?」~
~
何度も呼ぶが、反応は無い。~
先程の悪夢の光景が浮び、背筋が寒くなる。~
もう咲夜は、二度と私の前に現れないのではないか。~
~
違う。~
違う。~
そんな事があるものか。~
でも、咲夜は何処に…あ…!~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
「お帰りなさいませ、お嬢様」~
~
やっぱり。~
咲夜は私の部屋に居た。~
いつもと変わらぬ姿で。~
いつもと変わらぬ笑顔で。~
~
「咲夜…その…」~
「私はもう大丈夫です。お嬢様」~
~
涙で前が見えない。~
私は目を閉じて、思いきり咲夜の胸へと飛び込んで行った。~
~
~
~
~
おしまい~
~
____________________________...
~
~
あとがき~
~
最後まで読んでくれた人、ほんとにごめんねごめんね。~
本文読まずにあとがきだけ読んでる人、萌えさいたまを考え...
~
裏最萌全盛期の頃から考えてた話です。~
死を弄ぶ幽々子様の事、当時はこれぐらいやってくれそうな...
永夜抄のあれは何ですか。馬鹿(失礼)ですか? 白痴(失...
従者に「うるさい」とか言われてるし…~
なけなしのカリスマもどこかへ飛んで行った幽々子様に乾杯...
~
次はえろえろよー!なのを書けるようにがんばります。~
~
書いた人:達磨源氏
終了行:
注意 18禁です。~
でもエロくないです。~
要流血耐性。~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
「おはよう、咲夜」~
「ひ…きゃんきゃん!」~
~
鎖の許す限界まで、咲夜は逃げた。~
その目はまさに怯えた子犬の目そのもの。~
~
「もういいのよ、終わったわ」~
「わんわん! わんわんわん!!」~
~
首輪を繋いでいた杭が引っこ抜け、咲夜は四本足で走って行...
~
「あっ、ちょっと咲夜…」~
~
自室へ入った咲夜を追いかけて、扉を空ける。~
部屋の隅で震えている咲夜がいた。~
~
「ねぇ、咲夜ってば」~
「わんわんわんわんわんわん!!」~
~
私に向かって、懸命に吼える咲夜。~
まるで、近づくなと言ってるみたいに…~
~
「どうしたの?」~
「うっ…」~
~
もう少し近付いたその時、咲夜は思いもかけない行動を取っ...
~
~
~
「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」~
~
~
~
泣いた。~
咲夜が。~
小さな子供のように。~
~
泣き止まない咲夜を前に途方に暮れていると、いきなり襟首...
入れ替わりに、美鈴が入って行くのが見えた。~
~
「レミィ」~
~
私を引っ張った手はパチェだった。~
一度も見せた事が無い、怖い顔をしている。~
~
「咲夜の事が大切なら、しばらく彼女には近寄らないで」~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
目を覚ましたのは、とんでもない時間だった。~
~
着替えて外に出たら、美鈴に部屋に戻されて、服装を正され...
~
お腹が減ったので配給のお弁当を貰ったが、二口で食べるの...
~
喉が乾いたが、紅茶の淹れ方が分からなかった。~
~
仕方なくパックの血を飲んだ。~
~
~
~
~
~
~
そんな日が二、三日続いた後、私の番が来た。~
歓声の中、最萌トーナメントの舞台に立つ。~
舞台の上には、私の対戦相手である冥界の姫。~
その傍らには、彼女に付き従う二刀の剣士。~
~
そして私の傍には……………誰も居なかった。~
~
~
~
~
~
結果は負け。僅差だったらしい。~
だけど、そんな事も、負けたこと自体も、何もかも、どうで...
~
~
~
~
____________________________...
~
~
~
~
~
呼び出しがかかるまで、裏最萌の事もすっかり忘れていた。~
仕方が無い。覚悟を決めて、西行寺の姫の部屋へと向かう。~
~
~
~
~
~
「いらっしゃい」~
「…さっさと用件を済ませて貰えるかしら」~
「あら、そう。ならとりあえず服を脱いで」~
~
そら来た。~
時間をかけず、さっさと服を脱ぎ去ってしまう。~
~
「それじゃ、しばらく目を閉じてて」~
~
言われた通り、目を閉じて待つ。~
特に何も起こる風は無い。一体何をさせたいのだろうか。~
~
しばらく待っていると、戸の開く音に次いで、足音がした。~
足音は私の前まで来て止まった。~
~
「もういいわよ、目を開けても」~
~
~
目を開いた私の前に飛び込んで来たのは……~
~
あまりにも意外で、あまりにも見慣れた顔。~
~
~
~
「咲……夜…?」~
~
~
~
何故?~
疑問符がいくつも走るが、ともかくそこには咲夜が居た。~
ただ、その顔は無表情で、少し怒っているようにも見え……~
~
びしゃ。~
~
咲夜の顔が、服が、赤く染まった。~
~
それからまず、胸に激しい痛みを感じて、~
胸に刺さった銀のナイフが目に入り、~
それが咲夜の手に握られているのを確認し、~
腕をたどってもう一度咲夜の顔を見て、~
やっと、それが自分の血だと認識した。~
~
~
声も出なかった。~
事態を認識したものの理解できないまま、第二撃が振り下ろ...
~
~
「がっ……!!」~
~
考えるのを止めて、再生に全力を傾ける。~
銀で負った傷を治すのは結構な労力だ。~
だけど、その間も咲夜の手は止まらなかった。~
~
ぐさっ、ぐさっ、ぐさっ…~
「あっ!! ぐっ!! ぎっ!!」~
~
痛い。~
痛い。~
痛い。~
どうして。~
どうして。~
~
「どうして…」~
~
一旦、咲夜の手が止まった。~
今まで黙っていた、亡霊の姫が口を開く。~
~
「どうして?~
心当たりが無いとでも言いたいの?~
貴方が彼女に何をしたのか、覚えてないとでも言うのかしら...
「そ、それは…」~
~
ざくっ。~
「!!!!!」~
~
「彼女に声をかけてみたの」~
「え…」~
「私は勝った。24時間、彼女を好きにできる。この機会に復...
「そ、そんな…」~
~
どすっ。~
「ぎぃ!!」~
~
咲夜の手が、また動き出した。~
~
~
~
~
____________________________...
~
~
~
~
~
最初に出会った時は、闘いだった。~
~
「貴方、面白いわ」~
~
破れた彼女を自分のメイドにした。~
~
「何時でもかかってらっしゃい」~
~
紅魔館では禁じている銀の刃物を、彼女にだけは持つ事を許...
挑発の意味を込めて。~
久し振りに味わう刺激に、私は大いに喜んでいた。~
~
…けれど。~
~
それ以降、その刃先が自分に向けられる事は一度も無かった。~
彼女は私のメイドになり、~
友人になり、~
家族になり、~
そして、いつしか恋人になった。~
~
それと一緒に、銀のナイフの持つ意味も変わっていった。~
私はもう、彼女を全く警戒していない。~
今の彼女であれば、私の寝首を掻くことも容易だろう。~
~
~
~
けれど、彼女がその刃を私に向ける事はもう絶対に無い……は...
~
~
~
~
~
____________________________...
~
~
~
~
~
~
傷を再生するのを、やめた。~
~
~
ようやく気付いた。~
非道い目にあわせたから、咲夜は私に刃を向けたのでは無い...
私が咲夜を信頼していたように、咲夜も私を信頼していたの...
私が咲夜の信頼を裏切ったから、咲夜はその信頼の証を私に...
~
咲夜になら、殺されても良かった。~
むしろそうなるべきだと思った。~
~
「…分かってない」~
突然、亡霊の姫が口を開いた。~
同時に、咲夜の手が止まる。~
~
「本当に、分かってないのね、貴方」~
「…な…にが」~
「本気で、彼女が貴方に復讐するなんて思ってるの?」~
「…え?」~
~
亡霊の姫は溜め息を一つつくと、やや語気を荒げて話し出し...
~
「私が彼女をそそのかした時、彼女はなんて答えたと思う?~
『私はお嬢様を愛している。私はお嬢様を信じている。そん...
って言われて、追い返されたわ」~
~
「…!」~
「だから、ちょっと身体を乗っ取らせて貰ったのよ」~
~
~
信じられなかった。~
私は咲夜を裏切ったのに、咲夜はまだ私を信じてくれている...
胸が痺れるように熱くなる。~
嬉しくて、涙が出てきた。~
~
「ようやく分かったみたいね」~
~
私は頷いた。~
咲夜を裏切った挙句、目に見える物に騙され、咲夜の心を理...
同時に、咲夜に会いたいと思った。~
声が聞きたかった。自分の不実を詫びたかった。~
~
~
「お願い…」~
「何?」~
「咲夜に、身体を返して…」~
「いいわよ」~
~
彼女の笑みが不自然な事に、私は気が付かなかった。~
~
~
~
~
~
咲夜の目に、はっきりとした光が戻る。~
それから、自分の手を見て、~
服を見て、~
周りを見て、~
私を見て…~
~
「あ…あ…」~
~
咲夜の顔が歪んだ。~
…!~
~
「うわああぁぁぁぁああああぁあああ!!!!!!!」~
~
しまった。~
咲夜は叫びながら床へ崩れ落ちる。~
~
「咲夜っ!」~
「ーーーーーーー~~~~~!!!!!!」~
頭を壁に打ちつけ、奇声を発する咲夜に、私の声は届かない。~
そのまま咲夜は、血に塗れたナイフを自分の首に当て…~
~
「待って、咲……」~
~
~
真っ赤な血の海。~
~
~
目の前に広がった光景を、私は信じられなかった。~
否、信じたくなかった。~
認めれば、それで全てが終わってしまう気がした。~
咲夜が。~
咲夜が。~
咲夜が咲夜が咲夜が咲夜が咲夜が!!!~
~
くすくす…~
亡霊の姫が笑っている。~
「こうなる事ぐらい予想できなかったのかしら?」~
~
きっ、と彼女を睨みつけた。~
胸の中で暴れ回る、処理できない感情を、まとめて彼女へ向...
~
「よくも…よくも咲夜を!!」~
「あら、まるで私が彼女を殺したみたいな言い草ね」~
「…普段の彼女なら、自刃するよりは私に刃を向けたんじゃない...
「うるさいっ! 咲夜を、咲夜を返して!!」~
「彼女の心を弱らせたのは、貴方」~
「ぐ…」~
「彼女自身に刃を向けさせたのは、貴方」~
「…それ以上言うなっ!!」~
「彼女を殺したのは……貴方よ」~
「違う! 違う!! 違う!!!」~
~
~
「何とでも言いなさい。どの道、もう彼女は貴方の元へは帰っ...
「…!!」~
~
~
駄目だ。~
耐えられない。~
心がみしみしと悲鳴を上げるのが分かる。~
涙を止められない。~
壊れてしまう。~
助けて。~
助けて…咲夜…~
~
~
~
~
~
____________________________...
~
~
~
~
~
~
「お嬢様?」~
~
私の心がまさに砕けようとした時、聞き慣れた声が耳に入っ...
~
振り向けばそこには、確かに、目の前で、死んだはずの咲夜...
「え…?」~
「…ふふ、面白い見世物だったでしょ?」~
~
咲夜の姿はすぅっと薄くなると、何時の間にか人魂の姿にな...
よく分からないけど、私はまた騙されていたらしい。~
でも、そんな事より。~
~
「咲夜は…無事なのね?」~
「言ったでしょ? 私は追い返されたのよ」~
~
身体中から力が抜けた。~
咲夜が生きている。~
咲夜がまた、私の傍に戻ってきてくれる。~
それだけでもう、何も要らなかった。~
~
「さっさと彼女の所へ帰ってあげなさい。それが最後の命令よ」~
~
私は服を着ると、ろくに整えもせずに部屋を飛び出した。~
~
~
~
____________________________...
~
~
~
~
「ねぇ妖夢、貴方が私のお気に入りの着物を破いてしまった時...
「はい」~
「私は怒りに任せて、ひたすら貴方を打ち据えたわ」~
「はい」~
「それで、目を覚ましてみたら、貴方の姿はどこにも無かった」~
「…もう、お傍には置いてもらえないと思いました」~
「あの時の私は、きっとあの悪魔みたいな目をしてたのね」~
「…そして、あのメイドが私と同じだと?」~
「森で倒れていた貴方を見付けた時、貴方は何と言ったか覚え...
「もう一度、お傍に置いてください、と」~
「私が馬鹿だったわ。~
妖夢が居なくなったら、一番悲しむのは私なのに。~
私が居なくなったら、一番悲しむのは妖夢なのに。~
それなのに、私は、貴方の事なんて考えもせずに…」~
「…幽々子様、もうその話は止めましょう~
私はこれからもずっと、幽々子様のお傍に居ます」~
~
~
「ねぇ妖夢」~
「はい」~
「今夜は一緒に寝て欲しいな」~
「…どこへでもお供します」~
~
~
~
~
____________________________...
~
~
~
~
~
「咲夜っ!」~
~
私はノックもせず、咲夜の部屋の扉を開けた。~
返事は無い。~
~
「咲夜、咲夜っ!?」~
~
何度も呼ぶが、反応は無い。~
先程の悪夢の光景が浮び、背筋が寒くなる。~
もう咲夜は、二度と私の前に現れないのではないか。~
~
違う。~
違う。~
そんな事があるものか。~
でも、咲夜は何処に…あ…!~
~
~
~
~
~
~
~
~
~
「お帰りなさいませ、お嬢様」~
~
やっぱり。~
咲夜は私の部屋に居た。~
いつもと変わらぬ姿で。~
いつもと変わらぬ笑顔で。~
~
「咲夜…その…」~
「私はもう大丈夫です。お嬢様」~
~
涙で前が見えない。~
私は目を閉じて、思いきり咲夜の胸へと飛び込んで行った。~
~
~
~
~
おしまい~
~
____________________________...
~
~
あとがき~
~
最後まで読んでくれた人、ほんとにごめんねごめんね。~
本文読まずにあとがきだけ読んでる人、萌えさいたまを考え...
~
裏最萌全盛期の頃から考えてた話です。~
死を弄ぶ幽々子様の事、当時はこれぐらいやってくれそうな...
永夜抄のあれは何ですか。馬鹿(失礼)ですか? 白痴(失...
従者に「うるさい」とか言われてるし…~
なけなしのカリスマもどこかへ飛んで行った幽々子様に乾杯...
~
次はえろえろよー!なのを書けるようにがんばります。~
~
書いた人:達磨源氏
ページ名: