とうほうネチョロダ/東方四季想話/第7話
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~
「紅魔館のメイド長が、私に何の用?」~
「……頼みがあるの」~
「それは当主の依頼? それともあなた自身の?」~
「両方…いいえ、これは紅魔館の総意よ」~
「そう…分かったわ。それで、どんな頼み?」~
「春を、少し分けて欲しいの」~
「…春を? でも前みたいに、強引に集めたりはしてないけど?...
「前に、使われずじまいの春があるんじゃない?」~
「まあね」~
「それを分けて欲しいの。桜一本咲かせるくらいのでいいから」~
「何か、理由がありそうね…」~
「………………ええ」~
「…聞かせて頂戴?」~
~
~
~
幻想郷の冬も厳しさは峠を越し、徐々にではあるが寒さも緩...
「………出来た」~
魔理沙は、目の前にある紙の束を見つめた。霊夢の為に残す...
「良かった……」~
本当に安心した。自分の命が尽きる前に終わらせる事が出来...
「ふう………っ! げほっ! げほっ!!」~
途端、悲鳴を上げる体。やはり長い間のこの作業は、魔理沙...
「くっ……! はあっ………!!」~
全身を駆け巡る痛み。耐えきれず、畳に倒れ込む。~
「ごほっ………」~
寒い。熱が、体温が、奪われていく。~
「魔理沙ー。ご飯出来た―――」~
ガシャンッ!! 食器の、落ちる音。~
「魔理沙っっ!!!」~
お盆を投げ出して、霊夢が魔理沙に駆け寄る。~
「魔理沙……!! しっかりして……!!」~
「霊、夢―――寒、い―――」~
「魔理沙……!」~
ぎゅっ………!~
「私が、私が、温めてあげる……! だから、頑張って……!!」~
「あ……ああ………霊夢……ありがとう………」~
「魔理沙………魔理沙………」~
「霊夢……お前の体………温かいよ………」~
~
霊夢の熱が服を伝わり、魔理沙の体に伝わる。この暖かさを...
~
~
「霊夢……これが私のアイテム図鑑だ」~
体調が落ち着いた次の日、魔理沙は霊夢にアイテム図鑑を渡...
「これが……? 魔理沙、凄い……」~
「どうだ…? 少しは役に立つと思うけど……」~
「ううん…大切にする……。魔理沙、ありがとう……」~
大事そうに、胸に抱える。~
「そうか、良かった……。これで私も、安心して―――」~
言葉は、続かない。霊夢の唇で、塞がれたから。~
「………言わないで………」~
「―――霊夢。……すまん」~
「魔理沙……生きようよ…。辛いかもしれないけど、諦めちゃ、駄...
「ああ……」~
~
ここで、終わりじゃない。いつだって、どこだって、新しい...
~
~
~
例えば、霊夢との生活。~
~
~
~
寒いの厳しい日は、部屋で過ごす。~
「ねえ魔理沙。このアイテムって、マズいんじゃないの?」~
「ん? ああ、これか。これはな、このアイテムと一緒に置い...
「変なの」~
「書き足しておくぜ」~
~
~
~
寒さの緩んだ日は、縁側で、日向ぼっこ。~
「おい霊夢、起きろって」~
「くー………」~
「そろそろ、昼飯時なんだが」~
「くー………」~
「………全く、しょうがないな………」~
~
~
~
夜は、互いの温もりを感じながら、眠りにつく。~
「魔理沙……寒くない?」~
「霊夢がいるから、平気だ」~
「……良かった」~
「こら、布団に潜るな」~
「………ふふ」~
~
~
互いを想いながら、毎日を過ごす。~
なんて平凡で、幸せな日々。~
~
~
~
~
しかし―――~
~
~
~
「魔理沙………具合は、どう…?」~
「ああ………」~
ある日、魔理沙が高熱を出した。今までで、一番酷いものだ...
「ちょっと待っててね……替えのタオル、持ってくるから……」~
部屋を出る霊夢。嫌な予感が止まらない。払っても払っても...
「……魔理沙……」~
涙も、止まらない。駄目。こんな顔、魔理沙に見せられない...
~
「ふう………っ…」~
朦朧とする意識の中、魔理沙は何かと戦っていた。自分をど...
「まだだ…まだ、駄目なんだよ………!」~
必死に、抗う。~
「霊夢に……渡さなきゃ、ならないんだよ………!!」~
魔理沙の戦いは、深夜まで続いた。~
~
~
「……理沙………魔………魔理沙……」~
誰かが呼ぶ声。この声は―――~
「……霊………夢………?」~
目の前に、よく知る巫女の顔。どうやら、いつの間にか眠っ...
「良かった…! 起きてくれた……!」~
目元を拭いながら、微笑む霊夢。随分と、心配をかけたらし...
「朝だからな……起きなきゃな……」~
「うん……そうだね……」~
そう言って、魔理沙の手を握る。霊夢の手は、どこまでも温...
~
魔理沙の熱は、朝になってあっさりと引いた。理由は分から...
~
~
「なあ、霊夢……」~
「なあに?」~
「たまには、外を歩きたいんだが……」~
その日の昼過ぎ、魔理沙がそんな事を言い出した。~
「えっ……大丈夫なの………?」~
「体を動かさないと、腐っちまいそうだ」~
思案する、霊夢。魔理沙の体調を考えると止めたくなるが、...
「…分かったわ。でも……無理はしないでね……?」~
「ああ」~
~
そして今日は、境内を散歩する事にした。寝巻では寒いと思...
~
「久しぶりだぜ、この格好は」~
「やっぱり魔理沙には、その服が似合うわね」~
「そうか?」~
「そうよ。はい、帽子」~
魔理沙のシンボルとも言える服を着込み、部屋を出る。少し...
「…寒くない?」~
「ああ、平気だ」~
魔理沙を肩で支え、ゆっくりと歩き出す。やはり、以前より...
~
~
長い時間をかけて、神社を回る。そして、境内裏まで来た時...
~
「―――え?」~
~
「どうした? 霊夢…」~
「……今、何かの花びらが……これは……」~
足元に落ちた花びらを見る。~
「………桜?」~
「おいおい。いくら何でもこの季節はまだ―――」~
そう言った魔理沙の目にも、確かに桜の花びらに見えた。~
「……どういう事?」~
周りを見回す霊夢。すると―――~
「―――桜が―――」~
咲いていた。神社裏の桜林の奥の方。少し開けた場所にある...
「何、で…?」~
いくら春が近付いたと言っても、まだ寒いこの季節。こんな...
「…行ってみようぜ」~
魔理沙は、そう言った。~
「え、でも……」~
「…花見、しようぜ」~
「………」~
「……いいだろ?」~
「………うん。じゃあ、茣蓙を取りに行かなきゃ……」~
「そうだな」~
悩む事は無かった。魔理沙と一緒に、楽しい事がしたかった...
~
~
「…綺麗」~
「ああ…綺麗…だな…」~
霊夢は茣蓙に正座をし、魔理沙に膝枕をして桜を眺めた。こ...
「でも、そうか……そろそろ…桜の季節なんだな……」~
「まだちょっと早いわよ…?」~
「はは…そうか」~
魔理沙も、心なしか表情が明るい。やっぱり、ここに来てよ...
「そうなると…花見をしながらの宴会か……今年も賑やかなんだろ...
「そうね…」~
「やっぱり…紅魔館の皆を呼ばなきゃな………………あの亡霊達は………...
「ふふ、そうかも」~
「今度は…あのすきま妖怪達も呼んでみるか」~
「……大変そう」~
二人、話が弾む。~
「一人や二人や三人くらい……どうって事無いだろ?」~
「そうだけど………あっ」~
「…どうした?」~
急に、霊夢の言葉が止まった。~
「あのね、魔理沙………」~
「何だ?」~
「実はね、私ね―――」~
~
~
~
その頃、二人の様子を遠くから見つめる人影が二つあった。~
~
~
「…ありがとう。感謝するわ」~
「これくらい、どうって事無いわよ」~
「…そうね。………それで…やっぱり、今日なの………?」~
「………ええ。今日よ」~
「あなたには…どうする事も出来ないの?」~
「無理よ……感じる事は出来るけどね。どうこう出来る訳じゃな...
「………そう」~
「ねえ…」~
「…何?」~
「泣いてるの?」~
「……泣いて……ないわよ……」~
「…そう。それじゃあ、私は帰るわね」~
「じゃあ…私も」~
「いいの?」~
「これ以上ここにいても、辛くなるだけ……」~
「…そう」~
「それじゃあね………」~
「『願わくは 花の下にて 春死なむ その如月の 望月のこ...
「………え?」~
「…何でもないわ。さようなら」~
「……さようなら……」~
~
~
~
「―――本当か? 霊夢…」~
「……うん。たぶん」~
「そうか…良かった……!」~
破顔する魔理沙。これほど嬉しい事は、他に無かった。~
「ありがとう。魔理沙のおかげよ……」~
「そうか……うん…うん………良かった………それじゃあ…私も霊夢に……」~
そう言って、ごそごそとポケットを探る魔理沙。そして取り...
「これは……?」~
「いいから…手、出して…」~
「あ、うん」~
霊夢は言われた通り、右手を差し出す。~
「違う違う…こっちじゃない…こっちだよ………」~
すっ……~
魔理沙は、下がったままの霊夢の左手を上げ、その薬指に、...
~
「――――――あ――――――」~
霊夢の指に嵌められたのは、小さな石が光る、指輪。~
~
「魔理沙―――これ―――」~
「それはな…呪いのアイテムだ…その指輪をつけられた者は…つけ...
「魔理沙………!」~
「その呪いを発動させる条件は………んっ………」~
「………んんっ………」~
その条件は、互いの口付け。~
「ありがとう……魔理沙………!」~
「霊夢………」~
そして、もう一度、口付け。~
~
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~
一生、忘れない。~
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忘れる訳が無い。~
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何があっても、絶対に。~
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―――楽しかった時も、嬉しかった時も、悲しかった時も、やが...
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陽が傾き始める。気温も、徐々に下がってきた。しかし、二...
~
はらはらと舞い落ちる桜の花びら。魔理沙の体に、少しづつ...
~
払おうとはしない。ただ、ゆったりと、見つめる。~
~
「少し、寒くなってきたかしら……?」~
~
「…そう、だな………」~
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「魔理沙………大丈夫………?」~
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「………霊夢がいるから、暖かい………………」~
~
「…そう…良かった……」~
~
魔理沙の言葉が、途切れ途切れになる。~
~
「ねえ………魔理沙………」~
~
「………………」~
~
「もう少ししたら春が来るから………一緒にお花見しようね………」~
~
「………………ああ………………」~
~
「皆で騒ぐのも楽しい………けど………やっぱり、二人っきりでお花...
~
「………………ああ………………」~
~
「春が終わっても………夏が来る………。夏が終わっても………秋が来る...
~
「………………」~
~
「これからの季節………ずうっと………魔理沙と一緒にいたいな………」~
~
「………………」~
~
「魔理沙………私、ずっと、魔理沙と、一緒に―――」~
~
~
すっ………~
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~
霊夢の頬に、魔理沙の手が伸ばされる。霊夢は、それを両手...
~
「………………………………」~
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何かを伝えようと動く、魔理沙の口。しかし、その声は聞こ...
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~
それでも、霊夢の耳には、魔理沙の声がしっかりと届く。~
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ありがとう~
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れいむ~
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あいしてる~
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「うん………………うん………………!!」~
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聞きたかった、言葉。~
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「私も………………!! 魔理沙………………!! 愛してる………愛してるよ...
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伝えたかった、言葉。~
~
「………………………………………………………………!!!!」~
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~
確かに握っていたはずの、魔理沙の手。~
~
~
でも。~
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もうそれは、霊夢の手からすり抜けて。~
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とさり と 地面に 落ちる。~
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「………………………………………………………………!!!!!!」~
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声にならない声。~
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言葉にならない言葉。~
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ありがとう~
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さようなら~
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わたしの あいする ひと~
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「紅魔館のメイド長が、私に何の用?」~
「……頼みがあるの」~
「それは当主の依頼? それともあなた自身の?」~
「両方…いいえ、これは紅魔館の総意よ」~
「そう…分かったわ。それで、どんな頼み?」~
「春を、少し分けて欲しいの」~
「…春を? でも前みたいに、強引に集めたりはしてないけど?...
「前に、使われずじまいの春があるんじゃない?」~
「まあね」~
「それを分けて欲しいの。桜一本咲かせるくらいのでいいから」~
「何か、理由がありそうね…」~
「………………ええ」~
「…聞かせて頂戴?」~
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幻想郷の冬も厳しさは峠を越し、徐々にではあるが寒さも緩...
「………出来た」~
魔理沙は、目の前にある紙の束を見つめた。霊夢の為に残す...
「良かった……」~
本当に安心した。自分の命が尽きる前に終わらせる事が出来...
「ふう………っ! げほっ! げほっ!!」~
途端、悲鳴を上げる体。やはり長い間のこの作業は、魔理沙...
「くっ……! はあっ………!!」~
全身を駆け巡る痛み。耐えきれず、畳に倒れ込む。~
「ごほっ………」~
寒い。熱が、体温が、奪われていく。~
「魔理沙ー。ご飯出来た―――」~
ガシャンッ!! 食器の、落ちる音。~
「魔理沙っっ!!!」~
お盆を投げ出して、霊夢が魔理沙に駆け寄る。~
「魔理沙……!! しっかりして……!!」~
「霊、夢―――寒、い―――」~
「魔理沙……!」~
ぎゅっ………!~
「私が、私が、温めてあげる……! だから、頑張って……!!」~
「あ……ああ………霊夢……ありがとう………」~
「魔理沙………魔理沙………」~
「霊夢……お前の体………温かいよ………」~
~
霊夢の熱が服を伝わり、魔理沙の体に伝わる。この暖かさを...
~
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「霊夢……これが私のアイテム図鑑だ」~
体調が落ち着いた次の日、魔理沙は霊夢にアイテム図鑑を渡...
「これが……? 魔理沙、凄い……」~
「どうだ…? 少しは役に立つと思うけど……」~
「ううん…大切にする……。魔理沙、ありがとう……」~
大事そうに、胸に抱える。~
「そうか、良かった……。これで私も、安心して―――」~
言葉は、続かない。霊夢の唇で、塞がれたから。~
「………言わないで………」~
「―――霊夢。……すまん」~
「魔理沙……生きようよ…。辛いかもしれないけど、諦めちゃ、駄...
「ああ……」~
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ここで、終わりじゃない。いつだって、どこだって、新しい...
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例えば、霊夢との生活。~
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寒いの厳しい日は、部屋で過ごす。~
「ねえ魔理沙。このアイテムって、マズいんじゃないの?」~
「ん? ああ、これか。これはな、このアイテムと一緒に置い...
「変なの」~
「書き足しておくぜ」~
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寒さの緩んだ日は、縁側で、日向ぼっこ。~
「おい霊夢、起きろって」~
「くー………」~
「そろそろ、昼飯時なんだが」~
「くー………」~
「………全く、しょうがないな………」~
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夜は、互いの温もりを感じながら、眠りにつく。~
「魔理沙……寒くない?」~
「霊夢がいるから、平気だ」~
「……良かった」~
「こら、布団に潜るな」~
「………ふふ」~
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互いを想いながら、毎日を過ごす。~
なんて平凡で、幸せな日々。~
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しかし―――~
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「魔理沙………具合は、どう…?」~
「ああ………」~
ある日、魔理沙が高熱を出した。今までで、一番酷いものだ...
「ちょっと待っててね……替えのタオル、持ってくるから……」~
部屋を出る霊夢。嫌な予感が止まらない。払っても払っても...
「……魔理沙……」~
涙も、止まらない。駄目。こんな顔、魔理沙に見せられない...
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「ふう………っ…」~
朦朧とする意識の中、魔理沙は何かと戦っていた。自分をど...
「まだだ…まだ、駄目なんだよ………!」~
必死に、抗う。~
「霊夢に……渡さなきゃ、ならないんだよ………!!」~
魔理沙の戦いは、深夜まで続いた。~
~
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「……理沙………魔………魔理沙……」~
誰かが呼ぶ声。この声は―――~
「……霊………夢………?」~
目の前に、よく知る巫女の顔。どうやら、いつの間にか眠っ...
「良かった…! 起きてくれた……!」~
目元を拭いながら、微笑む霊夢。随分と、心配をかけたらし...
「朝だからな……起きなきゃな……」~
「うん……そうだね……」~
そう言って、魔理沙の手を握る。霊夢の手は、どこまでも温...
~
魔理沙の熱は、朝になってあっさりと引いた。理由は分から...
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「なあ、霊夢……」~
「なあに?」~
「たまには、外を歩きたいんだが……」~
その日の昼過ぎ、魔理沙がそんな事を言い出した。~
「えっ……大丈夫なの………?」~
「体を動かさないと、腐っちまいそうだ」~
思案する、霊夢。魔理沙の体調を考えると止めたくなるが、...
「…分かったわ。でも……無理はしないでね……?」~
「ああ」~
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そして今日は、境内を散歩する事にした。寝巻では寒いと思...
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「久しぶりだぜ、この格好は」~
「やっぱり魔理沙には、その服が似合うわね」~
「そうか?」~
「そうよ。はい、帽子」~
魔理沙のシンボルとも言える服を着込み、部屋を出る。少し...
「…寒くない?」~
「ああ、平気だ」~
魔理沙を肩で支え、ゆっくりと歩き出す。やはり、以前より...
~
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長い時間をかけて、神社を回る。そして、境内裏まで来た時...
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「―――え?」~
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「どうした? 霊夢…」~
「……今、何かの花びらが……これは……」~
足元に落ちた花びらを見る。~
「………桜?」~
「おいおい。いくら何でもこの季節はまだ―――」~
そう言った魔理沙の目にも、確かに桜の花びらに見えた。~
「……どういう事?」~
周りを見回す霊夢。すると―――~
「―――桜が―――」~
咲いていた。神社裏の桜林の奥の方。少し開けた場所にある...
「何、で…?」~
いくら春が近付いたと言っても、まだ寒いこの季節。こんな...
「…行ってみようぜ」~
魔理沙は、そう言った。~
「え、でも……」~
「…花見、しようぜ」~
「………」~
「……いいだろ?」~
「………うん。じゃあ、茣蓙を取りに行かなきゃ……」~
「そうだな」~
悩む事は無かった。魔理沙と一緒に、楽しい事がしたかった...
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「…綺麗」~
「ああ…綺麗…だな…」~
霊夢は茣蓙に正座をし、魔理沙に膝枕をして桜を眺めた。こ...
「でも、そうか……そろそろ…桜の季節なんだな……」~
「まだちょっと早いわよ…?」~
「はは…そうか」~
魔理沙も、心なしか表情が明るい。やっぱり、ここに来てよ...
「そうなると…花見をしながらの宴会か……今年も賑やかなんだろ...
「そうね…」~
「やっぱり…紅魔館の皆を呼ばなきゃな………………あの亡霊達は………...
「ふふ、そうかも」~
「今度は…あのすきま妖怪達も呼んでみるか」~
「……大変そう」~
二人、話が弾む。~
「一人や二人や三人くらい……どうって事無いだろ?」~
「そうだけど………あっ」~
「…どうした?」~
急に、霊夢の言葉が止まった。~
「あのね、魔理沙………」~
「何だ?」~
「実はね、私ね―――」~
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その頃、二人の様子を遠くから見つめる人影が二つあった。~
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「…ありがとう。感謝するわ」~
「これくらい、どうって事無いわよ」~
「…そうね。………それで…やっぱり、今日なの………?」~
「………ええ。今日よ」~
「あなたには…どうする事も出来ないの?」~
「無理よ……感じる事は出来るけどね。どうこう出来る訳じゃな...
「………そう」~
「ねえ…」~
「…何?」~
「泣いてるの?」~
「……泣いて……ないわよ……」~
「…そう。それじゃあ、私は帰るわね」~
「じゃあ…私も」~
「いいの?」~
「これ以上ここにいても、辛くなるだけ……」~
「…そう」~
「それじゃあね………」~
「『願わくは 花の下にて 春死なむ その如月の 望月のこ...
「………え?」~
「…何でもないわ。さようなら」~
「……さようなら……」~
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「―――本当か? 霊夢…」~
「……うん。たぶん」~
「そうか…良かった……!」~
破顔する魔理沙。これほど嬉しい事は、他に無かった。~
「ありがとう。魔理沙のおかげよ……」~
「そうか……うん…うん………良かった………それじゃあ…私も霊夢に……」~
そう言って、ごそごそとポケットを探る魔理沙。そして取り...
「これは……?」~
「いいから…手、出して…」~
「あ、うん」~
霊夢は言われた通り、右手を差し出す。~
「違う違う…こっちじゃない…こっちだよ………」~
すっ……~
魔理沙は、下がったままの霊夢の左手を上げ、その薬指に、...
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「――――――あ――――――」~
霊夢の指に嵌められたのは、小さな石が光る、指輪。~
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「魔理沙―――これ―――」~
「それはな…呪いのアイテムだ…その指輪をつけられた者は…つけ...
「魔理沙………!」~
「その呪いを発動させる条件は………んっ………」~
「………んんっ………」~
その条件は、互いの口付け。~
「ありがとう……魔理沙………!」~
「霊夢………」~
そして、もう一度、口付け。~
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一生、忘れない。~
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忘れる訳が無い。~
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何があっても、絶対に。~
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―――楽しかった時も、嬉しかった時も、悲しかった時も、やが...
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陽が傾き始める。気温も、徐々に下がってきた。しかし、二...
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はらはらと舞い落ちる桜の花びら。魔理沙の体に、少しづつ...
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払おうとはしない。ただ、ゆったりと、見つめる。~
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「少し、寒くなってきたかしら……?」~
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「…そう、だな………」~
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「魔理沙………大丈夫………?」~
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「………霊夢がいるから、暖かい………………」~
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「…そう…良かった……」~
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魔理沙の言葉が、途切れ途切れになる。~
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「ねえ………魔理沙………」~
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「………………」~
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「もう少ししたら春が来るから………一緒にお花見しようね………」~
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「………………ああ………………」~
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「皆で騒ぐのも楽しい………けど………やっぱり、二人っきりでお花...
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「………………ああ………………」~
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「春が終わっても………夏が来る………。夏が終わっても………秋が来る...
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「………………」~
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「これからの季節………ずうっと………魔理沙と一緒にいたいな………」~
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「………………」~
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「魔理沙………私、ずっと、魔理沙と、一緒に―――」~
~
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すっ………~
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霊夢の頬に、魔理沙の手が伸ばされる。霊夢は、それを両手...
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「………………………………」~
~
何かを伝えようと動く、魔理沙の口。しかし、その声は聞こ...
~
~
それでも、霊夢の耳には、魔理沙の声がしっかりと届く。~
~
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ありがとう~
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れいむ~
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あいしてる~
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「うん………………うん………………!!」~
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聞きたかった、言葉。~
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「私も………………!! 魔理沙………………!! 愛してる………愛してるよ...
~
伝えたかった、言葉。~
~
「………………………………………………………………!!!!」~
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~
確かに握っていたはずの、魔理沙の手。~
~
~
でも。~
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もうそれは、霊夢の手からすり抜けて。~
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とさり と 地面に 落ちる。~
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「………………………………………………………………!!!!!!」~
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声にならない声。~
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言葉にならない言葉。~
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ありがとう~
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さようなら~
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わたしの あいする ひと~
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