とうほうネチョロダ/東方四季想話/第6話
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~
冷たい風が身を切る。季節はもう冬。~
~
「うーむ…」~
魔理沙は、悩んでいた。と言っても、自分の体の事ではない。~
「魔理沙…どうしたの?」~
心配そうに魔理沙の顔を見つめる霊夢。~
「あ、いや。大した事じゃないんだが……」~
「何よ…気になるじゃない」~
「ううん……実はな、うちにあるアイテムの事で」~
「魔理沙の家のアイテム……?」~
そう言われた霊夢は、記憶を掘り起こす。確か、魔理沙の家...
「…あれがどうかしたの?」~
「いや、もう私には無用の物だと思ったんでな。どうしようか...
「………魔理沙」~
いつも通りの魔理沙の表情。しかし、時たま言葉の端々に、...
「あ……霊夢、変な事言って悪かったな…」~
「え、ううん、いいのよ。私こそ……」~
「いや………そうだ」~
その時、魔理沙が何か思いついた様だった。~
「え…どうしたの?」~
「見つけたぜ、霊夢。私の、やるべき事」~
~
~
「よいしょっ……と。ねえ、これはここに置いていいの?」~
「ああ、ついでにそこも調べてくれ」~
霊夢の家の裏に召喚された魔理沙の家。霊夢は雑然とした家...
「魔理沙……本当に、大丈夫なの? 私の家に戻って休んだ方が…...
「何言ってんだ。私の家の構造を知ってるのは私だけなんだぜ...
「そうだけど…無理しないでよ?」~
「ああ」~
椅子に座って霊夢に指示を出す魔理沙。ただ今、魔理沙の家...
「ケホッ……魔理沙、ちゃんと掃除してるの?」~
舞う埃に、思わず咳き込む霊夢。~
「もう何ヶ月もこの家には帰ってないからな…」~
「あ…そうだったわね。ごめんなさい」~
「いや、いいんだ。たぶん帰っていても、掃除してない」~
「結局駄目じゃない」~
「ははは」~
~
その後も探索を続けた結果、かなりの数のアイテムを発見す...
「ふう……これで全部かしら?」~
「うーん、たぶん。ありがとうな、霊夢」~
「いいのよ。魔理沙の頼みだもん」~
「はは…そうか」~
少し、照れる。~
「ところで、このアイテム群、どうするつもり?」~
「霊夢に、全部あげる」~
「ええっ!? でも私、使い方なんて、知らないわよ……?」~
「だから、出したんだ」~
霊夢は、頭に疑問符を浮かべる。~
「…何で?」~
「このアイテム達は、私の寝室に置いてくれ。私は覚えている...
「えっ……?」~
「これが今、私が霊夢に出来る精一杯だ……」~
そう言って、魔理沙は椅子から立ち上がる。~
「あっ……! ちょっと、大丈夫……!?」~
「ああ…これくらい、一人で歩けなきゃな……」~
机に手を突きながら、一歩一歩霊夢に近付く。~
「だから、やらせてくれ。私は、霊夢に何かを残したいんだ」~
そして、辿り着く。そのまま霊夢にもたれかかる。霊夢は、...
「魔理沙、ありがとう………でも、無茶はしないでね………」~
「………ああ」~
~
そう。この体が温かい間は、愛する人に、自分の精一杯を―――~
~
~
その日から、魔理沙は卓に向かい書を記し始めた。あまり長...
その作業は容易では無かった。元々魔理沙のアイテムが数が...
そして、一番の問題は魔理沙の体。~
スカーレットの呪いは、悪化する事はあっても快方に向かう...
そんな生活が続いた、ある日。~
~
~
「………こんにちわ」~
「………………うぐっ」~
「霊夢…来ちゃった………」~
博麗神社に、三人の来客。パチュリー、フランドール、そし...
~
「…あなた達、どうして―――」~
「…ごめんなさい、霊夢。レミィ達には隠しておくつもりだった...
ばつが悪そうな表情のパチュリー。どうやら、魔理沙の事が...
「………ふぐっ」~
フランドールは、既にすすり泣いている。一方のレミリアは…~
「こんな所で立ち話も何だし……魔理沙の所へ行きましょ?」~
表情が、読めない。平静を装っているのかどうかも、分から...
「え、ええ……」~
訝りながらも、三人を家へ上がらせる。とにかく、話はそれ...
~
「…お前ら、どうして―――」~
魔理沙の反応も、霊夢を同じだった。特に一番知られたくな...
「うわあああん!! 魔理沙ぁっ……!!」~
魔理沙の顔を見て、すぐにフランドールが飛びついてきた。~
「げふっ。フ、フランドール、痛い……」~
「魔理沙ぁっ……死んじゃ、やだよぉっ……!!」~
魔理沙の胸に顔をうずめて泣く。そんなフランドールを見て...
「フランドール……魔理沙が困ってるわよ…。離れてあげて……」~
そんなフランドールに声をかけたのは、姉、レミリア。~
「うう……姉様……」~
「ほら…もう泣くんじゃない。私は大丈夫だから…」~
そう言って、ハンカチでフランドールの涙を拭く魔理沙。~
「…うう………………うん………」~
フランドールは、とりあえず落ち着いた様だった。~
「それで……どうして来たんだ? レミリア」~
魔理沙が、単刀直入に聞く。この期に及んで、隠す事など何...
「……パチュリーに聞いたからよ」~
パチュリーは頷いた。~
「…私は秘密にしておくつもりだったわ。でも、ここ最近私がよ...
ふう、と溜め息。~
「でも、知らなかったら私は一生後悔するところだった」~
「……何でだ?」~
「…知らない間に、大切な友人を亡くす事になった。…しかも、...
「!!」~
魔理沙の目が驚きに見開かれる。~
「知って、いたのか? 自分の呪いの力の事……」~
「………ええ。全部、パチュリーに聞いたわ」~
「…そうか」~
魔理沙は複雑な気持ちだった。~
~
自分の体をこんな風にした張本人。それが目の前にいる。し...
そう言えば、レミリアに大怪我負わされた時もそうだったっ...
どうして、この少女には憎しみの情が湧いてこないのか。私...
否―――そうだ。~
レミリアは、言ってしまえば『危うい』。~
ボロボロの吊り橋を渡る様に。出来の悪いヤジロベエの様に...
傾いてしまうのだ。どちらにも。正気と狂気の狭間。何らか...
そしてそのきっかけを作るのは、往々にして、他人。~
あの夏の日。レミリアを狂わせたのは、他ならぬ霊夢と私―――~
~
「…自業自得、ってか……?」~
ぽつりと呟く。その言葉に、レミリアが反応する。~
「……!? 何言ってるの!? 違うわよ……!! 悪いのは、私...
「レミリア!?」~
「レミィ!?」~
「姉様!?」~
三人が、レミリアを止めようとする。しかし、止まらない。~
「そうよ!! 私はあなたに嫉妬して、あなたを傷付けて!!...
「―――レミリア!!」~
がばっ!!~
霊夢が、レミリアの体を後ろから抱きとめる。~
「あ…霊、夢―――」~
「レミリア……魔理沙が自業自得って言った理由は、私にも分か...
「え………?」~
「魔理沙は、レミリアを憎んでなんかいない―――そうでしょう?...
霊夢が魔理沙に視線を移す。魔理沙は、微笑む。~
「―――ああ」~
その言葉。レミリアには、何よりの救いだった。~
「………う、うう………………うわあああああああああ……………………!!」~
「…レミリア…」~
~
確かに原因を作ったのは、私達。しかし、きっかけを与えら...
その事が、レミリアを悩ませた。苦しませた。~
~
「魔理沙………!! ごめんなさいっ………ごめんなさいっっ………………...
少し前に、フランドールがそうした様に。魔理沙の胸に顔を...
(―――でも、やっぱり)~
~
そう、それでもやはり。魔理沙はレミリアを憎む事は出来な...
目の前にいるのは、五百年の時を生きた吸血鬼。しかし、今...
~
「霊夢……レミリアも、辛かったんだ……」~
「…ええ…」~
「だから……もう……いいんだ……レミリア………」~
「………ううっ………うぐっ………………!」~
しゃくり上げるレミリアの体を、柔らかく、抱く。~
~
この小さな体に、これ以上の苦しみを、与えぬように。~
~
~
「ねえ、パチュリー。あれから調べて、どうだった?」~
魔理沙とレミリアを部屋に残し、他の三人は居間に移ってい...
「……駄目。やっぱりあの呪いは、レミィ自身にも解く事が出来...
そう言ったパチュリーの顔には、疲労の色が濃い。連日、調...
「………そう………」~
「霊夢…これから、どうするの……?」~
パチュリーが霊夢に尋ねる。~
「…勿論、魔理沙と一緒にいるわ」~
「…辛くなるわよ」~
「いいのよ。だって、もう決めた事だもの」~
はっきりと告げる。~
「…そう。強いのね、霊夢は」~
「そんな…そんな事無いわよ」~
「いいえ。私だったら耐えられないわ、きっと。やっぱり、魔...
「……」~
~
私の、幸せ。それは、傍に魔理沙がいる事。―――では魔理沙は...
魔理沙は…私がいれば、幸せ? パチュリーはそう言うけど、...
でも、やっぱり。私は、魔理沙を幸せにしたい―――~
~
「嫌あああああっっっ!!!」~
~
「!!」~
「!? 姉様!?」~
突如として聞こえた、レミリアの悲鳴。その声を聞いた瞬間...
「あっ! 霊夢!?」~
パチュリーの声を背に受け、霊夢は魔理沙の寝室に辿り着い...
「―――魔理沙っ!!」~
倒れ伏す魔理沙と、その体を揺するレミリア。~
「レミリア! どうしたのっ!?」~
「あ……あ……霊夢……! 魔理沙が急に、苦しそうに咳き込んで……...
慌てて魔理沙を抱え起こす。魔理沙は、ぐったりとして、動...
「魔理沙……返事して………!!」~
「………う………うう………ん………」~
魔理沙が、微かに体をよじる。~
「………霊夢………私は………」~
「良かった…! 気が付いたのね…!?」~
「ああ……」~
「とにかく横になって……! レミリア、氷水とタオル用意して...
「え……あ、うん……!」~
駆け出すレミリア。霊夢は、魔理沙を布団に寝かせる。~
「悪い、心配かけた………」~
「何言ってるのよ………そんな事より自分の体を心配してよ………」~
「……ん」~
~
「魔理沙! 大丈夫!?」~
「魔理沙っ!」~
遅れて到着したパチュリーとフランドール。布団で横になる...
「霊夢……持ってきたよ」~
そして、レミリアが戻ってくる。レミリアの持ってきた氷水...
「ふう………」~
魔理沙が眠り、一息つく霊夢。ひとまずは、落ち着いた。~
「………魔理沙、ごめんなさい………ごめんなさい………」~
魔理沙の手を握り、ただひたすらに謝るレミリア。無理も無...
「レミリア、もういいのよ。魔理沙だって、許してくれた……」~
「…霊夢。でも、私の気が済むまで謝りたいの……」~
「……レミリア」~
その後もレミリアは謝り続けた。涙を流しながら。そんなレ...
~
スカーレットの呪いは、呪われた者だけでなく周囲の者にも...
~
~
「……そろそろ帰りましょう、レミィ」~
時刻は、夕方。と言っても、日は既に半分以上沈んでいた。~
「え…でも……」~
「魔理沙の事は霊夢に任せれば大丈夫よ…ね、霊夢?」~
「…ええ」~
しっかりと頷く。~
「………分かった」~
レミリアも、霊夢のその一言で承知したのか、立ち上がる。~
「…行きましょう。パチュリー、フランドール」~
「あ……うん」~
姉の様子を心配そうに見ていたフランドールも、了承する。~
~
「それじゃあ、さようなら。霊夢、魔理沙」~
縁側からレミリアが外へ出ようとした時、~
「待って」~
霊夢が、引き止めた。~
「……何?」~
「また……来てね。待ってるから……」~
その言葉に驚いたのかレミリアは止まったが、しかし、~
「………………うん」~
確かに、そう言って頷いのだった。~
~
~
「…帰ったのか。レミリア達」~
霊夢が魔理沙の寝室に戻ると、魔理沙が体を起こしていた。~
「魔理沙! 起きて大丈夫なの?」~
「ああ、一応」~
「無理しないでよ…?」~
レミリアの手前、大丈夫と言った霊夢だったが、やはり心配...
「レミリアには、辛い思いをさせちまったな……」~
ここに来てなおレミリアの心配をする魔理沙に、霊夢は問い...
「ねえ、魔理沙……。魔理沙は今、幸せ?」~
今まで聞けなかった言葉。明日をも知れぬ体になって、魔理...
~
「ああ、幸せだぜ」~
~
そんな霊夢の心配を、魔理沙はあっさりと打ち砕く。~
「え―――?」~
「幸せだよ、私は」~
「何で……? そんな体で……どうしてそんな事、簡単に―――」~
「簡単さ。だって、霊夢がいるんだからな」~
~
『霊夢がいるんだからな』~
~
その言葉は、霊夢の心に、深く染みる。気付いたら、霊夢は...
「―――霊夢?」~
「魔理沙……ありがとう、ありがとう………!」~
「お、おい…泣くなよ……」~
「だって、嬉しいんだもの…!」~
「しょうがないなあ……」~
~
すっ、と魔理沙の手が霊夢を包み込む。~
優しい手。~
今はただ、魔理沙の鼓動を感じたくて。~
~
霊夢は、魔理沙に身を委ねた―――~
終了行:
~
冷たい風が身を切る。季節はもう冬。~
~
「うーむ…」~
魔理沙は、悩んでいた。と言っても、自分の体の事ではない。~
「魔理沙…どうしたの?」~
心配そうに魔理沙の顔を見つめる霊夢。~
「あ、いや。大した事じゃないんだが……」~
「何よ…気になるじゃない」~
「ううん……実はな、うちにあるアイテムの事で」~
「魔理沙の家のアイテム……?」~
そう言われた霊夢は、記憶を掘り起こす。確か、魔理沙の家...
「…あれがどうかしたの?」~
「いや、もう私には無用の物だと思ったんでな。どうしようか...
「………魔理沙」~
いつも通りの魔理沙の表情。しかし、時たま言葉の端々に、...
「あ……霊夢、変な事言って悪かったな…」~
「え、ううん、いいのよ。私こそ……」~
「いや………そうだ」~
その時、魔理沙が何か思いついた様だった。~
「え…どうしたの?」~
「見つけたぜ、霊夢。私の、やるべき事」~
~
~
「よいしょっ……と。ねえ、これはここに置いていいの?」~
「ああ、ついでにそこも調べてくれ」~
霊夢の家の裏に召喚された魔理沙の家。霊夢は雑然とした家...
「魔理沙……本当に、大丈夫なの? 私の家に戻って休んだ方が…...
「何言ってんだ。私の家の構造を知ってるのは私だけなんだぜ...
「そうだけど…無理しないでよ?」~
「ああ」~
椅子に座って霊夢に指示を出す魔理沙。ただ今、魔理沙の家...
「ケホッ……魔理沙、ちゃんと掃除してるの?」~
舞う埃に、思わず咳き込む霊夢。~
「もう何ヶ月もこの家には帰ってないからな…」~
「あ…そうだったわね。ごめんなさい」~
「いや、いいんだ。たぶん帰っていても、掃除してない」~
「結局駄目じゃない」~
「ははは」~
~
その後も探索を続けた結果、かなりの数のアイテムを発見す...
「ふう……これで全部かしら?」~
「うーん、たぶん。ありがとうな、霊夢」~
「いいのよ。魔理沙の頼みだもん」~
「はは…そうか」~
少し、照れる。~
「ところで、このアイテム群、どうするつもり?」~
「霊夢に、全部あげる」~
「ええっ!? でも私、使い方なんて、知らないわよ……?」~
「だから、出したんだ」~
霊夢は、頭に疑問符を浮かべる。~
「…何で?」~
「このアイテム達は、私の寝室に置いてくれ。私は覚えている...
「えっ……?」~
「これが今、私が霊夢に出来る精一杯だ……」~
そう言って、魔理沙は椅子から立ち上がる。~
「あっ……! ちょっと、大丈夫……!?」~
「ああ…これくらい、一人で歩けなきゃな……」~
机に手を突きながら、一歩一歩霊夢に近付く。~
「だから、やらせてくれ。私は、霊夢に何かを残したいんだ」~
そして、辿り着く。そのまま霊夢にもたれかかる。霊夢は、...
「魔理沙、ありがとう………でも、無茶はしないでね………」~
「………ああ」~
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そう。この体が温かい間は、愛する人に、自分の精一杯を―――~
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その日から、魔理沙は卓に向かい書を記し始めた。あまり長...
その作業は容易では無かった。元々魔理沙のアイテムが数が...
そして、一番の問題は魔理沙の体。~
スカーレットの呪いは、悪化する事はあっても快方に向かう...
そんな生活が続いた、ある日。~
~
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「………こんにちわ」~
「………………うぐっ」~
「霊夢…来ちゃった………」~
博麗神社に、三人の来客。パチュリー、フランドール、そし...
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「…あなた達、どうして―――」~
「…ごめんなさい、霊夢。レミィ達には隠しておくつもりだった...
ばつが悪そうな表情のパチュリー。どうやら、魔理沙の事が...
「………ふぐっ」~
フランドールは、既にすすり泣いている。一方のレミリアは…~
「こんな所で立ち話も何だし……魔理沙の所へ行きましょ?」~
表情が、読めない。平静を装っているのかどうかも、分から...
「え、ええ……」~
訝りながらも、三人を家へ上がらせる。とにかく、話はそれ...
~
「…お前ら、どうして―――」~
魔理沙の反応も、霊夢を同じだった。特に一番知られたくな...
「うわあああん!! 魔理沙ぁっ……!!」~
魔理沙の顔を見て、すぐにフランドールが飛びついてきた。~
「げふっ。フ、フランドール、痛い……」~
「魔理沙ぁっ……死んじゃ、やだよぉっ……!!」~
魔理沙の胸に顔をうずめて泣く。そんなフランドールを見て...
「フランドール……魔理沙が困ってるわよ…。離れてあげて……」~
そんなフランドールに声をかけたのは、姉、レミリア。~
「うう……姉様……」~
「ほら…もう泣くんじゃない。私は大丈夫だから…」~
そう言って、ハンカチでフランドールの涙を拭く魔理沙。~
「…うう………………うん………」~
フランドールは、とりあえず落ち着いた様だった。~
「それで……どうして来たんだ? レミリア」~
魔理沙が、単刀直入に聞く。この期に及んで、隠す事など何...
「……パチュリーに聞いたからよ」~
パチュリーは頷いた。~
「…私は秘密にしておくつもりだったわ。でも、ここ最近私がよ...
ふう、と溜め息。~
「でも、知らなかったら私は一生後悔するところだった」~
「……何でだ?」~
「…知らない間に、大切な友人を亡くす事になった。…しかも、...
「!!」~
魔理沙の目が驚きに見開かれる。~
「知って、いたのか? 自分の呪いの力の事……」~
「………ええ。全部、パチュリーに聞いたわ」~
「…そうか」~
魔理沙は複雑な気持ちだった。~
~
自分の体をこんな風にした張本人。それが目の前にいる。し...
そう言えば、レミリアに大怪我負わされた時もそうだったっ...
どうして、この少女には憎しみの情が湧いてこないのか。私...
否―――そうだ。~
レミリアは、言ってしまえば『危うい』。~
ボロボロの吊り橋を渡る様に。出来の悪いヤジロベエの様に...
傾いてしまうのだ。どちらにも。正気と狂気の狭間。何らか...
そしてそのきっかけを作るのは、往々にして、他人。~
あの夏の日。レミリアを狂わせたのは、他ならぬ霊夢と私―――~
~
「…自業自得、ってか……?」~
ぽつりと呟く。その言葉に、レミリアが反応する。~
「……!? 何言ってるの!? 違うわよ……!! 悪いのは、私...
「レミリア!?」~
「レミィ!?」~
「姉様!?」~
三人が、レミリアを止めようとする。しかし、止まらない。~
「そうよ!! 私はあなたに嫉妬して、あなたを傷付けて!!...
「―――レミリア!!」~
がばっ!!~
霊夢が、レミリアの体を後ろから抱きとめる。~
「あ…霊、夢―――」~
「レミリア……魔理沙が自業自得って言った理由は、私にも分か...
「え………?」~
「魔理沙は、レミリアを憎んでなんかいない―――そうでしょう?...
霊夢が魔理沙に視線を移す。魔理沙は、微笑む。~
「―――ああ」~
その言葉。レミリアには、何よりの救いだった。~
「………う、うう………………うわあああああああああ……………………!!」~
「…レミリア…」~
~
確かに原因を作ったのは、私達。しかし、きっかけを与えら...
その事が、レミリアを悩ませた。苦しませた。~
~
「魔理沙………!! ごめんなさいっ………ごめんなさいっっ………………...
少し前に、フランドールがそうした様に。魔理沙の胸に顔を...
(―――でも、やっぱり)~
~
そう、それでもやはり。魔理沙はレミリアを憎む事は出来な...
目の前にいるのは、五百年の時を生きた吸血鬼。しかし、今...
~
「霊夢……レミリアも、辛かったんだ……」~
「…ええ…」~
「だから……もう……いいんだ……レミリア………」~
「………ううっ………うぐっ………………!」~
しゃくり上げるレミリアの体を、柔らかく、抱く。~
~
この小さな体に、これ以上の苦しみを、与えぬように。~
~
~
「ねえ、パチュリー。あれから調べて、どうだった?」~
魔理沙とレミリアを部屋に残し、他の三人は居間に移ってい...
「……駄目。やっぱりあの呪いは、レミィ自身にも解く事が出来...
そう言ったパチュリーの顔には、疲労の色が濃い。連日、調...
「………そう………」~
「霊夢…これから、どうするの……?」~
パチュリーが霊夢に尋ねる。~
「…勿論、魔理沙と一緒にいるわ」~
「…辛くなるわよ」~
「いいのよ。だって、もう決めた事だもの」~
はっきりと告げる。~
「…そう。強いのね、霊夢は」~
「そんな…そんな事無いわよ」~
「いいえ。私だったら耐えられないわ、きっと。やっぱり、魔...
「……」~
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私の、幸せ。それは、傍に魔理沙がいる事。―――では魔理沙は...
魔理沙は…私がいれば、幸せ? パチュリーはそう言うけど、...
でも、やっぱり。私は、魔理沙を幸せにしたい―――~
~
「嫌あああああっっっ!!!」~
~
「!!」~
「!? 姉様!?」~
突如として聞こえた、レミリアの悲鳴。その声を聞いた瞬間...
「あっ! 霊夢!?」~
パチュリーの声を背に受け、霊夢は魔理沙の寝室に辿り着い...
「―――魔理沙っ!!」~
倒れ伏す魔理沙と、その体を揺するレミリア。~
「レミリア! どうしたのっ!?」~
「あ……あ……霊夢……! 魔理沙が急に、苦しそうに咳き込んで……...
慌てて魔理沙を抱え起こす。魔理沙は、ぐったりとして、動...
「魔理沙……返事して………!!」~
「………う………うう………ん………」~
魔理沙が、微かに体をよじる。~
「………霊夢………私は………」~
「良かった…! 気が付いたのね…!?」~
「ああ……」~
「とにかく横になって……! レミリア、氷水とタオル用意して...
「え……あ、うん……!」~
駆け出すレミリア。霊夢は、魔理沙を布団に寝かせる。~
「悪い、心配かけた………」~
「何言ってるのよ………そんな事より自分の体を心配してよ………」~
「……ん」~
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「魔理沙! 大丈夫!?」~
「魔理沙っ!」~
遅れて到着したパチュリーとフランドール。布団で横になる...
「霊夢……持ってきたよ」~
そして、レミリアが戻ってくる。レミリアの持ってきた氷水...
「ふう………」~
魔理沙が眠り、一息つく霊夢。ひとまずは、落ち着いた。~
「………魔理沙、ごめんなさい………ごめんなさい………」~
魔理沙の手を握り、ただひたすらに謝るレミリア。無理も無...
「レミリア、もういいのよ。魔理沙だって、許してくれた……」~
「…霊夢。でも、私の気が済むまで謝りたいの……」~
「……レミリア」~
その後もレミリアは謝り続けた。涙を流しながら。そんなレ...
~
スカーレットの呪いは、呪われた者だけでなく周囲の者にも...
~
~
「……そろそろ帰りましょう、レミィ」~
時刻は、夕方。と言っても、日は既に半分以上沈んでいた。~
「え…でも……」~
「魔理沙の事は霊夢に任せれば大丈夫よ…ね、霊夢?」~
「…ええ」~
しっかりと頷く。~
「………分かった」~
レミリアも、霊夢のその一言で承知したのか、立ち上がる。~
「…行きましょう。パチュリー、フランドール」~
「あ……うん」~
姉の様子を心配そうに見ていたフランドールも、了承する。~
~
「それじゃあ、さようなら。霊夢、魔理沙」~
縁側からレミリアが外へ出ようとした時、~
「待って」~
霊夢が、引き止めた。~
「……何?」~
「また……来てね。待ってるから……」~
その言葉に驚いたのかレミリアは止まったが、しかし、~
「………………うん」~
確かに、そう言って頷いのだった。~
~
~
「…帰ったのか。レミリア達」~
霊夢が魔理沙の寝室に戻ると、魔理沙が体を起こしていた。~
「魔理沙! 起きて大丈夫なの?」~
「ああ、一応」~
「無理しないでよ…?」~
レミリアの手前、大丈夫と言った霊夢だったが、やはり心配...
「レミリアには、辛い思いをさせちまったな……」~
ここに来てなおレミリアの心配をする魔理沙に、霊夢は問い...
「ねえ、魔理沙……。魔理沙は今、幸せ?」~
今まで聞けなかった言葉。明日をも知れぬ体になって、魔理...
~
「ああ、幸せだぜ」~
~
そんな霊夢の心配を、魔理沙はあっさりと打ち砕く。~
「え―――?」~
「幸せだよ、私は」~
「何で……? そんな体で……どうしてそんな事、簡単に―――」~
「簡単さ。だって、霊夢がいるんだからな」~
~
『霊夢がいるんだからな』~
~
その言葉は、霊夢の心に、深く染みる。気付いたら、霊夢は...
「―――霊夢?」~
「魔理沙……ありがとう、ありがとう………!」~
「お、おい…泣くなよ……」~
「だって、嬉しいんだもの…!」~
「しょうがないなあ……」~
~
すっ、と魔理沙の手が霊夢を包み込む。~
優しい手。~
今はただ、魔理沙の鼓動を感じたくて。~
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霊夢は、魔理沙に身を委ねた―――~
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