とうほうネチョロダ/東方四季想話/第8話
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~ どんなに楽しい事があっても、どんなに悲しい事があっても、時は流れてゆく。~ 人の想いを残したまま。人の想いを乗せたまま―――~ ~ ~ あの冬の別れから数年後。今でも時々思う事がある。あの人と共に過ごした日々は、夢だったのではないかと。~ ~ ―――いや、違う。あの日々は、確かにあった現実。それを証明するもの。霊夢の指に光る指輪と、膝の上で静かな寝息を立てる、小さな命。~ ~ 暖かな、春の日差し。一面満開に咲く桜には、命を感じさせる。~ 「………ふあ」~ 「…あら、起きたの? 真梨紗」~ 「ん~………おはよう……かあさま……」~ 「もう『おはよう』って時間でもないけどね」~ 「あ……うう」~ 「ふふ、ごめんね。じゃあ、おやつでも食べましょうか?」~ 「……うん!」~ ~ 数年前、辛い別れを経験した冬。その時、霊夢は子供を身篭っていた。霊夢は生まれたその子供を、『真梨紗』と名付けた。それは、かつて霊夢が愛した人の名前。そして、今でも忘れえぬ人の名前。~ ~ 「こんにちわ。霊夢」~ 「あら、レミリア」~ 「あー! レミリアおねえちゃんだー!」~ たたた…ぼふっ!~ 「きゃっ」~ 真梨紗が、勢いよくレミリアに駆け寄る。~ 「こら、真梨紗。急に抱きついちゃダメでしょ? レミリアお姉ちゃんが驚くじゃない」~ 「あ…うん、ごめんね。レミリアおねえちゃん」~ 「ううん、いいのよ。元気が一番よね、真梨紗ちゃん?」~ 「うん…てへへ」~ 真梨紗はレミリアに頭を撫でられ、くすぐったそうに笑った。~ 「じゃあ、今日は何して遊びましょうか?」~ ~ ~ その後しばらくして遊び疲れたのか、すやすやと眠る真梨紗。~ 眠る真梨紗を後ろに、霊夢とレミリアは並んで縁側に座る。~ 「すっかりお姉ちゃんね、レミリア」~ 「ずっと前から、妹はいるんだけど?」~ 「そうだったわね」~ 「でも霊夢こそ、すっかりお母さんだわ」~ レミリアは後ろに振り向き、真梨紗を見る。~ 「……そう?」~ 「そうよ。髪だってこんなに伸びた………人間って、短い間にこんなにも変われるのね………」~ そう言って、レミリアは腰までストレートに伸ばされた霊夢の髪を梳く。~ 「レミリア…」~ 「…私、心配だったの。魔理沙がいなくなっちゃって、霊夢も全然元気が無くなっちゃって…。本当にどうしようかと思った………」~ 「………」~ 「でも、この子が生まれてから、霊夢は元気になった。あんなに小さくて、儚い存在だったのに……」~ 言いながら、真梨紗の頬を軽くつつく。柔らかい。~ 「…ええ。本当に、真梨紗には感謝してるの。この子がいなかったら、今ごろ私、おかしくなっていたかもね………」~ 「……霊夢」~ 「この子は……本当に、私の………いえ、『私達の』……宝物よ………」~ ~ 愛する人のいない日々。辛くて泣きそうな時。真梨紗の笑顔に、存在に、何度救われただろう。~ ~ そして、この子を残して逝ってしまったあの人。~ 魔理沙は今、どうしているだろう。~ ~ 「ねえ、霊夢」~ 「何?」~ 「………魔理沙には、会いに行かないの?」~ 「……ええ」~ ~ 魔理沙がいるのは恐らく、死者の国、冥界。~ そこには、過去霊夢も行った事がある。確か、春を取り戻す為だった。~ 以前、あの亡霊の姫が冥界で魔理沙に会ったと言ったが、霊夢は会いに行こうとはしなかった。~ ~ 「……どうして? 霊夢、あんなに魔理沙の事を大切に想っていたじゃない? どうして、会いたくないの?」~ 「………それは」~ 「…魔理沙に、生前の記憶が無いから?」~ 「………」~ ~ 通常、死者は冥界に行く。そこに留まるか転生するか消滅するかは、本人の自由である。だが、避けて通れない事柄がある。~ それは、生前の記憶の消失。自分の人格を残し、他に関する一切の記憶は冥界に来た時点で消滅するのだ。~ その理由を幽々子は、~ ~ 『この世に未練を残さない為らしいわね。まあ、それでもやっぱり怨霊とか悪霊の類は発生しちゃうんだけどね』~ ~ と説明した。~ つまり、霊夢が冥界で魔理沙と会っても、魔理沙は霊夢の事を憶えていない。~ ~ 「…やっぱり、そうなの?」~ しかし、霊夢は首を横に振る。~ 「…違う。違うわよ、レミリア」~ 「じゃあ……どうして?」~ 「もし……魔理沙が私の事を覚えていて、私と再会しても……魔理沙は、きっとこう言うわ。『霊夢、何やってるんだ?』………ってね」~ 空を見上げながら、霊夢が語る。~ 「え………?」~ 「『お前は生きてるんだ。だから、私なんかに構わず、先に進むんだ。これは、私からのお願いだ、頼む』」~ 「……霊夢」~ 「そう言って、私の肩を叩いて送ってくれる………そう思うの。だから、会っても一緒にはいられない……。だから……私は前に進むの。魔理沙がいなくても、平気なように………。私の、想像だけどね………」~ そう言って、レミリアの方に向き直る。レミリアは、霊夢の寂しげな顔を見た。~ 「……霊夢。きっと魔理沙はその後こう言うわ。『元気でな、霊夢』…」~ 「………え………?」~ 「私の知ってる魔理沙なら、きっとそう言うわ…。だって魔理沙は、いつも変だけど、最後は絶対元気をくれるもの」~ 「……レミリア……」~ 「うん……そうか。霊夢は、魔理沙に会えなくても、元気を貰えるんだね」~ そう言って、霊夢に微笑みかける。その笑顔が、魔理沙に重なって見えた。~ 「……うん……!」~ ~ ~ だから、私も、微笑む。精一杯。私が愛したあの人の分も、一生懸命生きる為―――~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 満開の桜林の中の一本。その枝の上に、二つの人影があった。~ 「んー、いい桜ね。白玉楼の桜もいいけど、こっちの桜もまた格別」~ 「……なあ、幽々子」~ 「ん? なあに?」~ 「何でこんな寂れた神社の桜なんか見に来たんだ?」~ 「別にいいじゃない。ほら、あそこにいる三人だって、楽しんでるみたいよ?」~ そう言って、幽々子は霊夢達を指差す。~ 「ぼーっとしてるだけの様に見えるぜ」~ 「あら? そうかしら?」~ 「…全く。用があるからって来てみれば……私を誘い出す口実だったって訳だな?」~ 「まあねー」~ 「何でそんな事したんだ? こんな所に来なくても、桜なんてあっちでいくらでも見られるじゃないか…」~ 「ここでしか、見られないものもあるわよ」~ 「何だ? そりゃ」~ ~ 「例えば、あなたの涙とかね――――――魔理沙」~ ~ 「―――――――――え?」~ ~ 気が付くと、両の目からは、ぽろぽろと熱い雫が流れ落ちていた。~ 「あ、あれ? え? え?」~ 拭っても拭っても、止まらない。~ 「な、何で? 私、どう、して、泣いて、る、の?」~ ただひたすら、戸惑う。こんな事、冥界に来てから一度も無かった。~ 「どうしたの? 何か悲しい事でもあったの?」~ 幽々子が訊いてくる。悲しいなんて、思ってない。じゃあ、どうして涙が。分からない。~ でも―――~ 「でも、何だか、温かい………」~ 不思議と、嫌な気分じゃなかった。~ 「ね? 来てよかったでしょ?」~ 幽々子は何か知っているのか。聞きたかったけど、今はどうでもよかった。~ ~ 今はただ、この不思議な感覚が何だか心地良くて。~ ~ もう少し、ここに居ようと思った。~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ やがて夜が訪れる。レミリアは屋敷に帰り、また神社には二人だけが残った。~ 「かあさま……さくらさん、きれいだね……」~ 「そうね……」~ 夕飯を食べた後、親子二人で夜桜を見る。~ 「でも…さみしいな……」~ 「…どうして?」~ 「さくらさん………すぐにちっちゃうんだもん。ずっと…ずうっとさいてればいいのに……」~ 「…真梨紗」~ 肩を抱き、引き寄せる。~ 「あ……かあさま……」~ 「真梨紗には少し難しいかもしれないけど…桜のお花さんはね、短い間しか咲いていられないの…でもね、それはお花さんが一生懸命生きた証拠なのよ?」~ 「いっしょうけんめい………?」~ 「そう。一生懸命生きたから、桜のお花さんはあんなに綺麗なのよ」~ 「よくわかんない……でも……さくらさんも……がんばってるんだね?」~ 「ええ、そうよ」~ その言葉を聞いた真梨紗が、桜に向かって駆け出した。~ 「あ! 真梨紗!?」~ 止める間も無く、真梨紗は一本の桜の木の下に辿り着く。そして、~ ~ 「さくらさーーーーーーん!! がんばってねーーーーーーーーー!!!」~ ~ 桜に向かって、叫んだ。~ 「………真梨紗………」~ ~ 「がんばってねーーーーーー!!」~ ~ 霊夢は、その様子をただ見つめた。そして呟く。~ 「やっぱり真梨紗は…魔理沙の子だよ………」~ ~ 「さくらさーーーーーーん!!」~ ~ ~ ~ ~ 私は、大丈夫。幸せだよ、魔理沙。~ ~ たとえあなたが私を忘れても、私はあなたを忘れない。やっぱり魔理沙のくれた指輪は凄いよ。~ ~ 私は、元気だよ。真梨紗も、あなたに似て元気一杯。あなたも、元気?~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 春の幻想郷。桜舞う、博麗神社。~ ~ ~ どこまでも続く夢。春は、まだまだ終わらない――――――~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~了~~
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~ どんなに楽しい事があっても、どんなに悲しい事があっても、時は流れてゆく。~ 人の想いを残したまま。人の想いを乗せたまま―――~ ~ ~ あの冬の別れから数年後。今でも時々思う事がある。あの人と共に過ごした日々は、夢だったのではないかと。~ ~ ―――いや、違う。あの日々は、確かにあった現実。それを証明するもの。霊夢の指に光る指輪と、膝の上で静かな寝息を立てる、小さな命。~ ~ 暖かな、春の日差し。一面満開に咲く桜には、命を感じさせる。~ 「………ふあ」~ 「…あら、起きたの? 真梨紗」~ 「ん~………おはよう……かあさま……」~ 「もう『おはよう』って時間でもないけどね」~ 「あ……うう」~ 「ふふ、ごめんね。じゃあ、おやつでも食べましょうか?」~ 「……うん!」~ ~ 数年前、辛い別れを経験した冬。その時、霊夢は子供を身篭っていた。霊夢は生まれたその子供を、『真梨紗』と名付けた。それは、かつて霊夢が愛した人の名前。そして、今でも忘れえぬ人の名前。~ ~ 「こんにちわ。霊夢」~ 「あら、レミリア」~ 「あー! レミリアおねえちゃんだー!」~ たたた…ぼふっ!~ 「きゃっ」~ 真梨紗が、勢いよくレミリアに駆け寄る。~ 「こら、真梨紗。急に抱きついちゃダメでしょ? レミリアお姉ちゃんが驚くじゃない」~ 「あ…うん、ごめんね。レミリアおねえちゃん」~ 「ううん、いいのよ。元気が一番よね、真梨紗ちゃん?」~ 「うん…てへへ」~ 真梨紗はレミリアに頭を撫でられ、くすぐったそうに笑った。~ 「じゃあ、今日は何して遊びましょうか?」~ ~ ~ その後しばらくして遊び疲れたのか、すやすやと眠る真梨紗。~ 眠る真梨紗を後ろに、霊夢とレミリアは並んで縁側に座る。~ 「すっかりお姉ちゃんね、レミリア」~ 「ずっと前から、妹はいるんだけど?」~ 「そうだったわね」~ 「でも霊夢こそ、すっかりお母さんだわ」~ レミリアは後ろに振り向き、真梨紗を見る。~ 「……そう?」~ 「そうよ。髪だってこんなに伸びた………人間って、短い間にこんなにも変われるのね………」~ そう言って、レミリアは腰までストレートに伸ばされた霊夢の髪を梳く。~ 「レミリア…」~ 「…私、心配だったの。魔理沙がいなくなっちゃって、霊夢も全然元気が無くなっちゃって…。本当にどうしようかと思った………」~ 「………」~ 「でも、この子が生まれてから、霊夢は元気になった。あんなに小さくて、儚い存在だったのに……」~ 言いながら、真梨紗の頬を軽くつつく。柔らかい。~ 「…ええ。本当に、真梨紗には感謝してるの。この子がいなかったら、今ごろ私、おかしくなっていたかもね………」~ 「……霊夢」~ 「この子は……本当に、私の………いえ、『私達の』……宝物よ………」~ ~ 愛する人のいない日々。辛くて泣きそうな時。真梨紗の笑顔に、存在に、何度救われただろう。~ ~ そして、この子を残して逝ってしまったあの人。~ 魔理沙は今、どうしているだろう。~ ~ 「ねえ、霊夢」~ 「何?」~ 「………魔理沙には、会いに行かないの?」~ 「……ええ」~ ~ 魔理沙がいるのは恐らく、死者の国、冥界。~ そこには、過去霊夢も行った事がある。確か、春を取り戻す為だった。~ 以前、あの亡霊の姫が冥界で魔理沙に会ったと言ったが、霊夢は会いに行こうとはしなかった。~ ~ 「……どうして? 霊夢、あんなに魔理沙の事を大切に想っていたじゃない? どうして、会いたくないの?」~ 「………それは」~ 「…魔理沙に、生前の記憶が無いから?」~ 「………」~ ~ 通常、死者は冥界に行く。そこに留まるか転生するか消滅するかは、本人の自由である。だが、避けて通れない事柄がある。~ それは、生前の記憶の消失。自分の人格を残し、他に関する一切の記憶は冥界に来た時点で消滅するのだ。~ その理由を幽々子は、~ ~ 『この世に未練を残さない為らしいわね。まあ、それでもやっぱり怨霊とか悪霊の類は発生しちゃうんだけどね』~ ~ と説明した。~ つまり、霊夢が冥界で魔理沙と会っても、魔理沙は霊夢の事を憶えていない。~ ~ 「…やっぱり、そうなの?」~ しかし、霊夢は首を横に振る。~ 「…違う。違うわよ、レミリア」~ 「じゃあ……どうして?」~ 「もし……魔理沙が私の事を覚えていて、私と再会しても……魔理沙は、きっとこう言うわ。『霊夢、何やってるんだ?』………ってね」~ 空を見上げながら、霊夢が語る。~ 「え………?」~ 「『お前は生きてるんだ。だから、私なんかに構わず、先に進むんだ。これは、私からのお願いだ、頼む』」~ 「……霊夢」~ 「そう言って、私の肩を叩いて送ってくれる………そう思うの。だから、会っても一緒にはいられない……。だから……私は前に進むの。魔理沙がいなくても、平気なように………。私の、想像だけどね………」~ そう言って、レミリアの方に向き直る。レミリアは、霊夢の寂しげな顔を見た。~ 「……霊夢。きっと魔理沙はその後こう言うわ。『元気でな、霊夢』…」~ 「………え………?」~ 「私の知ってる魔理沙なら、きっとそう言うわ…。だって魔理沙は、いつも変だけど、最後は絶対元気をくれるもの」~ 「……レミリア……」~ 「うん……そうか。霊夢は、魔理沙に会えなくても、元気を貰えるんだね」~ そう言って、霊夢に微笑みかける。その笑顔が、魔理沙に重なって見えた。~ 「……うん……!」~ ~ ~ だから、私も、微笑む。精一杯。私が愛したあの人の分も、一生懸命生きる為―――~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 満開の桜林の中の一本。その枝の上に、二つの人影があった。~ 「んー、いい桜ね。白玉楼の桜もいいけど、こっちの桜もまた格別」~ 「……なあ、幽々子」~ 「ん? なあに?」~ 「何でこんな寂れた神社の桜なんか見に来たんだ?」~ 「別にいいじゃない。ほら、あそこにいる三人だって、楽しんでるみたいよ?」~ そう言って、幽々子は霊夢達を指差す。~ 「ぼーっとしてるだけの様に見えるぜ」~ 「あら? そうかしら?」~ 「…全く。用があるからって来てみれば……私を誘い出す口実だったって訳だな?」~ 「まあねー」~ 「何でそんな事したんだ? こんな所に来なくても、桜なんてあっちでいくらでも見られるじゃないか…」~ 「ここでしか、見られないものもあるわよ」~ 「何だ? そりゃ」~ ~ 「例えば、あなたの涙とかね――――――魔理沙」~ ~ 「―――――――――え?」~ ~ 気が付くと、両の目からは、ぽろぽろと熱い雫が流れ落ちていた。~ 「あ、あれ? え? え?」~ 拭っても拭っても、止まらない。~ 「な、何で? 私、どう、して、泣いて、る、の?」~ ただひたすら、戸惑う。こんな事、冥界に来てから一度も無かった。~ 「どうしたの? 何か悲しい事でもあったの?」~ 幽々子が訊いてくる。悲しいなんて、思ってない。じゃあ、どうして涙が。分からない。~ でも―――~ 「でも、何だか、温かい………」~ 不思議と、嫌な気分じゃなかった。~ 「ね? 来てよかったでしょ?」~ 幽々子は何か知っているのか。聞きたかったけど、今はどうでもよかった。~ ~ 今はただ、この不思議な感覚が何だか心地良くて。~ ~ もう少し、ここに居ようと思った。~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ やがて夜が訪れる。レミリアは屋敷に帰り、また神社には二人だけが残った。~ 「かあさま……さくらさん、きれいだね……」~ 「そうね……」~ 夕飯を食べた後、親子二人で夜桜を見る。~ 「でも…さみしいな……」~ 「…どうして?」~ 「さくらさん………すぐにちっちゃうんだもん。ずっと…ずうっとさいてればいいのに……」~ 「…真梨紗」~ 肩を抱き、引き寄せる。~ 「あ……かあさま……」~ 「真梨紗には少し難しいかもしれないけど…桜のお花さんはね、短い間しか咲いていられないの…でもね、それはお花さんが一生懸命生きた証拠なのよ?」~ 「いっしょうけんめい………?」~ 「そう。一生懸命生きたから、桜のお花さんはあんなに綺麗なのよ」~ 「よくわかんない……でも……さくらさんも……がんばってるんだね?」~ 「ええ、そうよ」~ その言葉を聞いた真梨紗が、桜に向かって駆け出した。~ 「あ! 真梨紗!?」~ 止める間も無く、真梨紗は一本の桜の木の下に辿り着く。そして、~ ~ 「さくらさーーーーーーん!! がんばってねーーーーーーーーー!!!」~ ~ 桜に向かって、叫んだ。~ 「………真梨紗………」~ ~ 「がんばってねーーーーーー!!」~ ~ 霊夢は、その様子をただ見つめた。そして呟く。~ 「やっぱり真梨紗は…魔理沙の子だよ………」~ ~ 「さくらさーーーーーーん!!」~ ~ ~ ~ ~ 私は、大丈夫。幸せだよ、魔理沙。~ ~ たとえあなたが私を忘れても、私はあなたを忘れない。やっぱり魔理沙のくれた指輪は凄いよ。~ ~ 私は、元気だよ。真梨紗も、あなたに似て元気一杯。あなたも、元気?~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 春の幻想郷。桜舞う、博麗神社。~ ~ ~ どこまでも続く夢。春は、まだまだ終わらない――――――~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~了~~
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