書いた人:オサキ狐
一応、魔理沙 × 咲夜のネチョ?です。
特に人を選ぶといったものではないですが、ネチョ量が少ない上に他の部分がやたらめったらに長いので、その点は読み手を選ぶかと思われます(つД`)
あと、右端で折り返したほうが見やすいかと。
広大な黴臭い図書館を私は歩いていた。香りのいい入れたばかりの紅茶のセットを乗せたお盆を両手でしっかりと持って、図書館の管理人室へと進んでいく。その足取りはいたって速い。メイドたる者にとって時間の遅れは一切許されないからだ。加えて私はメイド長という立場にあり、それゆえに時間を止めてでも仕事を遅らせるようなことはしない。
この徹底したプロ意識が、ある種私の生きがいとなっていた。私にはもう、ここ紅魔館でのメイドとしての生き方以外に望むものはない。ここには私がかつて望んだすべてがあるように思えた。
私はせっかくの紅茶が冷めないよう、時間を適度に止めながら管理人室に急ぐ。それにしても何と無駄に広い図書館なのだろう。週に一度は掃除をするが、あまりに広すぎるために普通なら時間を止めてもおっつかない。それでもおっつかせる私はまさしくメイドの鑑だと言えよう。
そうしてやや自意識過剰ぎみに自分を評価していると、やがて管理人室の扉の前に着いた。
ノックをしようとして、私はその動きを止めた。そして、私はメイドとしてあるまじきことと思いつつも、中から聞こえてきた話に聞き耳を立てたのだった。
……応用すれ…………が……きるぜ…
……その……論が……と……すれば……ね…
……そう……………これで……必要……なるぜ…
……でも……は……よく……くれている…わ…………なこと
……から…・……あんま………本………………もか?
……それは……だけど……
……そう言わ…………やるだけ………上手く……かも………し
……探究心………満た…………だったら………合うわ
扉で声の大きさが少々殺されてはいたが、私は彼女らの会話の端々を聞き、自己の中で何やら揺らぐのを感じた。
―――私が、いらなくなる?
それはあまりにも耐えがたいこと。私は苛立ちを覚える。そこで、私はこんなことをしてはいけないとは分かってはいるものの、実行に踏み切ることにした。
*
――コン、コン
小気味のいいノックの音が管理人室に響いた。
人間でありながら魔女である霧雨魔理沙と生粋の魔女であるパチュリー・ノーレッジは、やっとお茶が来た、という表情をお互いに浮かべる。それはいつもよりお茶が来る時間がほんの二分ほどであったが遅かったからである。
「入って」
パチュリーは一言そう言った。
すると、ほどなくしてお盆を持ったメイド長十六夜咲夜が管理人室内に入ってくる。
「…失礼致します」
「今日は遅かったな」
魔理沙が時間に律儀な咲夜を揶揄した。
「珍しいわね、咲夜。いつも懐中時計を忍ばせているあなたが遅れるなんて」
パチュリーも別に責めるわけではなかったが、似たようなことを言った。
「…ええ、ちょっと―――」
と言いながらお盆を運んでくる咲夜、しかしその刹那―――――――。
―――――ガシャーン
一瞬時が止まったような静寂の中、盛大に何か物の割れる音がする。
驚いたことに、咲夜がこけたのだった。
「…あ、申し訳ありませんっ!!」
咲夜は大きな声を立てて誤りながら、テーブルの上にあった紅茶と牛乳で汚れた本をおしぼりで拭こうとするが、そこでまたこけた。
「「……………」」
頭からかぶった牛乳を頬に滴らせながら、魔理沙は抗議の目を咲夜に向ける。
頭からかぶった紅茶を頬に滴らせながら、パチュリーはじと目を咲夜に向けた。
咲夜が機転を利かせて咄嗟に拭こうとした本は、紅茶と牛乳で無残にもインクが滲んでしまい、もはや読むことが出来なくなっていた。加えて、二度目に咲夜がこけた拍子に咲夜が掴んでいた部分がまるごと抉り取れていた。よっぽど古く、もろい本だったのだろう。
「あーーーーーー」
魔理沙が素っ頓狂な声を出した。
「咲夜…この本は…」
パチュリーはバツが悪いような声を出した。
「…も、申し訳ありませんパチュリー様。このつぐないは如何なようにでも致します。どうか、お許しください……」
咲夜は平身低頭に陳謝を繰り返すが、よほど大事なものだったのか二人はあまりいい顔をしなかった。
「…なん、てこった。おい、メイド長。これがどんなに貴重なものか分かっ――」
「―――あなたには関係ないでしょう? 私はパチュリー様の本を駄目にしたことに対して、パチュリー様にこうして謝っているんです。あなたは余計な口を挟まないでくれるかしら?」
「なっ……」
てっきりこっちにも平謝りをしてくるかと思っていた魔理沙も、咲夜のこの物言いには流石にカチンときたらしい。
「…んだとぉ? メイド長、この本はな―――」
そのまま咲夜に食ってかかりそうな魔理沙を抑えながらパチュリーが言う。
―――咲夜、この本は魔理沙のものだったのよ。
*
…何ということだろう。よりにもよってあの本がパチュリー様の蔵書でなく、あの霧雨魔理沙のものだったとは…。これは手痛い失態を演じてしまった。当初の予定ではあのまま謝ることで押し切って、彼女たちが計画していたことをうやむやにしてしまうつもりだったのに…。
でもそれももう駄目になってしまった。駄目にした本の主に対してのあれだけの非礼、とてもメイドとして許される態度ではない。しかもよくよく考えてみれば、あの霧雨魔理沙は口には出さねどパチュリー様のお気に入りではなかったか。とすれば、私のやってしまったことはパチュリー様の心象を著しく悪くしてしまっただけになってしまう。
そしてさらに突き詰めるならば、そのパチュリー様もまたレミリアお嬢様のお気に入りの友人ではないか。如何なレミリアお嬢様でも、これだけの失態はお許しになられないかもしれない。
…それからを考えるととても気が気ではなかった。
―――お嬢様に見捨てられる。
―――紅魔館に居られなくなる。
―――それだけは、耐えられない。
*
「聞いてるのか?」
魔理沙の口調は少しずつ厳しいものへと変わってきていた。何せ自分の本を駄目にされただけに留まらず、あれだけの口を利かれたのだ。そしてその当の本人はそのことをパチュリーに知らされた途端に、呆けるようにしてだんまりを決め込んでしまっている。これでは口調が厳しくなるのも止むを得ないと言えた。
「…魔理沙」
静かにパチュリーはそう言った。あまり酷いことは言わないで、という意思が汲み取れる表情をしていたが魔理沙はそれを敢えて無視する。
「…いいか、メイド長。あんたが駄目にした本は、私が霊夢の先を越してやっとの思いで魔界からくすねてきたレア本だったんだぜ? しかも内容もまさに値千金の代物だったんだ。今まで誰も成し得なかった永久機関製造理論を探求した一冊。かぁ~蒐集家の端くれとして是非家に置いておきたかったねぇ。さぁ、ど う し て く れ る ん だ?」
非は完全に咲夜にあった。それゆえに彼女は何も言い返すことが出来なかった。
「あまり責めないであげてよ、魔理沙。咲夜も悪気があったわけじゃ…」
「い~や、パチュリー。おまえも本が好きなら分かるだろう? それともパチュリーは読みかけの、それもまだ内容を完全に理解し終えていない貴重な本を駄目にされて怒らないのか?」
否定できないのでパチュリーは口を噤んだ。
「言っておくけどな、魔界の禁書保管庫の書物は霊夢が魔界の創造神を倒したときに、魔界の住人やら何やらがどさくさにまぎれて全部持っていってるから、複製本の類は一切残ってないぜ」
複製本は残っていない、という最後の言葉に咲夜は軽い微笑を浮かべた。それは一瞬のことであったが、魔理沙は見逃さなかった。
「…おい、今のはなんだメイド長? 人を馬鹿にするのにもほどがあるんじゃないか?」
パチュリーはこれは不味い展開になりそうだと思った。このままではここ管理人室内で弾幕ごっこが行われるのは時間の問題である。管理人室には図書館に常時置いてある本とは一味違う古今東西の貴重な本が眠っていたので、パチュリーは内心大いに慌てていた。
―――話は聞かせてもらったわ。
ノックもなしに誰かが管理人室に入ってきた。吸血鬼のレミリア・スカーレットである。
「…レミィ、よかった、ちょうどいいところへ……」
「…ん、なんだレミリアか」
「……レミリアお嬢様…」
三者はそれぞれ反応を示す。パチュリーは心底ほっとしたようであり、魔理沙はどうでもよさそうで、咲夜はすがるような目をレミリアに向けていた。
「なんだとはご挨拶ね、霧雨魔理沙。いくらお客様とはいえ、紅魔館の主人は私ということを忘れないように」
そう言った後レミリアはふふふと含み笑いをした。
「ふふん、なら主様、使用人のこの不始末はどうしてくださいますかね? 見てみろ、この本の有様。インクも滲んでるし、本自体が千切れてズタボロになって、ミルクティー臭くなってる。これじゃあもう読むことなんて不可能だな」
「――おまけに、あなたも牛乳まみれだしね。本の事を気にしすぎて気付かなかったのかしら?」
今度はくすくすと声に出して笑いながらレミリアは言った。
ここでようやく魔理沙は自分の全身に牛乳を浴びせられたことを思い出した。本の事で躍起になっていたため、自分の体のことには気が回らなかったらしい。
パチュリーも同様に、自分の体が紅茶で濡れている事を思い出した。それと同時に、パチュリーはとある疑問を抱いたが口には出さないでいた。
「わっ、そういえばそうだった。おい、メイド長、パチュリーは紅茶だからまだいいけどな、牛乳は時間が経つと服が肌にベッタリと張り付くわ、臭くなるわで大変なんだぞ! あーくそぅ、お気に入りのだったのに…」
紅茶だって染みになるわ、とパチュリーは返したかったが、咲夜を責めたくはなかったのでそれは止めておいた。一方の咲夜は、またぱったりと口を閉ざしていた。
「…あらあら、咲夜、その態度は感心しないわね。分かっているの? あなたはお客人に無礼を働いたのよ? 相応の礼をするのが筋ではないの? それとも、ついこの間までは敵同士だったから主人のお客とはいえ、礼を尽くすのはご免蒙るってわけ?」
咲夜はやはり何も答えなかった。
「…仕方がないわね。咲夜、あなたにはしばらくお暇を出すわ。あなたの態度はこの紅魔館のメイドのものとして相応しくない。当分の間は外に居る門番に館の切り盛りを任せるわ」
「…!! レミリアお嬢様、それだけは…っ!」
咲夜は悲痛な声を出した。レミリアはそれにも関わらず話を続ける。
「そんな声を出すものじゃないわよ、咲夜。…ふふ、それにこれはあなたの態度に対する罰でもあるのよ。…そうだ、ただお暇を出すというのも面白くはないわね。魔理沙、ちょっといいかしら?」
「ん~、なんだ?」
レミリアはちらりと咲夜を一瞥した後、魔理沙に向き直り言う。
―――しばらくの間、咲夜をそっちで使ってやってくれないかしら?
*
お嬢様のその言葉を聞いたとき、私の心の拠り所は一瞬にして砕けてしまった感じがした。何しろパチュリー様ならいざ知らず、主のレミリア様直々に暇を言い渡されたのだから。これは私にとって死刑宣告を言い渡されたものと同義だ。それでも、救いがあっただけまだましだった。
結局、私のやってしまったことに対するお咎めは霧雨魔理沙が納得のいくまで私をこき使ってよいというものだった。つまり、その期限は無期限であるから、如何に私が先の失態を挽回する働きを霧雨魔理沙のために出来るかが解放の条件であるとも言える。
何にせよ、レミリアお嬢様の罰がこの程度のもので済んでよかった。レミリアお嬢様も、「メイドとしての従順な心を学びなおすためよ」と仰ってくれたし、後は霧雨魔理沙の機嫌を損ねることなく、何かあの本以外に価値のある魔導器の類でも手に入れてくれば簡単に許されるだろう。
私は多少の誤算があったにせよ、霧雨魔理沙の目論見を潰すことに成功したことについては一切の後悔はない。大体にしてパチュリー様も抱きこんで、私の存在意義を否定しようとしたことが許せない。本が二度と使い物にならなくなったのも自業自得というものだ。
―――そして、私は霧雨邸へ通された。
*
「…おい、メイド長。…いや、咲夜、さっそくだが風呂場に来てもらうぜ」
霧雨邸に着くなり、魔理沙は咲夜を呼びつけた。
咲夜は、はいと一言だけ言うと黙って魔理沙の後に続く。霧雨邸自体は紅魔館ほど大きくもないので、数秒ほどで風呂場に着いた。
風呂場自体も紅魔館のものと比べるとちんけなものであったが、咲夜は今そんなことをいちいち口には出さない。ただ黙っているのみである。
「ふふふ、それじゃあ咲夜。私の服を脱がしてくれないか? いい加減牛乳の臭いが鼻についてきたからな」
咲夜はまたもや、はいと一言だけ言うと黙々と牛乳で汚れた魔理沙の服を脱がし始める。手際よく、いともあっさりと咲夜は魔理沙を全裸にしていった。脱がした服や下着はちょうど近くにあった洗濯桶に入れて、水を張る。
「あぁ、体に張り付いて気持ちわるかった。それはそうと咲夜、服を脱がせるのが上手いな。いつもレミリアとかにもやってるのかい?」
「いえ、そういうわけではありませんが、偶に…」
ふ~ん、と興味もなさげな返事を咲夜に服を脱がされて全裸になった魔理沙はした。そして、すぐににまぁっとと何か企みがあるような笑みを浮かべると咲夜に次の命令を下す。
―――咲夜、お前が汚した私の体を………舐めて……綺麗に…するん、だ…。
*
…正直、霧雨魔理沙の口からそんな言葉が出るとは想像もつかなかった。私はこの少女のことをまだまだ子供だと思っていた手前、流石に開いた口が塞がらなかった。それとも、実は私が思っている以上に、この幻想郷の少女たちはそういうことへ興味を持つのが早いのかもしれない。それで、体よく霧雨魔理沙の使用人に格下げされた私を利用しようと、そういう腹なのだろう。
…あるいは、全くの私の思い違いで、実際のところは霧雨魔理沙とレミリアお嬢様との間に何らかの密約が交わされたという可能性。しかし、前者であれ後者であれ、霧雨魔理沙がそういうことへ興味を持っていたという事実は否むことは出来なかった。
―――どう、した? 主人の命令が…聞け、ないの…か?
…霧雨魔理沙の声が非常に切なく聞こえる。そこで私は、実は霧雨魔理沙はそういうことに興味がありこそすれ、思い切ったのは今この瞬間が初めてではないのか? という考えに行き着いた。声はすこぶるたどたどしく、表情には羞恥という言葉が見え隠れしている。多少強気な口調なのはそれを押し隠すためであろう。
…くす。私はこのとき霧雨魔理沙が可愛く見えてしょうがなかった。本来、もし私が霧雨魔理沙とそういう関係になるのだとしたら、間違いなく主導権は私にあるはずだったが、生憎と今は名目上私が従者で、霧雨魔理沙が主人に当たる。そういうわけだから、私は霧雨魔理沙の顔を立てるため、その命令に従者として従うことにした。
*
咲夜は何も言わず、そのまま魔理沙の裸体を手元に引き寄せる。魔理沙は顔を赤らめながらも、強気な態度は崩さず、それに応じた。
そしてそのまま、咲夜は魔理沙の白い餅肌に舌を這わせた。うなじから順に少しずつ少しずつ体の下へと舌を動かしていく。
「…んっ……はぅぅっ…」
魔理沙はうなじに舌を当てられているときは声を出すのを我慢していたが、やがて咲夜の舌が己が未成熟な胸の近辺にいく辺りで思わず声を出した。
「…ここも、でしょうか…?」
返事も聞かず、咲夜はそのまま白い肌に薄っすらと紅を差したかのような愛らしい魔理沙の乳首を舌先でねぶった。
「…もち、ろん……だぜ…。……あぅぅ、その…まま……全身、を……ひゃぅぅっ!」
執拗に乳首を責められ、魔理沙はついには体を弓なりに仰け反らせた。初めてこうした経験をするのか、興奮のあまりに感覚が敏感になっているのかもしれなかった。
続いて咲夜は魔理沙の腋下、内股などに舌を持っていった。そうして各所を咲夜の柔らかい舌で舐められる度に魔理沙は声を上げては体を仰け反らせるのだった。
「…ふぅ…ふぅ…咲、夜………次は、足の指を……舐め、るん…だ。………めいれ、い…だ…ぜ」
ここで魔理沙は偶に受ける性感帯からの刺激に甘い声を出しながら、咲夜に自分の体を舐めさせるに当たっての当初の目的を思い出した。それは咲夜に自分の足の指を舐めさせることである。他人に自分の足を舐めさせるなど、舐める当人からすれば屈辱以外の何物でもない。
それを今ある自分の立場を利用して魔理沙はやらせようとしていた。普段は自分に対して気丈に振舞っているあの紅魔館のメイド長が、今や魔理沙の言うことなら何でも聞く奴隷と化しているのだ。これを利用しない手はない。魔理沙は己からふつふつと沸き立ってくる嗜虐心に酔いしれていた。
「…かしこまりました」
二つ返事で咲夜は承知する。体ごと密着させていたのを引き剥がし、咲夜は魔理沙を風呂場のタイルに腰掛けさせその足を手に取った。ちょうど位置的に魔理沙の秘所が丸見えになる。そこはもう誰が見てもはっきりと濡れていると分かるほどに湿っていた。
魔理沙は、咲夜にそこを見られていることに気付いて顔を赤らめたが隠すことはしなかった。強気な姿勢も崩さない。
「…いい、か? ……足の指が、ふやけるまで舐めつづけるんだ…」
物言わず咲夜は魔理沙の右足の親指を丹念に舐め始める。魔理沙は特に足が弱いというわけではなかったので、咲夜の自分の足をねぶる様を見ながら、気丈な女の鼻っ柱を圧し折ってやったという軽い優越感に浸っていた。
魔理沙の心中など露知らず、咲夜は、「…ちゅ、くちゅ…」と淫靡な音を出しつつ魔理沙の足の指を舌と口で吸っていた。
「…ふふ、指の股もだぜ……」
自分で言っていて、注文が段々と変質ぎみていることに魔理沙は気付く。同時に、それが自分の生まれ持った癖なのだということに気付いた。そう思うと魔理沙は体の奥からゾクゾクとする妙な悦楽を覚えたのだった。
*
…私は足の指を舐めろと言われたとき、霧雨魔理沙はサディストなのではないかという疑惑を持った。あの「足を舐めるんだ」と言ったときの霧雨魔理沙の顔、何とも言えない艶っぽさを持っていたように思う。普段から人を食ったような態度をしているので、こうした秘め事の際にもそうしたものが出てくるものなのだろうか? 案外こうしたときの方が本人の隠された嗜好なり何なりが出てきそうなものであるが、霧雨魔理沙の場合よっぽど自分に正直に生きているということなのだろう。
…反対に、私の方は足を舐めさせられるといった人間の尊厳を踏みにじるような行為を強要されつつも、同時に潜在下に秘められていた被虐されることを好む嗜好が芽生えているということに気付いていた。その証拠に、私の下着は一方的に私が霧雨魔理沙の体を舐め回していただけなのに、ぐっしょりと濡れている。
…思えば、レミリアお嬢様の下でメイドとして生きることを選んだときに、被虐されることを好むという嗜好が芽生えていたのではないか? 私は紅魔館の住人に何か言いつけを受けるごとに言い知れぬ満足感を得ていたように思う。自分が必要とされていることへの喜びがあったからだ。それを、今悦に浸っている霧雨魔理沙が紅魔館の住人とはまた違う形で私に与えてくれている。
―――そう考えると霧雨魔理沙という人間がいとおしくさえあった。
*
魔理沙の体は咲夜の唾液と己自身から滲み出る愛液によってどろどろになっていた。足も十数分に及ぶ咲夜の舌による愛撫ですっかりふやけてしまっていた。
そろそろ満足したのか、魔理沙は咲夜に足を舐めることを止めさせ、次の命令を下す。
「――よし、もういい。それよりも今度は別の物で汚れたから、シャワーにしよう。咲夜も服を脱ぐんだ、一緒に浴びてもらうぜ」
「…はい、ご主人様」
命令を受けてすぐに咲夜は着慣れたメイド服を脱いだ。全裸になった咲夜の体を見て魔理沙は軽い嫉妬を覚える。自分のほとんど無いに等しい胸とは違い、こぶりながらも均整の取れた形のいい乳房が見て取れたからである。
「…私もいつかは…」
ぼそっと魔理沙はそう言った。
「…え? 何か仰いましたか」
聞こえなかったので咲夜は聞き直したが、魔理沙は取り合わなかった。
「…んでもない。それよりも咲夜、これはどういうことだ? 私は舐めろとは言ったが、此処を濡らしてもいいなんて一言も言ってないぜ?」
意地悪く魔理沙は笑うと咲夜の秘所をまさぐりだした。もちろん咲夜は抵抗することはしない。
「…すみませ、ん……その…さっきので…興奮…したもの…です、から…」
歯切れ悪く咲夜はそう答えた。
「へぇ~、咲夜は人様の足を舐めて此処をこんなにするんだな。まるで……」
「…あっ…んんぅ…ふぅ…言わないでくだ、さい……。そう…で、す。私はご主人様が…思っている……通り、の……はした、ない…・……女、です…」
咲夜のその言葉を聞いて魔理沙はさっき体の奥から味わった悦楽の正体がはっきりしたと思った。
自分以外の女の秘所を弄ったのはこれが初めてのことだったが、こうして他人の体を嬲り、羞恥心を煽って興奮するのが己が嗜好なのだと魔理沙は納得する。
「…中々素直だな。よぅし、とりあえずはお預けだな。まずは私の体を洗ってもらうのが先だぜ」
魔理沙は咲夜の秘所から指をどけた。指には咲夜から溢れた愛液がついていたので、魔理沙はそれを舌で舐め取った。
「…しょっぱいな」
そう言うと咲夜は恥ずかしそうに顔を下に伏せるのだった。
「…さて、お湯はそっちの蛇口から出るぜ。石鹸はそこにあるやつな」
魔理沙はそれぞれの場所を指で差す。咲夜もそれにすぐ応じ、シャワーから適度な温度のお湯を出すと左手で魔理沙の頭からシャワーをかける。右手では石鹸を泡立てていた。
「…どこから洗いましょうか?」
その問いに魔理沙は自分の秘所を指差すことで答えた。
咲夜は無言で承知し、石鹸を泡立てた右手を魔理沙のそこに這わせた。
「…んっ……汚れが、とれるまで…な」
はいと返事をし、咲夜はデリケートな秘所を傷つけないよう丁寧に指の腹で擦り始める。
たまらず魔理沙は声を上げた。
「ひゃっ……んぅ…あぁぅ…もっ、と…早く…ふぅ…ぅ」
命令に従い、咲夜は指の動きを胡麻を擂るように早く、力強くしていった。
「ぁぁああ……ふぅ…くぅぅ…咲、夜……もっと…もっと…早く…だ…汚れ、が…落ちない…ぜ」
咲夜は魔理沙のデーデルライン乳酸菌を洗い流しすぎやしないかという不安に駆られたが、魔法でどうにかなるかもしれないと思い直して、自分の右手の時間の流れを三倍速にしてみた。
と、次の瞬間―――
咲夜は自分の右手に生暖かいものがかかるのを感じた。
「…んんん……あっあっ…ぁぁぁああぁあああ」
魔理沙は生まれて初めての絶頂を迎えて、あろうことか失禁してしまったのであった。盛大に声を上げながら、じょぼじょぼと魔理沙の尿道口から出る黄色いそれは排水溝へと流れていく。
やがて出し切ったかと思われる頃、魔理沙はあまりの刺激の強さに気を失っていた。
咲夜はやりすぎたかなと思いつつ、魔理沙と自分の体を綺麗に洗い終えた後、勝手を知らぬ霧雨邸の寝室を二階で見つけ、魔理沙をそこへ寝かせた。
*
…何だか軽い罪悪感を覚えた。いくら私が霧雨魔理沙よりも幾分かそっちの方の知識を持っているとはいえ、まだそういうことに興味を覚えたばかりの少女をイカせてしまい、かつ気絶させてしまうとは。気絶までした本人が望んだこととはいえ、多少大人気なかったという気がしてならない。
…私はベッドであどけない顔をして気絶したまま睡眠に移行してしまった少女を見つめながら微笑した。何となく手のかかる妹を持った気がしたからである。そして振り返ってみれば、私はこんなにも長い時間人間と一緒に時間を過ごしたのは、今日が数年来のことだったということに気付いた。
…なんだ、私もこうしてきちんと人間と仲良く出来ているではないか。多少違う意味の仲良くではあったが、霧雨魔理沙は私のことを特異な人間だと煙たがったりはしない。それは彼女自体も魔女をやっているという変わり者だからなのかもしれないが、何か新鮮だった。しばらく彼女と一緒に暮らすのも悪くはないと思い始めている自分がそこにいた。
霧雨魔理沙、いえ魔理沙はもう次の日まで目覚める様子は無かった。
私は魔理沙を起こさないように隣で寝ることにする。
そういえば、人間と一緒に寝るのも数年ぶりのことだった。
*
次の日、私は紅魔館にいたときと同様の時間に目を覚ました。
染み付いた癖というものは中々抜けないのだなぁと苦笑した。
―――ドタドタドタ
ちょうど朝ご飯の仕込み(食糧は勝手に拝借)をしているときに上から騒がしい音がする。魔理沙が目を覚ましたのだろう。ひどく慌てているような感じだが、どうしたのだろうか?
ほどなくして魔理沙がキッチンにやってきた。
「…さ、咲夜。昨日は、その、悪かった…な」
どういうわけか魔理沙に昨日の元気がなかった。そんな魔理沙に私は従者として答える。
「…おはよう御座います、ご主人様。朝ご飯は召し上がられますか?」
魔理沙は首をぶるぶると振るった。低血圧なのだろうか。
「いや、その、もういいんだ。頼むからいつものように話をしてくれないか?」
昨日の口ぶりはどこへやら、魔理沙はさもバツの悪そうな顔をしている。そんな魔理沙に私は十六夜咲夜として答える。
「まあそういうことなら…。っで、どうかしたの?」
「いや、その、な。ついさっき、パチュリーが私の部屋に来てだな、事のあらましを全部教えてくれたんだよ。たぶん、間違いないって」
……魔理沙の口ぶりから嘘ではないことが分かる。恐らくパチュリー様はあのあとすぐ私がやったことの真意を掴んだのだ。
「……………」
私は黙って魔理沙の話を聞くことにする。
「その、咲夜が盗み聞きしたことは別に悪気があって言ったんじゃなかったんだよ。あの永久機関の製造法が書かれた本とパチュリーの錬金術を組み合わせて食事いらずの完璧なメイド型人工生命体を作るって話。それが出来れば、その、咲夜は紅魔館に必要なくなるって―――」
私はつい昨日盗み聞きした言葉をもう一度頭の中に反芻した。
―――この永久機関の理論を応用すれ完璧なメイドができるぜ。
―――その理論がきちんと錬金術と組み合わせるとすれば、間違いなくね。
―――そうさ、これで口うるさい人間のメイドなんて紅魔館には必要なくなるぜ。
―――でも咲夜は本当によく尽くしてくれているわ、そんなこと…。
―――体に悪いからあんまり本を読み過ぎるな、なんて言われてもか?
―――それはそうかもしれないけど、だけどあれは私のことを思って……。
―――まーそう言わずにさ、やるだけやってみよーぜ? 案外上手くいくかもしれないし。
―――探究心を満たすためなんだったら付き合うわ。
ショックだった。例え冗談にせよ何にせよ、私は再び見捨てられることを味わうことになるかもしれないと思うと気が気ではなかった。
…だったら、そんな可能性を持っているものは根本から潰してしまおうという短絡的な発想に行き着いたのだった。レミリアお嬢様も、フランドール様も、パチュリー様も、門番だって私を見捨てたりはしないだろう。それでも、あの迫害の日々を思い起こすとそうせずにはおれなかった。私は怖かったのだ。
「――で、だな。これだけははっきり言っておきたくてな。悪気はないとは言うものの、半分は冗談で半分は本気だったんだぜ。その…分かるだろ? つまり、だな、もし私とパチュリーの実験が成功していて、咲夜が紅魔館からお役御免になったら、そのときは…咲夜にうちに来てもらいたかったんだよ……」
ひどく弱々声で魔理沙はそう言った。あまりにも意外なことに私は驚いた。
とすると、昨日の魔理沙が私に強要したことはそっくりそのまま魔理沙の私に対する愛情の裏返しだったということになるのだろうか?
「…それで、昨日は本を滅茶苦茶にされたときにあれだけ怒ったんだよ。咲夜がうちに来てくれることになるかもしれないってのに。それを当の本人にオジャンにされたんだからな。……でも、結果的に咲夜がうちに来てくれることになって私は嬉しかったんだ、ぜ……。まぁ、昨日はその、怒ってたのもあるし、いきなりとんでもないことやらせて、……ごめん、な」
それから私は魔理沙を抱きしめた。どんな言葉を紡ぐよりも、こうしてやったほうが今の彼女にとっていいだろう。魔理沙は涙を流しながらごめんな、ごめんなと何度も言った。
「いいのよ、もう。それにしてもどうしてパチュリー様は私が計画的に本を駄目にしたことを見破られたのかしら? 不自然さを無くすために時間も止めなかったのに…」
私は魔理沙の頭を撫でながら話に聞いていて不思議に思ったことを聞いた。
「…ぐすん、それはな、紅茶の温度が温すぎたからだってさ、『咲夜が冷えた紅茶を持って来るはずがない。完全で瀟酒な従者たる彼女にそんな落ち度があるはずがない』って、信頼されているんだな、咲夜は…。そっから咲夜が部屋に入ってくる前に話していた話題と咲夜の過去のことを照らし合わせて……ってわけさ」
なるほど………確かにあのとき私は魔理沙やパチュリー様が火傷をしないように紅茶の周りの時間だけを何十倍にも早くして、冷ましていたのだった。
「そう…だったの。でもいいのよ、あなたの気持ちとてもうれしいわ。こんな私でも人間に必要とされるなんて、夢にも思わなかった……」
「私も咲夜がそう言ってくれて、うれしい…ぜ。でも、私は…やっぱり紅魔館を一人で切り盛りしている咲夜が好きなんだ…。パチュリーにはもう咲夜が紅魔館に戻れるということをレミリアに伝えるように言ってある。だから……んんっ」
私は魔理沙の唇を塞いだ。魔理沙が次に口に出すであろう言葉が容易に想像できたからだ。
しばらくそうしておいてから、おもむろに私は魔理沙から唇を離す。
恍惚の表情を浮かべてご満悦といった魔理沙に私は言った。
―――それよりも、朝ご飯にしない?
初ネチョということもあり、読み手の方も何だこりゃ? という感想を持った方が多いと思います。
それでも読んでくださった方有難う御座います。
作者的に何か違うんじゃないか? という点を箇条書き。
①魔理沙 × 咲夜なのに結局どっちが攻めで受けか分からない。
②怒っていたとはいえ魔理沙の口調が悪すぎる。
③魔理沙の咲夜への思いが唐突すぎる。
④ネチョシーンがネチョくない。
⑤落ちが弱い
⑥むしろいろいろと弱い
とりあえず今回の分は、次回以降の肥やしにでもなってくれればいいかなと。
リクは某所の某無名氏にいただきました。
従順な咲夜がほとんど書けてなくてごめんなさい…。