しっぽだいすき。



 ようやく紫様から言いつけられた用事を片付けて、家に帰ってこられた。

「ふうー」

 玄関に入る前に一度身だしなみを整え、帽子を被りなおす。

「よしっ」

 普段から橙には身だしなみに気をつけるように教えている以上、疲れているからといって、だらしないところを見せるわけにはいかない。

「ただいま〜」

 扉を引きあけ、ただいまの挨拶をする。

 —————————————————————、あれ? おかしいな?

いつもなら、扉を開けたと同時に橙が飛び出してくるのに。~


「ただいまー」

 もう一度、奥に向かって呼びかけてみる。
 それでもしんとしたままで、一向に橙が出迎えに出てくる様子はない。

「おーい、橙ー。いまかえったよー」

 仕方がないので橙の出迎えを待つことなく家の中に入る。
 

 待ちくたびれて寝てしまったのか? 、と思いながら居間に行ってみた。

「橙? 」

 いない。

 居間の中はまだ直し忘れたこたつと、その上に載ったみかんの入ったかごだけで橙のいる様子はない。

 うーん、ここにいないとしたらどこにいるのか?

 橙には、大きくなるまでは一人で夜は出歩かないと約束してるから、勝手に出かけるとは思えないし。

 だから、うちの中にはいるはずなんだけど……。

 ほかに橙の行きそうなところは——————————————、そうだ台所。

 今の時間、いつもならとっくに夕飯を食べているはずの時間だから、待ちきれなくてつまみ食いしてるのかもしれない。

 橙がこっそりつまみ食いしている様子を脳裏に思い浮かべながら台所に向かう。

ガラガラガラッ——————————、一息に扉を開ける。

「コラッ、橙、盗み食いはいけな……、いぞ…………」

 勢い込んでみたものの、台所の中は誰もいない。

「橙……」

 がっくり気をおとしながら他の場所を探すことにした。


 寝室。

 やはり橙はいない。

「橙……」


 押入れ。

「橙…………」


 厠。

「橙………………」


 客間。

「橙……………………」


 あきらめ切れずに家中の部屋を捜しまわるが、橙の姿は見当らない。

「橙……、どこに行ったんだ? 」

 もう家の中をさがすのをあきらめて、外を探そうかと玄関に向かいかけた途中、物音を耳にした。

「———————————!? 」

 物音の聞こえてきた扉の前で足を止める。

 まさか……、ここはないだろう……。
 確かにここだけは、橙がいるはずがないと思って探しもしなかったけど……。

カランッ、コロンッ。
 狭い空間で心地よく反響する、木製品同士がぶつかりあう小気味の良い音が聞こえる。

 信じられない思いで脱衣所の中に入ってみると、橙のお気に入りの服が脱ぎ散らかしてあるのが目に入った。

 まちがいない、お風呂に入っているのは橙だ。

 この赤い服は私が自分で橙に作ってやったものだから間違うはずも無い。

 ほんとに橙が一人でお風呂にはいってるのか?

 一度自分で結論を出してはみたものの、やはり信じられない思いを捨てられないまま、震える手で扉に手をかけた。


 おそるおそる風呂の扉を開けての覗き込んでみると、橙は風呂桶のへりにあごをのせてのんびり湯につかっていた。

 橙がお風呂に一人ではいってる……。
 脱衣所に橙の服が脱ぎ捨てて合ったからもしやと思い覗いてみたが、本当に一人でお風呂に入ってるなんて……。

 帰ってきたときには思いもよらなかった事態に驚いて、風呂の扉から顔だけを突き入れた状態で固まってしまった。

 ぶるぶるっ、扉から入る冷たい空気で体が気持ち悪いのか身震いをする。不機嫌そうな表情で半眼をあけて、こちらを見た。

「橙…………」

 ん? と一瞬だけ私が誰だかわからないような表情を見せたあと、一転して笑顔に変わる。

「あ〜、藍さまぁ〜。おかえりなさーい」

 元気よくおかえりの挨拶をしながら、風呂からとびだしてきた。

「…………」

「藍さま。ただいまのあいさつは? 」

「ただいま……」

「おかえりなさい、藍さま。どうしたのきょうははやくかえるっていってたのに、おそかったね」

「ああ……」

「ん? どうしたの藍さま、おなかへってるの? 」

 心配そうに見上げる橙。

「い、いや……。そういうわけでは……」

「へんな藍さま。どうしちゃったの」

「ああ……」

「へんなの。それより藍さまがとびら開けっ放しだから寒くなっちゃた。もっかいお湯につかろっと」

 くるっと後ろに向き直り湯船に向かう。

「橙。どうして一人でお風呂に入ってるんだ?」

 ようやく最初の衝撃から開放され、何とか疑問を口にする。

「なにいってるの藍さま。橙だってもう子供じゃないんだから、お風呂ぐらい一人ではいれるよー」

「けど昨日までは一緒に入ってたはずじゃないか」

 なんだか、橙に子供じゃないって言われると、妙にさびしくなって拗ねたような口調になってしまう。

「んー、それは昨日のことなの。今日からは橙はもうおとなだから一人でお風呂にはいるの」

「だけど……、そんなにあせらなくても橙はまだまだ子供じゃないか」

 あんなにお風呂が嫌いだった橙が一人で入るって言ってるんだから、ほんとは褒めなきゃいけないのに……。

「もー、藍さままで橙のことこどもあつかいするー。とにかく橙は一人でお風呂にはいれるようになったからおとななの。もうチルノちゃんやルーミヤちゃんにもばかにさせないんだから」

 子供らしいちょっとした見栄の張り合い。それは分かってるのに思わず問い詰めてしまう。

「けど、ちゃんと体は洗えたのか? 頭は? いっつも目に石鹸入っていたいいたいって言ってたじゃないか」

「ちゃんとあらったもん。頭も体も、ちゃんとあらったもん」

「ほんとに? 」

「ほんとだもん」

「うーん」

 思わずなやんでしまう。ここまで橙がやる気になってるのにあまりしつこく絡むのも大人気ない。

 しかし、昨日まではお風呂に入るのも嫌がり、体を洗うのも今まで一人でやったことがないのも事実だ。どうやってやる気なくささずにきちんとしたお風呂の入り方を教えたものだろうか?
 
 しばらくの間、名案がないものか考えてみた。

「橙。ちゃんと体洗えるようになったいったな? 」

「うん、橙、ちゃんとあらった」

「ふーん、じゃあ、私が調べても汚いところはないな? 

「うん、ちゃんとあらったもん」

 調べられると聞いてちょっと不安になったのか、うつむきかげんで返事する。

「よーし、じゃあ、服脱いでくるからそこで待ってなさい」

「はーい」

 大人しく橙が椅子に腰掛けたのを確認すると、脱衣所へと向かった。



「あっ……、ふぅん……、藍さま…………、まって……」

「どうした橙? 」

「あぁぁん……、ふぅん……」

 お風呂場のなかで橙のかわいい声とシュッ、シュッ、とこすれあう音だけがひびく。

「ぅぅぅん……、藍さま……、藍さまぁ……」

「だから、どうしたんだ? 」

「ぅうん……、だって、こんなの…………、つらいよう……」

「でも、橙がここ、ちゃんと洗わないから仕方ないだろう」

「うん……、でも……、ちょ、ちょっとだけでいいから……、おねがい……やめて……」

「橙。橙はもう子供じゃないんだろ? じゃあ、つらくても耐えないと」

「………………」

 ほんとうにつらいのか下唇をかみ締めて、必死になって声を抑える橙。
 自分の意思で絶えていられる間は大丈夫とみて、少し力を入れることにする。

「…………………………あっ、…………………………………くっ、……………………………………………ぁあ」

 時々声はもれてしまうみたいだけど、がんばっている橙。

「ふぅん……………、くぅ…………………………、ふっ…………………」

 これぐらいだとまだ平気か? 
 巻きつけていた尻尾を緩め、今まではいっぽん調子だったのを強弱とリズムをつける。

「あぁっ………………、くぅん……、ぁ……、あっっ……、あっあっあっあっあっ………………、あぁ…………」

 敏感なところを責められたせいか、橙のここはすっかりカチカチに固くなってしまっている。

「ぁぁぁあ、……………………………っあぁ、……あっあっ、……………………………ぁぁあぁあぁ」

 いったん止めて橙の力が緩んだのを見計らうと、今度はいっきに力を入れてこする。

「ふぁぁっぁ…………、ら、藍さま…………、も、もう……ぁ、橙……、たえられないようー」

 椅子からころげおちて四つんばいのまま逃げようとする。

「こらっ、にげるなっ」

 絡ませていた尻尾で強く橙のしっぽをにぎると、とたんに橙の力が抜けてお風呂の床にひざを突いて倒れこんでしまう。

「こらっ、橙。まだしっぽ洗ってる途中なんだから、逃げたらだめじゃないか


「だって、橙、もうがまんできなかったんだもん」

 なおも逃れようと手足をばたつかせる。

「どうして逃げるんだ? しっぽ洗うなんていつものことじゃないか? 」

「ちがうよ。いつもは藍さま、もっとやさしいもん」

「そうかな? 」

 返事しながら、また洗うのを再開する。

「あっ、ひぃん—————————」

 いきなりで驚いたのか、橙が身を硬直させる。

「あっあっあっ、らんさま……、どうして……、こんなの……、あっあっ……、こんなのないよぅ」

 シュッシュッとふたまたのしっぽに絡み合わせた私のものでしごきあげると、橙は面白いようにリズムに合わせてあえぎ声を上げる。

「だってしかたないだろ、これが大人の尻尾の洗い方なんだから。橙ももう大人なんだから我慢しないと」

「あっ……、そんなぁ、ぁあっ……」

 橙はなおも逃げようとするが、力を入れた瞬間にあわせてギュッと握ってやるので、逃げようとすればするほど体の力が抜けていくことになる。

「橙、いいかげん逃げるのあきらめたらどうだ? 」

 少しだけ力を抜いてやって諭すように話しかける。

「でも……、橙、つらいんだもん……」

「な、橙。もうちょっとがまんするだけだから……。がんばらないか」

 いやいやする橙。

「いやなのか? 」

 こくんとうなずく橙。

「そうか……」

 目の端に涙をためてもう一度うなずく。

「でもだめだ」

「!!!!!!!!!!!!」

 ビクリとする橙。

「ここまできたらもう少しで気持ちよくなるはずだからそれまで我慢しなさい」

 一方的に宣言する。

 今までは一本のしっぽに対して一本の尻尾を絡めていたのを、残りの尻尾も絡ましていく。

キュキュキュ、キュル。

 右のしっぽに四本、左のしっぽに五本の尻尾をそれぞれ巻きつける。
 左側だけ一本多いがしかたない、私の尻尾は九本というこういう場合にはひどく中途半端な数なんだから。

「………………ぁぁあ、………………ぁ、ああ」

 私がしっぽに巻きつけるのを、床に伏せたまま震えて見詰める橙。
 あまりの恐怖からか顔色をなくし、歯の根も合わなくなって言葉を発することすら出来なくなっている。


 ゆっくりゆっくり尻尾を再び動かし始める。

 今度は先ほどとは違い全ての尻尾を使っているので、ただ単純に上下に擦りあげるだけじゃなくて、別々の動き取ることができる。

「あぁっ……、あぁぁぁ——————————、あっあっあっ————、あぁぁ————、あっ———————————————」

 橙はもうどうしてよいか分からずに、私の尻尾の動きに合わせて身をよじってあえぎ続ける。

「あっあっあっあっ————、あぁっぁあっあっあっあっ————————、あぁぁあっっ————」

 一本は上下に単調に擦り、また一本は締め付け揺るめを繰り返しながら擦り、さらにもう一本は軽く振るわせ振動を伝えながら擦りと、全ての尻尾ごとに責め方を変えながら擦りあげる。

「あぁぁぁ、ひ、っぁぁぁああぁ——————、あっあっあっあっ、————ひぃん、ああ、」

 責めにあわせて橙もあえぎ方が変わるので、どの尻尾が橙に一番刺激を与えてるのか、次々いろいろ試しな責めてみる。

「あっ、———————ひぃん、———————————————ひぃゅぅい、ぁぁあっ————————」

 紙縒りをよじるかのように何本かの尻尾ではさんでねじりあげると背筋ををそらし、両足をピンッと伸ばし腰を中空たかく突き出す。

「ふふっ、橙はこれが好きなのか? 」

「————————————————————————————ひぁゃぅぅ、—————————————————————ひぃぃゃぁぁぁあぁぁ」

 ゴリッィと二本の尻尾で挟み込んでねじりながら擦りあげる。

「———————————————ひぃぁぃう、———ひ、———————ひゃ、——————————————ひゃぁぁう」

 橙は逃げようとかわいいお尻を振ってみるが、こちらから見るとまるでもっとしてとおねだりしてるようにしか見えない。

 あまりに橙が必死なものだから、思わずからかいたくなってしまう。

「橙、そんなにこれが気に入ったのか? うんうん、それじゃもっとしてあげるからな」

 勝手に結論付けると、さらに力を入れ擦る。

「ち、ちが、—————————————————ひぃぁぁぁぁぁぅあうあうあぁぁ」
 ちがう、やめて、それさえ言うことができずに伸ばしきった足をがくがくと今にも力が抜けて倒れそうになながら、もはや悲鳴にも聞こえるあえぎ声を上げる。

「———————————————————————————————————————————————————————ひぃぅゃぁぁぁぅうぅあううああう」

 悲鳴をあげながらもだえる橙を見てると、なにかが気になる。
 なんだろう?
 しばらく、じっと橙をみながら考える。

「ん? 」

 あることに気付いていったん動かしていた尻尾を止め、橙に話しかける。

「橙、ちゃんと体は全部あらったと言ってたな? 」

「…………………」

「橙」

「………………………………」

 はあはあと息を荒げて、返事をしない。

「橙」

 しっぽをぎゅっと握ってよびかける。
 
「ひぃう」

「橙。ちゃんと体はぜんぶあらったんだな? 」

「あらった、あらった、あらったよぅ」

 視線をあわさず、あわててこたえる。

「ふーん。じゃあ、ここもか?」

 四つんばいになってこちらに突き出している、お尻の穴に指をあてる。

「あっ、藍さまぁ、そ、そこ……、だめだよぅ……」

「どうしてだ? 」

「だって……、藍さ……ま、まえに……、そこはさわっちゃだめっていったもん……」

 やわらかく円を描いて、入り口を指で撫でる。

「あっ、藍さま……ぁ、さわっちゃ、だめぇ……」

「そうだったかな? 」

 とぼけてみる。
 そう、たしかに橙がいったとおりにお尻とおしっこの穴は触っちゃだめ、と教えてた気がする。

「でも大丈夫だ。今は体の洗い方を教えてるだけなんだから、そういう時は触ってもいいんだぞ」

「ふぅぅぅん、あん……、でも……、でも……、藍さまぁ」

「あと、お尻だけじゃなくておしっこの穴もちゃんと洗わなくちゃな」

 手を前に回して、ゆっくりとスジに沿わせてゆっくり上下させる。

「ぁぁぁん、藍さま……、だめだよぅ……、そこ、さわっちゃだめぇ」

「いいんだ、橙。しっかり洗ってあげるから大人しくしてるんだぞ。もし暴れたりしたら怪我するかも知れないぞ」

 怪我するかもしれないといわれて、あわてて逃げようとしていた姿勢をもとにもどす。

「ほら、おしっこの穴はこうやって石鹸を手につけて、ゆっくり上下に動かして洗う」

「ん…………、あっ…………、んんぅん……………」

「ほら、聞いてるのか? 」

「う……ん……、うん…………、きいてる…………」

 返事はするものの、ぼーっとしたどこかうわの空の返事。

「あと、お尻の穴は指の先におなじように石鹸を縫って、こちょこちょくすぐるみたいに洗ったらいいから」

「はぁっ…………、んっ…………、う……、うん……、わかった……」

 しばらくそのまま洗い続ける。
 手を動かすたびにヌチュッヌチュゥッと橙のあそこが石鹸の着いた手に吸いつき音をたてる。

「んん、藍さまぁ……、まだ……、あらわなきゃいけないの? 」

「ん? まだだな、ここはほかのところよりも大事な場所だから、ゆっくり時間かけてあらわないといけないから……」

「ん、あっ……、そ……、それなら……、あっぁぁ、ぁん、藍さま……、もっと……、あらって……」

 私の説明に嫌がりもせずにもっと洗ってとおねだりする橙。

「ん? 橙。もっと、洗ってほしいのか? 」

「うん、あらってほしい……」

 おねだりする声は普段の橙からは考えられない甘さをふくんでいる。

「うぅ……、ん…………、ぅぅん……、あ、あっ……、…………ぁぁあ、ん、あん…………」

 うっとり甘い声を上げながら、手に股間を擦り付けてくる。

「ぁぁん……、ん、ぅうん……、………………んっんっ、っん」

「橙、気持ちいいのか? 」

「わかんない…………、わかんないけど…………、ん、ぅんぅぅう……、なんだか……、わかんないよう…………」

 これが気持ちいいものだとはわからないけれど、なぜだかもっとしたい、それだけは理解しているみたいだ。

「それじゃ、いまどんな感じか言ってみるんだ」

「うん、あっ……、うぅん、えっと……、おしっこの穴とウンチの穴がむずむずして、ゃあぁん、ぁぁあ…………、じんじんして……、あたまと……、んっっんっ、せなかとしっぽがぞくっとするの………………」

「それだけか? 」

「ぃぃん……、あぁぁん、くるしくってやめてほしいのに……、もっといっぱいむずむずしたくって……」

「ふん? 」

「それで、なんか……、キュッて、せつなくてせつなくて……たまらないの…………」

「そうか……」

 いままでは表面だけを優しくなぞっていたのを、少し乱暴に穴の入り口に埋め込んでみる。

「あっ……、ぁぁぁあぁ、ぁぁ……、ぁっっ」

 橙の穴は柔軟に指を受け入れ、入れるたびにキュンキュンしめつけてくる。

「くぅ、くぅぅん、あっ……、藍さまぁ……、なんか……、ピリッて来たよぅ…………」

 ほんの指先だけの浅い入れ方だが、それでも橙には十分刺激的みたいで先ほどよりも良い反応をみせる。

「あっ、あっ、あぁん、なんか……、ジンジンがからだ中にきて…………、ぁっ、っぁぁっあ」

 ビクビク背中を震わせる。よく見ると体中に鳥肌が立っている。

「あっ、藍さまぁ……、おしっこ、おしっこの穴がぁ……、なんか……、なんかくるよぅ」

 それがたまらないのか首をすくめ苦しそうにする。

「橙…………。今楽にしてやるからな」

 橙を上りつめさせるために、ふたたびしっぽを責めることにする。

「———————————ひいっぃぃ、——————————だめぇ、————らんさまぁ、それぇ、それだめぇ——————————————」

 一番感じていた尻尾をしぼりあげる責めに、また悲鳴を上げはじめる。

 だが先程とは違いたんなる悲鳴ではなく、どこか陶酔した色のまざったなまめかしい牝の音色

「だめ———、だめ———、だめ———、だめ———、あ、だめぇ—————————————————」

 口では嫌がってみせるものの、股間を手にすりつける動きはますます激しいものになっている。

「—————————————————ひぃ、———————————ひゃいっぁぁ、—————ぁぁ、いやっ、だめぇえ————————、らんさまぁ、だめぇ————————、橙だめぇ——————————、きちゃう、きちゃうぅぅぅぅぅぅぅ—————————————————」

 股間の石鹸は激しく擦り付ける動きにあわ立ちぬめり、手をますます橙のあそこに吸い付かせる。

「橙、そのまま……、そのままその感覚に体を任せたらいいから……」

「あっ、————————————————ひゃぁん、らんさま、ぁぁあん、橙、だめ、こわれる、こわれちゃぅぅ—————————————」

 こちらの言うことも耳に入らず叫びながら、つめを風呂の床にめりこませ、襲ってくる未知の感覚にひたすら耐え続ける橙。

「ぁあぁっぅあぅあ—————、ぁぁあっっっ———、あっあっ—————、———————————————————————ひぃぃゅひゅぅいいぃぁぁあ、くる、きちゃぅぅ—————、きちゃううぅうぅ———————————、だめへぇぇええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇあぇぁえぇえあ————————————————————————————————————————————————————————————————」

 大きく悲鳴をあげると同時につま先立ちで身を支えていた両脚から力がぬけ、床に倒れ伏す。

「あっ、ぁぁ、ぁ、ぁぁ」

 開いたままの口からは力なくうめく声と唾液がひたすらもれ落ち、体中が時折ひくっひくっと痙攣する。

「橙? 」

「ぁぁ、ぁぁぁ、ぅぁぁ」

「大丈夫か? 橙?」

 あわてて力が抜けて垂れ下がるしっぽから尻尾をはずして、床にうつぶせでうめいてる橙の肩をゆする。

「ぁぁ、ら、らんさま……、ぁ、ぁぅ、ちぇ、ちぇんね……、すごくなんかすごくて、もうからだがビリッって、きて、あたまのなかとしっぽが、なんだか、ぐちゃぐちゃになって」

「わかった、わかったから、橙。とにかく今は休め」

 自分がしたことなのに、今の橙の状態を見ると後悔で胸がくるしい。

「それで、それでね、体がふわーってなって、ぐるぐるってなって、なんか気持ち悪くて気持ちよくて、それで、またしたくて、それで、えーっと」

「橙、今はもうは話さなくていいから……」

「それで、えーっと、またしたいけどまたしたくないから、ひとりじゃできなくて、だから、またらんさまとおふろ」

「わかった、わかったから」

 とにかく橙に大人しくしてもらいたくて、ひたすらうなずき続ける。

「じゃ、約束だよ」

 それだけつぶやくと目と閉じる。

「橙?」

 覗き込むともうすーすーと気持ちよさそうに寝息を立てていた。



 お風呂で疲れきって寝てしまった橙を、寝間に運び込みそっと布団に降ろした。

 大変な一日だったな。改めて振り返って見るとほんとに長くて一日のうちに起きたこととは思えない。

 寝具に身を横たえさせ、隣の橙の体を尻尾の中にくるみこむ。

「う……ん……? 藍さま? 」

 その感触で目がさめたのか橙が呻き声を上げる。

「藍さま」

九本の尻尾につつまれ、うとうとしながらも橙が話しかけてくる。

「うん?」

「藍さま、きょうすこしいじわるだったよ」

「そうかな? 」

「そうだよ」

 そうかもしれない。
 少しだけ成長した自分の知らない橙をみてしまい、なんだかさびしくなって思わずいじわるにあたってしまった。

「そうか、うん、そうだな。すまなかったな」

「そうだよ。藍さま、いじわるだった」

 すねた声で私を責めながらも、しっぽを私のにキュッとまきつけてくる。

 顔では怒ったようにしているが、体は思わず甘えてしまう。そんな橙をかわいらしく思う。

「じゃあ、もう私とはお風呂に入らないのか? 」

「んー? どうしよっかなー」

 ギュッと握ったしっぽに力を入れて、起き上がり私の顔を覗き込む。
 ふくれつらをして見せてはいるが、目はキラキラと輝き、ほほは紅潮している。

「そうか、橙はもう大人だから一人で入れるんだったな、たしか」

 橙の表情からまた一緒に入るつもりなのを見て取ると、反対のことを言ってみる。

「んー? 」

 とたんに橙の顔がくもる。

「ごめん、ごめん、大人の橙には悪い質問だったな」

「もう、藍さま、わかってていじわるしてるでしょ」

 キュキュとしっぽでしめつけながら怒る橙。

「ごめん、じゃ、これからも一緒に入るんだな? 」

「うん、藍さまを一人でお風呂にはいらせるなんてかわいそうだから、橙が一緒に入ってあげる」

「あはは、ありがとう、橙」

 大人ぶって見せる橙にここは大人しく従うこととにする。

「ねえ、藍さま……」

 胸元に身を摺り寄せ、顔をうずめる橙。

「また、今日みたいに橙のからだあらってくれる? 」

「ああ」

 意外な橙の言葉にとまどいながら返事する。

「あーあー、はやく橙も一人でからだ洗えるようになりたいなー」

 胸にほお擦りしながらどこか楽しそうにつぶやく。

「ああ、もうちょっとしたら、橙は何でも一人でできるようになるよ」

「そっかー、藍さまがそういうんだったらそうなんだろうなー」

 たまらなくなって橙をぎゅっと抱きしめる。

「藍さま、いたいよ……」

 返事せずにただ抱きしめつづける。

「ほんと、今日の藍さまはへん」

 今はまだ橙が一人立ちする時期じゃない、でも将来きっと一人立ちするときがくる。そのとき私は耐えられるだろうか? 胸の奥に痛みを感じながら橙を抱きしめ続けた。

「ほんと、へんな藍さま……」







 了

—————————————————————————————————————


橙は水に弱い。

ということは橙の脳内では、

水が平気になる=大人なった

になってるに違いないと思い、橙がお風呂に入ってるシーンを書きました。


あと藍は橙にエッチなことをしている意識は全くありません。
本人は大真面目に教育してるつもりです。

ちょっといじわるなのは、橙がひとりでお風呂にはいるという成長を見せられて拗ねてるせいです。

書いた人 奈利





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