書いた人:オサキ狐
 
 今回は、ルナサ×妖夢です。
 ちょっとグロ?っぽいような感じがしなくもないシーンがありますが、ものの数行で終わるのでたぶん気にも止められない程度のものだと思います。
 ネチョ具合は書いて読んでみた結果、かなり低いことに気付きました。
 以上の点を踏まえてお楽しみくださいませ( ゚∀゚)

 ちょっとルナサにサイコ入ってますが、一応理由あり。















  私は恋をした。
 騒霊としてこの世に生まれてから初めてのことだった。
 その思い人に出会ったのはもう随分と前になる。
 伝統のある冥界の西行寺家のお嬢様に演奏の依頼を受けたのが切っ掛けだった。
 そこで私は一人の少女に恋心を抱いた。
 
 彼女の名前は魂魄妖夢といった。半分人間で半分幽霊という不思議な存在で、西行寺家で庭師をやっている。加えて彼女は一流の剣士でもあった。
 幽霊でもあり、人間でもある、庭師でもあり、剣士でもある。私はそんな彼女のアンバランスさというか、相反する二つの性質めいたものに惹かれたのだ。
 
 幾度も宴会の席に呼ばれる度に私の妖夢への思いは募っていくばかりだった。
 そのうちに、長年連れ添ってきた勘のいい妹たちに、私が妖夢に心を寄せていることを気付かれてしまった。てっきり馬鹿にされるかと思ったが、案外に二人とも協力的だった。
 躁病の気のある次女は「あははあは」と私を励まし、調子のいい三女は「姉さん、ヤッちゃいな」と焚きつけてくれた。
 
 とりあえず三女にはゲンコツを一発くれてやったが、後でそれもいいかもしれないと思い直した。
 

 *


 白玉楼に咲き乱れていた桜ももうすっかりと影を潜めていた。無理矢理春を維持し過ぎたために、その反動が一挙にきたのだろう。
 来年もまた咲いたらいいな、と半分幻の庭師、魂魄妖夢は思った。
 今、白玉楼はちょうど夜分であった。まだ桜が咲いていたのなら、さぞ見事な夜桜が鑑賞出来たであろうが、それももうない。すっかり寂しくなった夜の白玉桜の広大な庭を散歩しながら、妖夢はやがて近くにあった切り株に腰をつける。見栄えが悪かったので妖夢が一閃のもとに切り倒した木のものだった。
 今宵、月の明度は気味が悪いほどに明るい。しかし、それ故に美しくもあった。そんな奇妙な月を仰ぎ見ながら、妖夢は何か不吉なことが起こるのでは? という予感をする。それは数日前の巫女だの、魔女だの、犬だのが春を取り戻しに来たことよりもずっと不吉なことだと妖夢は感じた。
 
 ―――こんばんわ。

 突如背後から声を掛けられて妖夢はハッとする。誰かの気配を察知することすら出来ないほどに月を見入っていたからだ。やはり今宵の月はどこか不吉だと妖夢は思う。これが実戦であるなら殺られていたと妖夢は舌打ちをした。
 念のために腰の楼観剣を手にかけながら後ろを向く。その先に見えた相手が見ず知らずの者だったらそのまま居合で一瞬の元に切り捨てるつもりだった。
 しかし、妖夢の心配をよそに、目先の相手は何度も会ったことのある者だった。騒霊三姉妹の長女、ルナサ・プリズムリバーである。交流のある彼女のことをすぐに気付けなかった妖夢は己の修行不足を呪う。同時に、ルナサに申し訳ないとも思った。
 「…ごめんなさいね。一瞬誰か分からなかったものだから」
 妖夢は一応弁明する。意味もなく刀で切り付けられそうになったら誰だって気分を害するに違いないと思ってのことだった。
 「いや、私が後ろから話し掛けたのがいけなかった」
 ルナサは特に気にした風でもなくそう言った。その受け答えを聞いて妖夢はほっとする。
 「それにしても、今日は珍しいわね。あなたが一人でいるなんて」
 妖夢が言う通りに、今日は陽気な次女も常に何か企んでいそうな三女もいなかった。ルナサも一人で夜の散歩かしら? と妖夢は思った。
 「私にも偶には一人になりたいときくらいある。妖夢にだってそういうことあるだろう?」
 「それはまぁ、そうね。いつも一人は嫌だけど、偶にはね」
 今日の妖夢は何となくそんな気持ちで夜の西行寺家の庭園を散歩していた。そうしたら、似たような心持のルナサも散歩をしていたのだった。この分だと他にも一人になりたいと思った者が来るんじゃないのか? と妖夢は苦笑した。
 
 ―――綺麗だな。
 
 独り言を呟くかのようにルナサはぼそっと言った。
 妖夢は一瞬ルナサが何を言っているのか分からなかったが、ルナサが虚空を眺めているのを見て取って、今日の薄気味の悪い月のことを言っているのだと分かった。
 (……あの月が…綺麗? 確かに美しくはあるけれど…。でも……)
 ――でも、妖夢はあの月から感じられる不吉さを拭うことは出来なかった。
 ルナサが月を見るのを止め、妖夢に向き直る。そのときのルナサの目を見て、妖夢は軽い恐怖心を抱いた。ルナサの目が笑っていた。ギラギラとして、奇妙で、まるで―――――虚空に浮かぶあの奇妙な月そのものだった。手に汗が滲むのを妖夢は感じた。
 「どう…したの?」
 そう問い掛けると、ルナサの目はいつもと変わらないように妖夢は見えた。もしかしたら疲れているのかもしれない、今度幽々子様に休暇でももらおうかと本気で妖夢は考える。それともやはりあの月がおかしいのか。
 ルナサは妖夢のそんな懸念に反するかのように別の話題を切り出した。
 「……いや、別に。そうだ、よかったら私の演奏を聞かないか? 実は私はソロの方が好きなんだ、落ち着くし」
 悪くないと妖夢は思う。今ならルナサのヴァイオリンの繊細なメロディが夜風に乗って、さぞ素晴らしい演奏が聞けることだろう。おまけに特等席だ。
 「いいわね、それじゃあお願いしようかしら。曲は何かしら?」
 「曲は……なんだと思う?」
 ルナサの目がそのときまたあの月のように見えたが、妖夢は気にしないで答える。
 「当ててみろってわけ? でも私はあまり音楽の方の知識はないから、そのまま演奏してもらえるかしら?」
 「分かった」
 そう答えてルナサが手足を使わずにヴァイオリンから奏でだした曲は、


 ―――タッタタタッタータッタッター♪

                      ―――タッタタタッタータッタッター♪

 
 チャイコフスキー作『くるみ割り人形』であった。
 軽快でリズミカルな曲がヴァイオリンの名器ストラディバリウスとルナサの天才的な弓捌きによって、夜の白玉楼を最高峰のコンサート会場へと変貌させる。
 ソロの方が好きと言っていたが、まさかこれほどとは。直接自分の感覚に伝わってくるかのように響く美しい音色に、妖夢は息を呑んだ。まさに神技。

 
 ―――タッタタタッタータッタッター♪

                      ―――タッタタタッタータッタッター♪


 演奏自体は数分程度で終わったが、妖夢にはその間の時間が何百由旬もの距離に感じられた。
 声など出ない、感想など言うだけ無粋だった。自分の陳腐な言葉の表現ではルナサのヴァイオリンを侮辱するとさえ思えた。
 
 しばしの静寂が時を支配する。

 「…どうだった?」
 己の演奏に満足そうにルナサが妖夢に問うた。表情から溢れるほどの自信を感じられる。
 「…言葉は要らない、としか言いようがないわ」
 「…それは誉め言葉の方?」
 そう尋ねるルナサは不安そうだった。妖夢が溜息を吐くように感想を述べたために、誉めたのか否か判断尽きかねたからである。
 「もちろんよ、私なんかの言葉では表現できないほど素晴らしい演奏だったわ!」
 ルナサの不安を消し飛ばすように妖夢は快活に言った。それを聞いてルナサ照れるように微笑した。つられて妖夢も軽く笑みを浮かべたが、そこでふと体の違和感に気付いた。

 ―――ところで

 ルナサはまたあの目つきをしながら妖夢に言った。その目を見て妖夢は自分の体の違和感の原因がルナサにあることに感づいた。キッと睨みつけるようにルナサを見たはずだったが、顔が引きつったようになって上手くいかない。唯一動かせるのは口だけだった。
 
 ―――体が動かせないだろう?

 いけしゃあしゃあとそんなことを口にするルナサに、妖夢は掴みかかるような勢いで言葉を返す。むしろ掴みかかってやりかったが、物理的に不可能だった。
 「…ちょっ、ふざけないで! 一体どういう………何を笑っているの? 早くこの可笑しな術を解きなさいよ。そしたら許してあげないでもないわ!!」
 いつもなら顔なじみということもあって、仮令体を動かせなくされようとも軽い悪戯か何かということで不問にするところだったが、今のルナサの自分のこの緊縛状態をせせら笑うかような表情に妖夢はいらつきを覚える。そのせいで声の調子も相手を威圧する感じになっていた。
 しかし、妖夢がいくら凄んでも、文字通り妖夢は手も足もでない状態だったので、ルナサは恐くも何ともなかった。手が使えなければ妖夢自慢の楼観剣も白楼剣もただの飾りに過ぎない。
 「さっき私が弾いた魔曲には相手の自由を奪う力がある。……いつこうするか踏ん切りがつかなかったけど、これで漸く妖夢を愛せる」
 アイセル…、この四つの文字の連なりを聞いて妖夢はゾッとした。ルナサは狂っているのだ、虚空に浮かぶあの月のように。月を意味する言葉ルナは、そのまま狂気という意味にも通じていた。
 妖夢はこれから自分の身に起こることを思い描いて恐怖する。そんな恐怖に怯え竦む妖夢を笑い見ながら、ルナサは愛しいお姫様を抱きかかえるように妖夢を持ち上げると、ゆっくりと、ゆっくりと、白玉楼階段を下っていった。


 月、狂気の象徴にして、よく人を惑わす。


 *


 私は何事も正々堂々と勝負するのが好きだ。
 たとえ相手がどんなに強く、正面から挑んで勝ち目がなくとも私は卑怯な真似はしない。
 それが私の信条のようなものだ。
 
 でも、それでは妖夢の気持ちを私振り向かせることは叶わないと知った。
 彼女の目にはいつも西行寺のお嬢様が映っている。
 そうでないときは剣士として己を磨くことに専念している。
 そこに私が入り込む余地などない。

 恋なんて残酷なものだ。
 どんなに正々堂々としようとも、相手がその気にならなければ話にならない。
 ましてや私と妖夢は女同士、努力でどうにかなる問題でもなかった。
 
 私は途方にくれた。
 この胸に秘めた思いをこれからずっと抑えて暮らすなんてとても耐えられるものではない。
 だから私は三女の言葉通りのことを実行してやろうと本気で考えもした。
 あのすきま妖怪に会ったのもちょうどそんなときだった。


 *

 
 「…う……ん」
 妖夢は軽くうめくようにして起きた。ルナサの魔曲に体の自由を奪われた後、いつしか寝てしまっていたのだった。辺りを見回すと自分が古ぼけた小汚い部屋にいることに気付く。壁にも天井にも穴が空いて、そこから月明かりが零れていた。
 「お目覚めかしら?」
 妖夢が状況の把握をしようとしているところに、突如としてドアが開き声がした。
 入ってきたのは名器ストラディバリウスを携えたルナサだった。ルナサだと気付くやいなや、妖夢は怒鳴りつける。
 「一体何のつもり? 私をこんな所に連れてきて、いい加減にしないとひどいわよっ!!」
 ルナサは笑うだけで何も答えなかった。それが妖夢の癪に障る。
 「ふざけないでっ!」
 妖夢は自分が寝かされていた寝台の上から体を起こそうとする。その後にルナサに平手打ちの一つでもかましてやろうと思ったが、体がガクンとなって起きること自体が出来なかった。

 ―――チャリ

 と金属質の嫌な音が部屋に響いた。よもやと妖夢は思ったが、案の定自分の四肢は手錠で寝台が固定され、体を起こすことも適わない状況下に置かれていた。
 
 ―――だからルナサは笑っているのだ。

 妖夢は今更ながらにルナサが狂っていることを思い出し、戦慄した。殺されるわけではないだろうが、何をされるか分かったものではない。しかし、ルナサは確かに自分に対して『愛せる』と口走った。今の自分の状況とルナサの言葉の繋がりから、自分の体が弄ばれるのは自明の理だった。
 「やめてよ、その目…。こっちに来ないでよ!!」
 ルナサは一歩、また一歩と動けない妖夢へと近付いていく。足を踏み出す度に軋む床音が余計にルナサを恐怖させた。
 寝台までやって来ると、ルナサはその上に乗り、妖夢の体にのしかかる。そして唇を妖夢の唇へと運んだ。妖夢は首を振って反抗の意を示したが、どうにもならなかった。
 「…ん…んんん…んぐっ」
 吸盤が張り付くようにルナサは妖夢の唇を吸い続けた。そこに妖夢は今の自分に出来る精一杯の抵抗を試みた。

 ――ガリッ

 突如襲ってきた痛みにルナサは飛び上がるように体を起こす。口からは血を流していた、妖夢に唇を噛み切られたのだった。血は滴り、そのまま妖夢の服を汚した。
 「……何で? ………どうしてこんなことを……妖夢……」
 血を拭いながらルナサはぼそぼそとそう言った。信じた者に裏切られたかのような目をしていた。しかし、いくら縋るように見られようとも妖夢としてはそうせざるを得なかったのだ。
 「……ごめんなさいね。今ので目が覚めたら、早いところ私を自由にしてもらえないかしら?」
 妖夢は今の行為で自分が優位に立ったと思った。だからこそ強気になって今のような口を利いたわけだが、逆にルナサの狂気を駆り立てる結果になってしまう。
 「………で………なん…………」
 ぶつぶつと何事か言いながら、ルナサは懐中から一本のナイフを取り出す。それを見て妖夢はギョッとした。殺されはしないものと高を括っていたが、まさかさっきので怒らせてしまったのだろうか? 妖夢は体にそのナイフを突き立てられるかと思い、カタカタと震える。嫌な汗が滲んでいた。
 少し息を荒くしながらルナサは妖夢の体を押さえ付ける。その後、体の中心線にそってナイフを当て、一気に下に向かって切り裂いた。
 妖夢は間違いなく体を切られたと思った。だが、痛みは感じない。あまりのショックで痛みすら感じていないのかと思ったがそうではなかった。ただ、鮮やかに服を真っ二つに引き裂かれただけだった。妖夢はルナサの意外なナイフ捌きに惚れ惚れとしたが、そんな場合ではなかった。
 そのまま、なおもぶつぶつと言いながらルナサは裂いた服を左右に思い切り引っ張って完全に破りさる。衣服が裂ける音が部屋に響き、ボタンが爆ぜるように宙を舞った。
 肌を隠す布が無くなり、妖夢の裸体が露になる。幽霊と人間のハーフとは思えないほど、健康的な白い肌をしていた。まわりから射している月明かりがその美しさを一層栄えさせていた。
 「…妖夢、私はこんなにもあなたを愛しているのに…」
 妖夢にも聞こえるようにぽつんと呟き、ルナサは何を思ったのかヴァイオリンの弓を手にした。
 そして、その弓でもって妖夢の体に打ち付ける。

 ――ピシィッ
 
 と、張りのある柔い物を叩く音がした。
 「っっ!? 痛いっ! ルナサ、やめて!!」
 妖夢の声はルナサに届かなかったのか、ルナサは続けて一回、もう一回と妖夢の柔肌に弓を打ち付けていく。その度に妖夢は痛い痛いと声を張り上げた。
 「…妖夢、ヴァイオリンの弾くようにあなたを愛してあげる。本当にいい音だわ。最高よ」
 くすくすとそう言って笑うルナサを見て、妖夢はもはや逃れられないことを悟る。ルナサがもう数回ほど弓を打ち付けると、やがて妖夢は痛みに耐え切れず、観念したように言う。
 「…うぅ、ぐすん。…もう、あなたの好きにしていいから叩くのはだけは止めて……」
 妖夢の目尻には涙が溢れていた。表情は痛みによる苦悶と屈辱で歪んでいるように見えた。妖夢からその言質を取るや、ルナサは再度打ちつけようと振りかぶっていた弓を持つ手を下ろした。
 「…ああ、やっと私を受け入れてくれるんだな…」
 何かを達成したかのような満面の笑みをルナサは浮かべると、いそいそと服を脱ぎだした。これから妖夢を愛するためである。
 服を脱ぎ終わったルナサは、なるほど幽霊らしく少し青白い肌をしていた。妖夢とは違って月の光で一層青白く見えた。
 さっそくルナサは一度はのしかかった妖夢に体を重ねた。そして、さっき噛み切られた唇を妖夢に舐めるよう促す。
 「とても痛いの、妖夢の舌で消毒してくれる?」
 妖夢は何も言わず、ルナサに言われるままに己の舌でルナサの唇をちろちろと舐める。何とも言えない鉄の味がしたが、妖夢は一心不乱にその行為を続けた。
 その行為を自分への屈服の証と見たのか、ルナサは切れた唇を舐めるのを止めさせ、今度は妖夢の裸体をまさぐりだした。
 「…あ……ぅん………」
 くぐもった声を妖夢は出す。まるで繊細なガラス細工を扱うかのようなルナサの撫で方が、妖夢にそんな声を出させたのだった。続いてルナサは先程妖夢を打ち据えて出来ていた生々しいミミズ腫れをなぞるように触れる。
 「…やっ…いた………ん……」
 若干の痛みはあるものの、妖夢は体を触れられているうちに少しずつ気持ちよさを感じていた。優しく優しくルナサは妖夢に触れる。つい今しがたまで、愛しい人を弓で叩いていたとは思えないくらいの豹変ぶりである。
 「…あん…そこ、は………」
 ルナサは妖夢の薄桃の両乳首を人差し指と中指で挟み、こりこりと刺激を加えた。ただ肌に触れられたときとは段違いの、体の電気が走るが如しの感覚に妖夢は蝕まれていく。
 「ん……やぁ………ルナサ……きもち…い………んぁ…ふぁぁあ……」
 「もっと…もっと愛してあげる…」
 妖夢の耳元にルナサは甘くそう囁くと、四肢を手錠で固定されている妖夢の体の下にルナサは潜り込む。ちょうど後ろから抱きすくめるような体勢をルナサはとったのだった。
 そうしてから、お待ちかねといった風に今まで一度とて触れることのなかった妖夢の女性部分に右手の中指を這わせた。しっとりとそこは湿っていた。
 「…ひゃっ!! ……ちょ……やさしく……っっっ!!! …あっああ……はげし……っん……」
 しどろもどろに訴える妖夢の言う通り、ルナサはただ体に触れていたときとは打って変わり、強く激しく自分をぶつけるように妖夢の女陰を責め立てていた。チュッチュッと、分泌していた妖夢の愛液がいやらしく音を出す。当然、その音はルナサの責める時間に比例して大きなものへとなっていった。
 「ふぁっ……あっあっあ……あーーーっ!!!」
 時間と共に強くなってくる快感に、妖夢は喘ぎながら逃れるように体をジタバタさせた。しかし、相変わらず四肢は固定されているのでそれも徒労に終わる。妖夢は一心不乱に自分を責めるルナサの為すがままだった。
 「……だめぇっ! だめぇ!! ……それ以上…ると………わたし…あんっ! …ぃやあっ!!」
 ルナサは妖夢の訴えを聞くどころか、逆にもっと刺激を与えにいく。右手で膣を愛しながら、左手の方で妖夢の雌芽を摘む。摘んだ指で芽を擦り合わせると、妖夢は痙攣を起こすように体を震わせ、大きく声を上げた。
 「っっっ!?!?!? ……んっ……やぁ…いやぁああああっっ!!!」
 半人半霊として生を受けて以来の強烈至極な快感に、妖夢は初めてイク寸前までいった。だが、イクには至らない。イク寸前のところでルナサがその手を止めたのだった。
 もう少しで別次元にトリップ出来そうだった妖夢は少々がっかり感を覚える。つい数十分ほど前まではあれほど体を玩ばれることを恐れていたはずの妖夢としては、それは驚くべきことだった。
 「……ルナサ……どうして?」
 もしかしたら焦らされたのかもしれない、とルナサは思った。きっとそうして私の方からルナサを求めるように仕向けているのだと。しかし、背中越しに感じるルナサは妖夢の思惑とは全く別の状態にあった。ルナサは、震えていたのである。
 そうしていたかと思うと、ルナサは急に妖夢の下から這い出し、床に手と足を突いて項垂れた。そして耳をつんざくほどの声を上げる。


 ―――いやぁあああああああああああああああ


 キーンと声が響いて妖夢は耳が痛かった。でも今はそれよりも、なぜルナサがいきなり叫んだのかが気になるところであった。
 「…ルナサ?」
 妖夢は名前だけを呼んでみた。しかし反応はない。
 わずかな沈黙の後、ルナサは堰を切ったように泣き出した。


 ほぼ同時刻、白玉楼にて八雲紫と名乗る妖怪が何者かに打ち倒されていた。



*~~



 私は何事も正々堂々と勝負するのが好きだ。
 たとえ相手がどんなに強く、正面から挑んで勝ち目がなくとも私は卑怯な真似はしない。
 それが私の信条のようなものだった。
 
 でも、それはもう過去形でしかない。
 私は自ら正々堂々であることを放棄したのだ。
 そうするほどに、狂おしいほどに妖夢を愛していた。
 だから私はあのすきま妖怪の口車に乗ったのだ。

 人の心など脆いものだ。
 けれど、私はすべてをあのすきま妖怪のせいにはしない。
 最終的にこうすることを選んだのは、やはり私なのだから。

 涙を流しながら、私は妖夢を見た。
 まるで小動物を憐れむかのような目をしている。
 それは軽蔑されるよりもむしろ辛いことだった。
 そんな目で見られるくらいなら、いっそ消えてしまいたいと思った。


 *


 ルナサは妖夢を縛していた手錠をすべてはずした。双方ともその間沈黙したままだった。
 漸く自由になれて、ほっとしている妖夢に寝台の下に隠しておいた楼観剣と白楼剣を返しながらルナサは言う。
 「何も言うべき言葉はない。このまま、人間の迷いを断ち斬るという白楼剣で私を消してくれないか」
 剣を手渡されながら妖夢はぽかんとルナサを見上げた。どうやら本気で言っているらしかった。
 確かに妖夢はルナサが憎かった。でも、たった数十分の間に其の思いは目まぐるしく変わった。今は強いて言うならば同情に近いものがある。そして、ついさっきまで優しく愛されていたときには自分にも愛情に近いものがあったと妖夢は思い直した。
 「いやよ」
 妖夢はそう言い放つ。すべての思いを統合した上での結論だった。
 「だったら…」
 ルナサはそう答えて、さっき妖夢に渡したばかりの白楼剣を奪おうとする。自刃するつもりでのことだった。渡すまいと妖夢も必死に抵抗する。
 そうして白楼剣の奪う奪わせないのやり取りをしている間に、妖夢がルナサの両腕を押さえて組み伏せる状態になった。こうなるともう演奏者と剣士との力の差は明白だった。それを見越しての手錠だったのかと妖夢は苦笑した。
 「落ち着きなさいよ」
 組み伏せられ、どうにも出来なくなってしおらしくなったルナサに妖夢は優しくそう言った。それから、鎮静剤か何かのように妖夢はルナサに自ら口付けをする。
 「!!??!?」
 あまりのことにルナサは仰天する。あれだけひどいことをしたのに、どうしてこんなことになるんだろうと頭を捻った。でも、途中からはそんなことはどうでもよくなっていた。気付けば、お互い背中に手を回していた。
 永遠に続くかと思われるほどの甘い口付けも、妖夢が体を起こすことで終わりを迎える。
 「…妖夢、どうして…自分から?」
 ぽぉっとした感じでルナサは問うた。妖夢も恥ずかしそうに、人差し指と人差し指を合わせてもじもじとさせながら答える。
 「…その、ね。私も、あなたにいろいろとされてる間にこういうのも悪くないかな、って……」
 そう言い終わって妖夢は真っ赤になる。そして続けざま、駄目押しのように言う。
 「それに私、まだルナサに愛され尽くしてないわ!!」
 「…妖夢」
 二人は、お互いを見つめ合いながら、ともなくして体を重ね合わせた。


 ――――――――――――――――――――――


 夜の幻想郷はひんやりとして涼しかった。
 ルナサと妖夢はお互い肩にもたれかかりながら野原で夜風を楽しんでいた。
 風に揺られて、草々がまるで波のようにざぁっと戦ぐのが綺麗だった。
 「……これからは、あなたのことも見てる。だから、心配しないで…」
 ルナサの髪を撫でながら妖夢が囁く。
 「……その、なんだ。うん……ありがとう、妖夢……」
 照れるようにルナサは答えた。顔はきっと赤い。
 ルナサはそれを隠すかのようにすくっと立ち上がると、自慢のストラディバリウスを携えて妖夢に言った。
 「白玉楼に帰る前に、一曲だけ聞いていかないか? ……安心していいよ、今度は何も悪さしないから」
 妙な気配りをするルナサに、妖夢は笑いながら答える。
 「ふふ、もうそんなことする必要はないでしょ? ……それじゃあ、一曲お願いしようかしら」
 「じゃあ弾くよ。………それにしても、今日は月が綺麗だな」
 「ええ綺麗ね」
 月の明度はいつもと変わらないように見えた。
 だから妖夢も安心して、心の底からそう思った。
 ルナサもまた別のことを思う。


 私を受け入れてくれたあなたに
 これから私を見てくれると言ったあなたに
 そして剣士である勇ましいあなたに

 最高にふさわしい曲を奏でよう
 力を使うことなく、私自身の手で奏でよう
 全身全霊を賭けてあなたのために捧げよう


 と。

 
 ―――ハチャトゥリアン作曲『剣の舞』―――

 
 かつてない荘厳なメロディが幻想郷の夜に浸透する。
 曲に合わせてダンスを踊る影が確かにそこにあった。 
 
 
  
 

                                         




 

  
 


 ご拝読どうも有り難う御座いました。
 ちょっと部分部分に説明を端折った感が否めませんが、どうかご容赦ください……。
 ルナサが作中で弾いていた曲とその能力は、某漫画の主人公の技をちょこっと引用させていただきました。流石に元の方は寿命縮んだり、筋肉痛になったりするので、その控えめVERということで。
 一応この場を借りまして、お詫び申し上げておきます。

 
 作者的な違和感を箇条書き

 ①ルナサ・妖夢ってこんな性格・口調だったっけ?
 ②幽霊って血出るの?
 ③妖夢の心変わり早すぎ

 
 しかし4度目にもかかわらずネチョ度成長しません……。
 次回は果たしてどうなるだろう……。
 リクは某所の某ひの氏にいただきました。

 確か頼まれた内容にヴァイオリンプレイなるものがあったという記憶が御座います。
 でも、自分の筆力では表現出来ませんでした。
 そこでどういうわけか生まれたのが数行程度の弓打ちです……。
 
 ……申し訳ありません。


 …で、では、次回またお会いしましょう(・∀・)



 *

 前回スレで誤字のご指摘を受けましたので、今後に備えて新規にメアド作りました。
 
 osaki_fox あっとまーく hotmail.com です。

 誤字脱字・文法の誤りなどありましたらこっちの方にお願いします。
 感想などいただければ死ぬほどに嬉しいです。


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Last-modified: 2018-01-07 (日) 04:56:13 (2300d)