殺される。








 私は今、とある館の主の前にいる。私が図書館の中を漂っている所を見咎められたのだ。
魔界を出て行く当てのなかった私は、魔力を失い疲弊しきっていた所にたまたま、この館の図書館を発見した。
ここはだだっ広い部屋の中に魔力が充満していて、それを吸収する事で私は生き長らえる事が出来た。
馬鹿みたいに広いし、こっそりここに居座ろう……そんな事を考えていた矢先にこれだ。
私は逆らう事も出来ず、ある紅い一室に連れて行かれた。


「……で、あなたはどうしてあそこにいたのかしら」


 目の前にいるのは、あの「紅い悪魔」レミリア・スカーレット。
その名は幻想郷のみならず、魔界にも知れ渡っている。
この悪魔の手に掛かれば、私など一瞬で消し飛ばせる事だろう。肉体のみならず、その魂までも喰らわれるのではないだろうか。
そうなれば私は……私という存在は、転生する事も適わず永遠の闇に囚われる事になる。


「……まぁ、あなた一人いた所でどうって事はないのだけれど」


 ……さっきから体の震えが止まらない。全身から汗が噴き出し、だけどそれを拭う事も出来ない。
あの目に睨まれるだけで、全身が石のように硬直して指一本動かせなくなる。
格が違いすぎる……本来ならはお目通しも適わない筈の雲の上の存在。
その、幼い吸血姫に、私の生殺与奪は握られているのだ。
……否、生などある筈もない。私は不法侵入者なのだから。


「……とりあえず、あなたの名前を……」

……嫌だ。死にたくない。
……魔力を失い消えかかっていた所に、奇跡的に流れ着いた安住の地。
……の筈、だった。施設があれば、当然その場を支配する者がいる。その事を完全に忘れていた。
……嫌だ……いやだいやだいやだ…………!!



「……ちょっと? さっきからあなた、聞いているのかしら?」
「はっ、はいぃっ!?」
驚いて思わず素っ頓狂な声を上げる。……ヤバい。心象を悪くすれば、ますます私の身が危なくなる。
「ボーッとして、心ここにあらず……私の話、聞いてなかったでしょう」
「いっ、いえ、そんな事は決して……」
「じゃあ答えて、私の質問に」
「えっ、えーとっ、私は魔界から来た……」
ギロリ。目一杯睨まれる。あぁ~、違ったのか……? まずいまずいまずい……!
「はぁ……あのね、何をそんなにびくついているのかしら? もっと落ち着きなさい」
……そんな事を言われても、それは無理な相談というものだ。
「で、名前は?」
……深呼吸して息を整え、ゆっくりと落ち着いて口を滑らさないよう、言葉を選んで発する。
「名前は……ありません。私のような力無き者には、名前など与えられないのです」
声を上擦らせながらも、どうにか言葉を搾り出して答える。
「そう、分かったわ。で、あそこにいた訳は?」
私はここに辿り着いた理由を、事細かく正確に喋った。
今更嘘を吐いても仕方が無いし、もしバレたりでもしたらそれこそ私の命は露と消えるだろうから。
「なるほどね……結構苦労してるのね、見た目に似合わず」
「そそそそんな、めっそうもないっ!!」
思わぬ言葉をかけられて、ブンブン首を横に振り、手をバタバタと横に振る。
そんな私の様子に、一瞬ではあるが目前の吸血姫に笑みが浮かんだような気がした。



「そうね……それじゃあ、こうしましょうか。
 あなた、私と契約なさい」

……………………えーと。

「あの図書館は広いでしょう? パチェ一人だと管理が大変みたいなのよね。
 だから、あなたにその手伝いでもお願いしようかと思うのだけど」

……………………それはつまり。

「そうすれば、あなたもあの中で生きられるし、一石二鳥でしょう。
 ……どうかしら」

……………………生きられる。死ななくてもいい。

「……ちょっと」

……………………生きたい。死にたくない。私は……わたしはっ……



「あ・な・た?」
「はっ、はいぃいいぃっ!?」
……ヤバい。またやってしまった。ますます死地に近くなる。あぁどうしよう。
「人の話を聞かないのって、私の嫌いなタイプなんだけど」
「ああぁあぁごめんなさい申し訳ございません、お願いですから命だけは~!!」
平身低頭、額を床にぶつけそうになるほど頭を下げて許しを乞う。……その時。
「……ぷっ」
「……?」
「アッハハハハハハハハ……そういう事ね。いつ私があなたを殺すとか言ったかしら?」
思いがけない言葉。それはまるで、天恵のように聴こえた。……悪魔の私が天恵というのもおかしな話だが。
「あ……はは、は……」
「で、本題に戻るけど。あなた、私と契約なさい」
先程の言葉がもう一度繰り返される。要するに、私を使い魔にしてここで働かせよう……そういう事らしい。
「質問、文句等あればどうぞ」
「全く何もありません! どーか宜しくお願いします!!」
急いで立ち上がり、直立不動の姿勢で何度も何度も頭を下げる。文句なんてある筈も無い。
どの道ここ以外では、魔力の補給が出来ずに朽ちるのみなのだ。そして、私は生きられる……それだけで十分だった。
そんな私の様子を見て、またおかしそうに笑われた。が、不思議と腹は立たなかった。ていうか立てたら殺される。
「それじゃ決まりね。私はレミリア・スカーレット。
 呼び方は……そうね、他の者の手前もあるし『お嬢様』と呼んで頂けるかしら。皆もそう呼んでいるから」
「はっ、はい、分かりま……畏まりました、えっと……お嬢様」
慣れない言葉遣いの為、思わず地が出そうになるのをぐっと堪える。これからは気を付けないと。



「うふふ、宜しい。……それじゃ早速だけれど、契約を交わしましょうか」
そう言ってお嬢様はつかつかと私の目前に寄り、私の頬に手を添えて……キスをした。
「ん!? んっ……んふっ……うぅ……」
ぴちゃ……ちゅっ……くちゅっ……
お嬢様の舌が私の舌と睦みあい、絡ませ、蠢く。
その柔らかい肉を出し入れされる度、まるで咥内を犯されているかのような錯覚に陥って、頭が空白に染まっていく。
「ふぅん……ん……ちゅう………………ふぅ」
時間にしてはほんの十秒にも満たなかっただろうが、体感としてはその何倍にも思えた。
「んぁ……え……っと、その……」
「何目を白黒させているのよ。……まさかあなた、契約の結び方も知らないとか?」
「そそそそそんな事………………あります………………」
そうなのだ。私ははっきり言って力が無い。だから、私と契約を結ぶ者もいない。だから、契約の交わし方も知らない。
……自分自身が悲しくなった。
「あなた……本当に悪魔なの? その尻尾も、飾り物じゃないでしょうね」
「ちっ、違いますよぉ、ほら、こうやってちゃ~んと……」
身の潔白と悪魔である事の証明の為、ぴょこぴょこと尻尾を動かしてみせる。飾り物では、こんな風に自在には操れないだろう。
「作り物じゃなさそうね……でも、まだ信用できないわ」
「それじゃあどうすれば……ひゃうっ!?」

ぎゅっ。突然お嬢様に、私の尻尾をつかまれた。途端に全身を駆け抜ける電気信号。

「ほら、これはどうかしら……?」
「あっ、し、尻尾は駄目ですっ……ひぁっ……!」
さわっ、さわっ。両手で尻尾をくすぐるように、全体を満遍なく擦られる。
その度に、そこから伝わる刺激で体がビクンと跳ねる。
「はっ、ふぅん、ひゃっ……そこ、駄目ですぅ……んぁあっ!」
「あらあら……どうやら本物みたいね、この尻尾」
他の悪魔はどうか知らないけど、私にとって尻尾は一番の性感帯だ。何かにぶつけただけでも反応してしまうのに、
こんな感じで優しく弄られると、その……体が、熱くなって……
「あっはぁっ、くふぅ、はっ、あはっ……」
「あなた、可愛い所あるじゃない……うふふ、気に入ったわ。
 それじゃあ、こんな事したら、どうなるのかしら……?」
「んあっ、はぁん…………!?
 だっ、駄目ですお嬢様、それは…………きゃぅんっ!!」
じゅるっ……三角形になっている私の尻尾の先端を、お嬢様の小さくて柔らかい口が覆う。
平たく言えば、尻尾を咥えたのだ。その間も両手は尻尾を握ったまま、上下に扱き続けている。
「あむ……ちゅるっ……んふっ……れる……」
ざらついた舌が、満遍なく先端を舐り、しゃぶって、唾液を絡ませて、吸って、音を立てる。
「か……はぅん……だめ……で、すっ……ふぁあっ……」
「ぷはっ……尻尾一つでこんなになるなんて……うふふ、面白いからもっとやってあげるわ」
「きゃっ……はっ……くうぅううぅんんんっ……!!」
再度咥え込まれ、さらに今度は手と一緒に頭も上下にストロークして扱かれる。
「んっ……ちゅるっ……じゅる、くじゅっ……ちゅぱっ……」
その度に、痺れるような快感が尻尾を通して全身に伝わり、尻尾も体も硬く震える。
だけど……
「ちゅぽっ……ふぅ、どうかしら。そろそろイッちゃう?」
「んふぅ……は、だっ、駄目なんですぅ……」
「あら、まだ足りないのかしら。じゃあもっと……」
「いっ、いえ、違うんですっ……実は……尻尾だけじゃ、イケないんですぅ……!」

……そうなのだ。尻尾は確かに性感帯だが、それだけではイケない。
性への欲求が高まるばかりで、それ以上の高みへ昇りつめる為には、やはり最後には、その……
アソコをどうにかしなければならない訳で。
実はさっきから我慢しているのだけれど、お嬢様の手前それを表にも出せないし、だけどうずうず疼くし……
という訳で、太腿を擦り合わせてどうにか耐えていたのだが……

「へぇ……面白いわねぇ。だからさっきからずっともじもじしていたのね」
「あ……バレバレでしたか?」
「えぇ」
……ヤバい。でももう我慢も限界で……
「もうちょっと苛めてあげようと思ってたけど……まぁいいわ。
 それじゃあ、契約の儀に移ろうかしら」
そう言うとお嬢様は、おもむろに身に纏っていた衣服を脱ぎ始め、やがて一糸纏わぬ裸身を私の前に晒した。
それはとても白く、繊細で、触れれば壊れてしまいそうで、でも目を離せなくなる淫靡な誘惑があった。
「あなたも脱いで」
「……はい」
促されて、素直に着衣を脱ぎ捨てる。濡れてぐしょぐしょになっていた私のアソコから、液が糸を引いて床を汚した。
「あらあら……もうこんなにしちゃって」
「もっ、申し訳ございません!!」
ぺこぺこと頭を下げる私を制して、お嬢様のやはり白く細い指が私のアソコに迫る。
くちゅっ……
「ふあぁああっ!?」
ビクン、と体が一度、大きく跳ねた。
「ほら、あなたの尻尾、私の膣に入れて……
 私もこんなに濡れちゃった……」
意識を支えてお嬢様の下腹部に目をやると、確かにお嬢様のアソコも同じように濡れていた。
尻尾を動かして先端をその狭い入り口にあてがうと、お嬢様の手がそれを掴んでゆっくりと中へと導く。
「それじゃあ、いいわよ……思いっきり入れちゃって……」
すでに快楽で頭が回らなくなっていた私は、お嬢様の言うがまま、力を込めて尻尾を挿入した。

じゅぷううううぅううぅぅぅうっ……!!

「ふああぁああ゛あぁ゛ぁあ゛っ!!!」
「んああぁああぁああぁぁぁあっ!!!」
嬌声をあげて、お嬢様の足がガクガクと震える。私も濃密な媚肉の感触に体を震わせる。
お互いに、相手の体を支えにして何とか立っているという状態だった。
「あはぁっ……ほ、ほら……もっと動かして……っ!」
「は、はいぃ……」
ぐちゅ、じゅぽっ、じゅぼっ、ぐじゅぅっ!!
尻尾を出し入れする度に、お嬢様の愛液が溢れ出て床を汚し、太腿を伝って足を濡らす。
お嬢様も負けじと指を私の膣に突っ込んで、ピストン運動を繰り返す。
「あっ、あっあっ……イッ、尻尾、イイわ、気持ちいいっ……!!」
「ひゃふぅっ、あぅっ、きゃうぅぅっ、私も、指、気持ちイイですぅ……!!」
ずぷっ、じゅぼぉっ、くちゅっ、じゅくっ、ちゅぷっ、ぐちゅうぅっ…………
お嬢様の膣内を犯す尻尾と、私の膣内を犯す指。あとから溢れる淫液が卑猥な音を立てて、絡み合う。
「尻尾の先っちょ、膣内を引っかいて……す、ごすぎっ……ひぁああぁんっ!!」
「なか、擦っちゃやぁっ……あっ、はぁあんっ、ふぅんっ、あはあぁぁっ……!!」
いつしか私たちは抱き合い、首筋にキスをし、硬くなった胸の先を弄り、吸い付き、転がし、貪りあっていた。
その内頭はますます白くなり、眩しすぎる光が、少しずつ広がって―――――
「あ、イ、イキそうっ……ね、あなたは……イッちゃう……んぁっ……!」
「は、はひっ、わた、しも……イッ……ちゃいそうで……くふぅん……!」


そして。
私の尻尾がお嬢様の再奥の璧を小突いた時。
お嬢様の指が私の秘芯を抓んだ時。
光が、弾けた。

「あっあっあっ……イッ……イッちゃう、イ……クぅっ……!!」
「ひぁっ、そこ、らめれっ……すっ……はぅ、きっ、きちゃいますっ……!!」


「あはあ゛ぁああ゛ぁ゛あああ゛ぁあ゛あぁぁ゛ぁああ゛ぁ゛ぁあぁ゛んんん゛ん゛んん゛っ!!!!!!」


私たちは、そのまま、抱き合うようにして、光の中に、溶け合っていった――――――――――








「……じゃあ、これで契約締結ね。これからあなたは私の使い魔」
「はい、宜しくお願いします、マスター」
「マスター……悪くないけど、ちょっとこそばゆいわね。やっぱりお嬢様でいいわ」
「はい、マス……お嬢様」
悪魔の契約―――――それは性行為―――――により、私はお嬢様の使い魔としてこの紅魔館で働く事になった。
私の仕事は図書館の司書……パチュリーという図書館の魔女の補佐。
あの図書館にいる限り、私は魔力に枯渇する事もない。雨風や外敵からも身を守れるし、願ったり適ったりだ。
「……それで、あなたの名前なんだけど」
「……名前、ですか」
「そう、名前」
「私には……名前が、ありません」
―――――そう。私のような力の無い、所謂小悪魔には名前など与えられない。
悪魔にとって、名前というのは力ある強者だけが持ちうる栄誉あるものなのだ。
「ううん、そうじゃなくて……それはさっき聞いたわ。
 だけど、これからここで働くのに、名前が無いと呼ぶのに困るでしょう」
「……申し訳ございません」
「うふふ……だから、私が名前を付けてあげるわ」
「そっ、そんな滅相も無い!」
「私があなたを認めて名前を付けるのよ。遠慮する必要は無いわ」
あぁ、何と恐れ多い事だろう。こんな私が、名前を持つ事を許されるだなんて。信じられない。
「じゃあ……そうね、これからあなたは『ミア』と名乗りなさい」
「ミア…………」
「そう。宜しくね、『ミア』」

お嬢様が私を『ミア』と呼んだ、その時。

「んっ……んああぁああぁっ!?」

突然力が、感じた事の無い力が、全身を駆け巡った。

「こっ、これは……?」
「『言霊』って分かるかしら?
 あなたはその名を持つ事により、私の五分の一の力を行使出来る。
 ……まぁ、実際に扱えるのは、もっと少ないでしょうけどね」
「つまりこれは……お嬢様の……?」
「そういう事。あなたがミアと呼ばれる限り、あなたと私は霊的な接点を持ち続ける。図書館外でも自由に行動できる筈よ。
 それなりに力もある筈だから、侵入者とかがいたら叩き出してやってね」
「あっ……ああっ……ありがとうございますっ!!!!!」





額が膝にぶつかるかという位に腰を折り曲げて、深々と頭を下げた。


消えかかっていた私を救い、名を与え、居場所まで頂いて。


その時私は誓った。何があっても、この命に代えても、私はお嬢様の為になろうと。


そんな私の誓いが試される時は、思いの外すぐにやってきた。


だから、私は――――――――――





「侵入者発見! 行くわよ、覚悟なさい!!!」




―完―








公式っぽい小悪魔とレミリアで。
俺設定は勘弁な。


書いたの→marvs [アーヴ ◆arvsHiKSeA]


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Last-modified: 2018-01-07 (日) 04:56:13 (2300d)